聖女と大司教を皇太子妃様が私を息子の嫁にするとおっしゃったんですけど……
「これはこれは皇太子妃様。その女をもらわれたいとはどういう意味ですか?」
大司教がエルザ様に聞いてくれた。
私もその意味を知りたくてエルザ様を凝視したのだ。
でも、エルザ様は怒りを帯びた目で大司教等を睨み付けたまま歩き続けた。
「大司教。あなた、私の叔母上の孫のクラウちゃんをその女呼びはどうかと思うわ」
私たちを通り過ぎて大司教の前に立たれたエルザ様は、私の呼び方に対して苦言を呈された。
「これは失礼いたしました。皇太子妃様の叔母上は公爵閣下に勘当されたと思っておりましたので」
大司教の嫌みが炸裂したが、
「それは40年前の情報でしょ。本当に教会の情報は古いわね。お義父様ももう何とも思っていないとおっしゃられたわ」
嫌みでエルザ様が返された。
「なんとそれは初耳ですな」
驚いて大司教が目を見開くが
「そもそもその姪の私をお義父様の息子の嫁にする段階で許されたも同然でしょう?」
エルザ様がおっしゃられるが、
「それはライゼマン公爵家を許されたということで、叔母上様を許された訳ではないかと存じますし、陛下との一件を鑑みますとその孫を皇家が養子に迎えるはどうかと存じますが」
「何言っているのよ。少なくともあなたの隣の聖女よりも身分は上なんですけど」
エルザ様が半ギレ状態で大司教に言われた。
「はい。これは異なことを。聖女様は我々の感覚では一番尊いと思うのですが」
「それは教会の中だけのことでしょ。少なくとも礼儀作法が全然できない伯爵令嬢なんて我が家にはいらないわ」
ええええ! エルザ様、それを大司教らに面と向かって言っていいんだろうか?
「な、なんと言うことを」
「皇家は聖女様の協力がいらないとおっしゃられるのですか」
「なんと」
「我らが聖女様を馬鹿にされるのか」
「皇家は教会の力がいらないと」
大司教が叫び、その外野がざわざわと騒がしい。
「ふんっ、皇家は精神の卑しい聖女はいらないのよ」
「何ですって!」
聖女が反論しようとするが、大司教が黙らせた。
「それと養子に取るんじゃないわよ。私の義娘として迎え入れるんだから」
私はエルザ様の言った意味がよく判らなかった。
それは大司教達も同じようで、
「皇太子妃様。義娘とは?」
「その名の通りよ、判らないの?」
馬鹿にしたようにエルザ様がおっしゃられるが
「具体的におっしゃって頂かないと」
大司教の言葉に、私も聞きたかった。
「将来的に私の息子の嫁になるに決まっているでしょ」
「母上、それはまだ確定では」
エルザ様の言葉にルードがとても慌てていた。
でもそれ以上に私の頭は理解が追いついていなかった。
息子の嫁って、確かエルザ様には息子はルードしかいないはずだった。
ということは、ルードの嫁?
私が!
嘘ーーーー!
私は真っ赤になったのだ。
そんなの聞いていない。
私がルードを見ると
「いや、クラウ、これは母が勝手に言っているだけで」
ルードが必死に否定してくるんだけど
「何言っているのよ。ルード。あなたコンスちゃんと一緒になりたいの?」
「絶対にいやだ」
「じゃあ、この礼儀知らずな上に無知な聖女と一緒になりたいの?」
エルザ様の声に一瞬聖女は身を乗り出したが、
「それはもっとあり得ない」
ルードの言葉に口を開けて呆然としていた。
「ほら見なさい。なら、クラウちゃんしかいないじゃないの」
当然のようにエルザ様はおっしゃるんだけど……
いやいやいやいや、私以外にもルードに相応しい者はいるだろう。
正式にはどうなったかは知らないが、ついこの前までは私は属国の男爵家の令嬢だったのだから。
それも虐待された!
「母上。しかし、ものには順序というものがあって」
「何をもたもたしているのよ。そんな事に手間取っていると、知らない間にコンスちゃんかそこの聖女と婚約していることになるわよ」
「いや、それは困る」
「じゃあ、いいじゃない」
「いやでも」
二人の言葉は私の耳には入ってこなかった。
「皇太子妃様。何故我らの聖女様がそこの属国の男爵家の娘と同列なのですか?」
大司教が切れて言い出した。
「何言っているのよ。この子は私の従姉妹の子供なのよ。それもライゼマン公爵家のね。そこの聖女は今は伯爵家の養子だけど、元はといえば孤児院の孤児じゃない。比べようもないわ」
「何ですって」
「何ですと」
大司教と聖女が叫んでいたけどエルザ様は全く動じない。
「それとその礼儀作法。本当になっていないわよ。幼児教育からやり直したら」
エルザ様は聖女を完全に見限っていた。
「なるほど、それが皇家のお考えなんですね」
完全に大司教は怒り狂っていた。
「皇家のお考えは判りました。我が教会としては今後魔物が出ても皇家には協力させていただきません」
「あっ、そう。じゃあ、教会への寄付も全てカットするわね。役立たずの教会に寄付するいわれはないわ」
大司教の剣幕に負けず劣らない勢いでエルザ様も宣言されたのだ。
売り言葉に買い言葉だ。
でも、それで果たして良いのか?
男爵令嬢よりは聖女の方が人格的な問題は置いておいて、皇子の嫁には良いように思うんだけど……
「ふんっ、後で吠え面かいても知りませんからな」
「同じ事を言ってあげるわ」
大司教は私たちを睨むと踵を返して、去って行った。
「母上よろしかったのですか」
「全然問題ないわ。私に逆らうなんてあの大司教も100年早いのよ。直ちに全貴族に命じて教会への寄付をやめるように伝えなさい。逆らう者は二度と私が挨拶を受けないと言っていると伝えるのよ」
「判りました」
執事と思われる人が慌てて立ち去って行ったんだけど、本当に良かったんだろうか?
それよりも私がルードの婚約者になるかもしれないってどういうことなの?
私には全く判らなかったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
頭の中で理解の中で理解の追いついていないクラウでした……
この続きは今夜です。
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皆様の応援のおかげで私の小説の第三巻がコミックシーモア様から先行発売されました。
果たして、お義兄様の想いはエリーゼに通用するのか?
山場です。
『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。【シーモア限定特典付き】』
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10センチ下にはその表紙絵と各リンク張ってます
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