ルード視点 クラウにナイフが刺さったのをみて自分がどれだけクラウを愛していたか悟りました
クラウが大司教と聖女に虐められている現場に遭遇して俺は切れた。
俺が聖女と婚約することはないとはっきりと断ったのに、大司教は諦めてくれなかった。
俺が断ったのに、聖女と皇子が結婚するのは恒例だとぬかしてくれた。
俺としてはたまたまそうなっていただけだと周りからは聞いていた。
ただ、俺がそう言っても教会連中はなかなか納得しなかった。
俺が諦めの悪い連中になんと答えようか考えているときに母が現れて、クラウを俺の婚約者にするとはっきりと教会の連中に言ってくれたのだ。
俺がまだクラウに何一つ言えていないのに、母は何を言ってくれるのだ。
俺は最悪の予感がした。
怒り狂った教会連中が消え去った後で、俺の不安は的中してそのまま祖父母のところに連れて行かれたのだ。
そして、祖父母の前で8年前からクラウが俺の婚約者になっていたとクラウに宣言してくれたのだ。
いや、だから、ちょっと待ってくれ!
そういうことは本来俺からクラウに伝えないといけないだろう!
母にそう文句を言ったら
「あなた、いつまでかかっているのよ! 遅すぎるわ」
と母から叱られてしまった。
「判っているの? あなたの名誉のために言わなかったのよ! コンスタンツェちゃんの婚約者になりたくないから、あなたが婚約者はクラウちゃんにしたいって叫んでいたことを!」
母に厳しいところを突かれた。
確かにそうだ。俺は当時よく、皇宮に遊びに来ていたコンスタンツェに剣で散々ボコボコにされていたのだ。
こんな化け物に剣で勝てるわけないだろう!
何しろこいつは自分より弱いやつとは絶対に婚約しないとのたまっていたのだ。
弱ければ強くなるまで鍛え上げると……
そんなの無理だろう!
こんなやつを婚約者にしたら俺の身がいくつあっても足りない。
それに比べれば出来ない子ちゃんのクラウの方が1000倍ましだ。
だから俺はクラウが良いと言ったのだ。
確かに当時はそう言った。
でも8歳の子なんだからそれで良いだろう。
母はそんなことで決めるなんて鬼畜だとか言っているけれど、じゃあ、いくらピザン公爵にせっつかれても、そんな小さい時に婚約者の話を持ってくるなよ。
恋なんて当時はまったく理解できなかったんだから。
凶暴な剣術馬鹿か出来ない子ちゃんかどちらかを選べって言われたら、誰でも生き残れる出来ない子ちゃんを選ぶに決まっている。
自分らは学園で相思相愛で婚約者になったとか自慢しているけれど、俺もその時に選ばせろよ!
俺はそう言いたかった。
俺もクラウに不誠実な事はしたくなかったから、ちゃんと二人の仲を温めてその上で告白したかったのだ。
なのに時間がかかりすぎだとか、再会してからまだ2ヶ月も経っていないんだぞ。
そんな無茶は言うなと俺は言いたかった。
学園に入って判ったのは学園にいる対象者はろくな奴はいなかった。
剣術馬鹿は論外で、ラーラもいまいち、礼儀作法も何もなっていないすぐにベタベタくっつくしか能がない聖女は論外。
どう見てもクラウ一択だった。
クラウは見た目も良いし、出来ない子ちゃんと昔は馬鹿にしたけれど、まともだ。
勉強も別にできないことはない。
礼儀作法もアデライドにみっちりさせれば問題ないだろう。
俺はここ二ヵ月間でいろいろ距離を詰めてきたと思っていた。
それで対応が遅いなんて言われても仕方がないとしか言いようがなかった。
クラウは昔からおませで、喧嘩して怒った時に
「仲直りのキスしないと嫌だ」
と言うからよくほおにキスさせられていたのだ。
その延長線上で、キスしたら、なんか赤くなってとても可愛かった。
自分の中ではクラウに好意もあると思っていたのだ。
クラウにも好かれていると。
その日は聖女に8年前からクラウが婚約者だとダメ出しして、俺を諦めさせたはずだった。
俺は教会の連中がクラウの継母と義妹を鉱山から連れ出して、学園に連れてくるなんて思ってもいなかったのだ。
クラウを迎えに教室に行くと
「あれ、ルード様。クラウは親戚の人が来たとかでランベール先生が連れて行きましたよ」
ポピーの声に俺は慌てた。
「今日は来るなんて聞いていないぞ」
俺は慌てて学園の応接の方に向かったのだ。
その途中でだ。
パリン
俺の与えたお守りが砕け散る音がした。
「えっ」
そんな馬鹿な。俺の与えたお守りが砕け散るなんてどうしたんだ!
俺は慌てて駆けだした。
そして、応接の扉を蹴破ったのだ。
そこにはいるはずのない継母にナイフを突き刺されたクラウがゆっくりと倒れるのが見えたのだ。
「クラウ!」
俺は慌ててクラウを抱き留めたのだ。
そのクラウの胸の真ん中に剣がはっきりと突き刺さっていた。
腕の中のクラウは力もなく腕をたれていて、俺はクラウが死んだと思った。
クラウが死ぬ!
そう理解した瞬間、俺はすさまじいショックを受けた。
俺には信じられなかった。
そして、俺がどれだけクラウを愛していたか、思い知らされたのだ。
クラウがいない世界なんかで俺はいきられないと、こんな時になって初めて判ったのだ!
ここまで読んでいただいてありがとうございます
続きは明日です。
クラウの運命やいかに?
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果たして、お義兄様の想いはエリーゼに通用するのか?
山場です。
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10センチ下にはその表紙絵と各リンク張ってます
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