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不要な子供達  作者: 空き缶文学
第2章
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第53話

『さぁー無事に帝都警察署本部に到着しましたー』

 オートシステムの機械音声から届けられたのは軽すぎる少女の声でした。

「目的地に着くまでずっと機器にいるとは、アオイちゃんは暇なのかな?」

 鈴木駿介は自動で扉が開いた後部座席から降りて、帝都警察署本部の高い高いビルを見上げます。

『暇じゃありませんよー、アオイちゃんはーボスの命令で来ましたー』

 怒り口調のアオイに、駿介は目を細くさせて遡る記憶に残った出来事を思い出し、

「アオイちゃん……君はボスに忠義を尽くすのか」

 オートシステムが搭載された自動車に問いました。

『それはぁーアオイちゃんと、ボスの問題です。鈴木さんにはまーったく関係ありません。それではー』

 それからアオイの声は消え、普段通りにオートシステムが作動して自動的に車は走り出します。

「君は殺されたんだよ、人の痛みや死も分からないクソガキに」

 肩をすくめる駿介は消えてしまいそうなか細い声を出し、訪問者を認識するセンサーに睨まれながら帝都警察署本部へと足を踏み入れました。

 受付の窓口には訪問者を待つように立つ二人の警察官。

「おはようございます。どのようなご用件でしょうか?」

 親切を込めた警察官の声に駿介は鼻で笑いそうになりますが堪えて首を横に振ります。

「帝国高等学園で社会を担当している鈴木駿介と申します、うちの教え子だった七宮和樹君に会わせてほしいんです。大事な話がありまして」

 ポケットから取り出した顔写真付きの証明書には紛れもなく帝都公認と表記され、警察官はすぐに七宮和樹を呼び出しました。

 連絡して間もなく、硬い床を軽快に叩く靴の音が駿介の耳へ。

 真面目そうな表情に浮かぶ爽やかな明るさと戸惑いを混ぜて駆け付けてきたのは七宮和樹でした。

「すいません、お待たせしました。それで、あの何の御用でしょうか?」

 警察官の制服を着た和樹に微笑む駿介は小さく頷くと、

「いやぁちょっと訊きたいことがあってね。2人きりで話せる場所はあるかな?」

「は、はぁ。でしたら、小会議室が空いてます。どうぞ」

 困惑が濃く浮き出てきた表情で案内をする和樹に駿介は気にせず微笑んだまま小会議室へ。

 和樹が小会議室を開けると、薄暗い室内の照明が2人を出迎えるように青白く照らします。

 円を描いて集まるテーブルとイスに腰掛けるよう和樹に誘導されますが、駿介はそれを拒否して立ち続けました。

「えっと、どこかでお会いしました? 学園にいて鈴木という先生に会ったことがありません」

「まぁそれはともかく単刀直入に訊くよ、大山を殺した犯人を教えてほしい」

 駿介の口からさらっと出た質問に和樹は目を丸くさせます。手も震えて、微かに汗も。

 そんな和樹の様子に微笑んだ駿介。

「七宮巡査いや、七宮刑事、特例昇進おめでとう。レヴェルに所属している元墨田グループの鈴木駿介と申します」

「犯罪組織が何故そんなことを?」

「そうだね、ウソをつくのは凄く苦手だ、それに俺はお喋りだ。大山は俺の妹を薬物で記憶消去させた極悪人、しかも体は大きい、あんなやつを殺せる化け物に是非会ってみたい」

 和樹の大きく開いた瞳孔を面白そうに見つめる駿介は彼の返事を待ちます。

 震えている手を拳に変えた和樹の表情は険しい。

「銃がある世界ではどんな人間でも平等に強くなれるんです……化け物なんて存在しません。誰がどう言おうと彼女は人間なんです!」

 そうか、と、駿介は口角を下げて頷きました。

「じゃあ二ノ瀬さんに会わせてほしい」

 和樹は咄嗟に自身の口を手で押さえて、険しい表情のまま駿介を睨んでいます。

「んー居場所までは教えてくれないなら、アオイちゃんの出番だ」

 そう言ってポケットから取り出した薄い液晶型の携帯電話からアオイと登録された番号に繋げました。

『はぁーい永遠の15歳アオイちゃんでーす!』

 アイドルのような自己紹介口調に耳を塞ぎたくなる駿介でしたが和樹にまで聞こえるように設定。

 予想もしていなかった音声に驚く和樹でした。

『二ノ瀬逢華の最新情報でーす。彼女の居場所は簡単ですよぉ、1時間前に休暇届を提出してー、行先は竜山でーす』

「竜山って寂びた集落しかないところだね、不思議だなぁ」

『なんででしょうねぇー』

 呑気なやり取りにしか聞こえない2人の会話に興味も示さず、和樹は動き出します。

 焦り、それだけが読み取れる和樹の強張った表情。小会議室から姿を消しました。

「ありゃ、逃げれちゃったよ。でも、あの様子じゃ初めて知った感じだ、追いかけてもいい?」

『ダメでーすよー。ボスに任された情報収集を優先にしてくださーい』

 アオイの注意にやれやれと従う意思を呟いた駿介は通話を切り、小会議室から出て行きます。

 人がいなくなったのを認識した部屋は暗く沈み、無人の空間へ。

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