気がついた私はルードに食事を食べさせられました
意識を失った私はどこか知らないところを彷徨い歩いていた。
世界は真っ白だった。
そして、どこまで歩いても、何もない。
いい加減にうんざりした時だった。
広いところにでた。
森の中だ。
よく見吠えのある風景だった。
オイシュタット領だ。
屋敷の近くの森の中だ。
私はいつの間にか小さくなっていた。
そして、木に登れないって泣いていた。
「何いつまでも下で泣いているんだよ」
上から声がした。
上にはこれまた小さくなったルードがいた。
「さっさと上がって来いよ」
ルードが言ってくれるが、そんなの出来たらとっくにやっている。
私がむっとした顔で上を見ると
「本当に手がかかるな」
ルードが降りてきてくれた。
「ほら、もう一度やってみろ」
「えっ、でも、出来ないし」
「後ろから押してやるから」
今度はルードが後ろから押してくれたのだ。
私はなんとか、木に足をかけて、少しだけ登れた。
「凄い、めちゃくちゃ高い!」
私は大喜びだった。
「本当に手間ばかりかけさせやがって」
「登らせてくれてありがとう」
「ふんっ、まあな」
文句を言うルードに私がお礼を言うと、ルードは照れてか視線をそらせてくれた。
照れるルードはなんか少し可愛かった。
でも、そこから降りるのがまた大変だったんだけど……
「本当にクラウはドジだな」
とか散々文句を言われたけれど、下に降りるまではちゃんと面倒を見てくれたのだ。
「クラウ! クラウったら」
私は外から呼びかけられた。
はっとして気付く。
うっすらと目を開ける。
まぶしい!
「良かった。気付いたのか」
誰かが言う。
ゆっくりと焦点が合って、その人物がルードだった。
「ルード!」
私は喜んで声を上げた。
「クラウは24時間意識を失ったままだったんだ。目を覚まさなかったらどうしようってとても心配したよ」
ルードのほっとした声に、
「えっ、そうだったの? 心配かけてごめんね」
私は一応謝った。
「いや、俺こそ、クラウを守れずに申し訳なかった」
ルードが頭を下げてくれるんだけど、
「ううん、助けに来てくれてありがとう」
私は首を振ってお礼を言った。
「本来、クラウにもランベールには注意すべきだと言っておけば良かったんだ」
後悔してルードが言った。
「えっ、ランベール先生?」
「あいつは教会派だったからな。今回の件も教会のロメウス司祭が絡んでいた」
「えっ、教会が?」
ルードが言うには教会のロメウス司祭がカッセルの鉱山に行って継母と義妹を連れ出して学園に連れてきたらしい。
継母らが来たと聞いて素直に私が行くわけは無いと思った教会側が、私を呼びに行く役をランベールにさせたらしい。
私はランベールにはいつも怒られていたから言われて慌ててついていったと言うわけだった。
その後、私を恨んでいた継母と義妹はロメウスに言われたとおりに呪いの短剣で私を刺したそうだ。
その後は教会の施設で大切に保護すると約束されていたらしい。
「でも、何故教会が私を襲うの?」
私は疑問に思っていることを聞いた。
「それは君が俺の婚約者だからだ。教会としてはなんとしてでも聖女と俺を婚約させたかったらしい」
「そうなんだ」
私は改めて教会に狙われていたことを知った。
「本当に、申し訳なかった。クラウは俺の婚約者になったんだから、もっとちゃんと護衛等をつければ良かった」
ルードが謝ってくれたが、
「ううん、学園の中ではルードですら護衛はいないじゃない。のこのこついていった私が悪いのよ。私がもっと用心すれば良かった話だわ」
「まあ、それはそうなんだけど、本当にクラウが刺された時は心臓が止まるかと思ったよ」
ルードはそう言うと私を布団の上から抱きしめてくれたんだけど。
「えっ、ルード」
「ウホン、ウホン」
戸惑う私はルードの後ろから咳払いがして慌ててそちらを見ると、ハイデマリーさんや、校医の先生達が立っているのが目に入った。
私は思わず布団に潜り込んだ。
「なんだ一体」
不機嫌そうなルードの声がする。
「クラウディアさんが目覚められたんなら、少し見させてもらっても良いですか」
「ああ」
ルードは不機嫌そうに言うと男連中を連れて外に出てくれた。
私は体を起こして校医の先生に向き合った。校医の先生は聴診器を当てて、私に2、3質問をすると
「まあ、どこも悪くないみたいですな。とりあえず、今日はここにいて、明日寮に戻られたら良いでしょう」
先生はそう言ってくれて、出て行った。
入れ替わりにルードが食器の載ったトレイを持って入ってくる。
「クラウ、おなかが空いたんじゃないか。おかゆを作ってもらったんだが」
なんとルードが食事の心配をしてくれるなんて思ってもいなかったので私は驚いた。
「ありがとう。そういえば少しおなかが空いたかも」
私が言うと、
ルードは私の横に座ってスプーンでおかゆをすくってくれた。
「えっ、ルード、私自分で食べられるわよ」
「何言っているんだ。がっついてまた熱いまま食べて火傷するかもしれないだろう」
「ちょっとルード何歳の時の話をしているのよ」
「いいから、はい」
ルードはふうふうしてスプーンを冷ましてから私の口元におかゆを持ってきてくれたんだけど……
私は仕方なしに食べる。
「美味しい」
久しぶりの食事は美味しかった。
「じゃあ、人参も」
「えっ」
私は人参が苦手で眉を上げたけれど
「ふんっ、好き嫌いすると育たないぞ」
「もう大分大きくなったわよ」
「他の所も」
なんか失礼にもルードは私の胸を見てくれたんだけど、
「何よ。ルードも聖女みたいに大きいのが良いの?」
私がむっとして言うと
「えっ、そんなことは無いが」
そう流しながら、ルードは強引に人参を突き刺したフォークを口の中に入れてくれた。
「はい、次はまたおかゆ」
ルードは冷ましたおかゆを私の口元に持ってきてくれた。
仕方なしに私はパクリと食べる。
そうやって私は怒る暇も無く、親鳥が雛に餌をやるように黙々とルードにおかゆを食べさせられたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます
ルードに昔のように食べさせられるクラウでした。
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