なんとかルードの婚約者を断ろうとしたら、礼儀作法の先生がいるから大丈夫と言われてしまいました
私はルードの隣の部屋で、ルードの婚約者になったことを悶々としていたと判って唖然とした。
そんなこと知らなかったのだ。まさか、隣の部屋にルードがいたなんて、厳密に言うと隣の部屋は主寝室でルードの部屋はその隣だそうだけど、ほとんど変わらないだろう!
「じゃあ、行こうか」
そう言うとルードはいつものように手を差し出してくれた。
私は当然のようにその手を取るんだけど、本当にそれで良いのか?
と思わないでもなかった。
「ねえ、ルード。ルードは私が婚約者でも本当に良いの?」
私は思いきって聞いてみた。
「えっ、いや、それはまあ……」
「嫌よね。もともと私のことをちびとか胸なしとか、全然出来ない奴とか、散々色々言ってくれてたし」
「いや、待てよ、クラウ。そこまでひどいことは言っていないだろう」
さすがにルードは否定してきたけれど、私が婚約者でよいなんて絶対に思っていないはずだ。エルザ様は私じゃないとダメだと、ルードが泣き叫んだって言ってくれたけど、絶対に嘘だ。このルードがそんな事言うわけはない。絶対にお母様と親友だったエルザ様から強引に決められて、断れなかったに違いない。
何しろ私はゲーム上では悪役令嬢で、ルードからは嫌われていて、断罪の上、下手したら処刑されてしまうのだから。
私はルードのためにもエルザ様にはっきりと断ろうと思った。
食堂には既に皇太子ご夫妻が食べていらっしゃった。
「おはようございます」
私はエルザ様と皇太子殿下に挨拶した。
「おはよう」
皇太子殿下は頷いてくれて、エルザ様が挨拶を返してくれた。
二人は席をくっつけてなか良さそうに食べておられる。
「クラウ、こっちだ」
席を大分離してルードは座るんだけど。
何故に?
「あら、あなた達、なんでそんなに離れて座るの?」
「あ、このムニエルうまいぞ、エルザも食べたらどうだ」
そう言って皇太子殿下がフォークに刺したムニエルをエルザ様の口の中にいれられた。
エルザ様も平然とそれをたべられるんだけど……
これって食べさせじゃない!
メチャクチャ皇太子夫妻は仲が良いんだ。
「いつもこんな感じだからな。子供のおれとしては、あんまり近寄りたくない」
子供が出来ても仲の良い二人は理想的な夫婦かもしれないが、息子のルードからしたら親のイチャイチャするのを見せつけられて複雑な気にもなるのだろう。
ルードの戸惑う言葉も良く判った。
そんな私たちの前に魚のムニエルが、出てきた。
私は少し戸惑った。
ナイフとフォークでこれを食べるのは中々大変なのだ。
たまに骨が残っているし。
小さい時に骨が喉に刺さって苦しんだトラウマがあって私は苦手なのだ。
「なんだ。クラウはまだ魚が苦手なのか?」
ルードはナイフとフォークで苦戦している私を見て、呆れてくれた。
「ほら、骨は無いぞ」
私のお皿の上のムニエルをナイフとフォークをうまく使って、切り分けてくれる。
そして、ルードは私の口にほうりこんでくれた。
私はそれをパクリと食べたのだ。
そう子供の頃、良くルードに骨を取ってもらって食べさせてもらっていたのだ。
「まあ、あなた達もとても仲が良いじゃない」
私はエルザ様に言われて、
「あっ」
思わず固まってしまった。
そういえば皇太子夫妻と同じだ。
私もルードに食べさせてもらったのだ。
昔からしてもらっていたので、思わずやってしまった。
私は真っ赤になった。
「何を今さら遠慮してるんだよ」
「いや、でも、私はもう、子供じゃないし」
「ほら」
ルードは私に構わずにどんどん口の中にいれてくれたのだった。
これじゃ、絶対に周りから見たら皇太子夫妻と同じバカップルだ。
このままではなし崩し的に決定してしまう。
これではいけないと私は決心した。
「あのう、ルード様との婚約の話なんですけど」
そして、思い切ってエルダ様に話しかけたのだ。
「学生結婚はなしよ。間違いが起きないようにカトリナには二人の間の部屋の鍵は絶対に閉めておくように言っておいたから」
なんかエルザ様の中では前倒しになることはあっても、解消は無いみたいなんだけど。
「いえ、そうじゃなくて、私は少し前までカッセル王国の男爵家の令嬢でしたし、ルード様の婚約者には釣り合わないのでは無いかと思うのですが」
「何言っているのよ。クラウちゃん。あなたはライゼマン公爵家の一員だから何も問題ないわよ。昨日もお義父様お義母様と話してもらって判るように、二人とも乗り気だったでしょ。この国で皇帝夫妻が良いって言っているんだから何も問題は無いわよ」
エルサ様は平然と言われるんだけど、それは確かに皇帝ご夫妻が良いって言えば誰もなかなか反対は出来ないだろう。
「でも、ルード様は見目麗しいのに、私なんか地味な女では良くないのでは。ルード様の好みの問題もありますし」
「何言っているのよ。あなた、ルードが好きでも無い女に毎日2時間も補講しないわよ」
「えっ」
私は固まった。そういえば忙しい中2時間くらい、下手したらもっと補講に付き合わせている。
「でも、それは私の成績が悪すぎたら私を連れてきたルード様のお立場が無いからでは」
「そんな訳ないでしょ。教会からも出来たら聖女の勉強を見てほしいと依頼を受けたのよ。でも、ルードったら『時間が無いから無理だ』って瞬時に断ったのよ。そもそもあなたの今着ている衣装だって自分の瞳と同じ青が良いって自分で決めたんだから。好きでも無い女に自分の瞳の色の衣装を纏わせるわけがないじゃない」
「母上!」
ルードがエルザ様に怒ったが、どうやら事実らしい。
えっ、ルードは私で良いと思っているの?
いやいやいやいや、私が無理だ。
「でも、エルザ様。私、実家では虐待されていて、礼儀作法とか社交とか全然出来ていなくて、帝国の貴族の中でやっていく自信が無いんですけど」
私は正直にお話ししたのだ。
「何言っているのよ。クラウちゃん。そのためにわざわざアデライドを学園に派遣したんじゃない。3年間、みっちりアデライドに指導されたら確実に一人前になれるわ。そうよね。アデライド」
「はい、さようでございます」
げっ!
私は思わず叫びそうになった。
そこにはやる気に満ちたアデライド先生が立っていたのだ。
「エルザ様のご期待に添うように、全力でクラウディアさんを指導するつもりでございます。ご安心ください」
目を爛々と輝かせてアデライド先生が言ってくれるんだけど、ちょっと待って!
私、耐えられるんだろうか?
私は完全に固まってしまったのだ。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
掘りから埋められるクラウでした。
アデライド先生の補講に耐えられるのか?
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皆様の応援のおかげで私の小説の第三巻がコミックシーモア様から先行発売されました。
果たして、お義兄様の想いはエリーゼに通用するのか?
山場です。
『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。【シーモア限定特典付き】』
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10センチ下にはその表紙絵と各リンク張ってます
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