大司教がルードと聖女の婚約は決まっていると話しているところに、皇太子妃が現れて私をもらってくれると言われました
食事の後も放課後までは私はコンスに守ってもらっていた。
一つ目巨人を倒したコンスの力は絶対でクラス内にはもう私を虐める者は一人もいなかった。
他クラスの面々もコンスのいる前で私を虐めようとする無謀者は聖女くらいだったのだ。
そして、放課後になった。
私はこれからルードの部屋まで移動しないといけない。
まあ問題ないと思うけれど、この途中でコンスがいないところで、今まではいろんな虐めを受けているのだ。
「どうする、クラウ、送っていこうか?」
コンスが言ってくれた。
「いや、でも、そこまでしてもらうのも悪いわ」
さすがにそこまでおんぶに抱っこは私はまずいと思ったのだ。
「いや、別に少し遠回りするだけだから問題は無いぞ」
コンスは何でも無いように言ってくれた。
「うーん、でも」
そこまでコンスに頼り切りになるのはまずいと断ろうとした時だ。
「クラウ!」
私は廊下から私に声をかけてきたルードに驚いた。
「ルード、どうしたの?」
私が驚いて聞くと
「迎えに来た」
と何でも無いようにルードが言ってくれた。
「迎えに来てもらって良かったな、クラウ」
「本当に、熱々ね」
コンスに次いでヘレナまで言ってくれるんだけど。
「いや、そんなんじゃないって」
私は少し赤くなった。
「何している。早く行くぞ」
ルードの声に興味津々なクラスメートの視線が痛くて私は慌てて廊下に出た。
「荷物を持とう」
「えっ?」
私は再度、驚いた。
「どうした。早く貸せ」
ルードは当然のように言ってくれるんだけど、
「いや、だって、今までそんなことしてくれたこと無かったのに」
私が言うと
「いや、まあ、やることにしたんだ」
「何なの、それ? 熱でもあるんじゃないの?」
私が慌てておでこに触ると
「あれ、別にないわね」
「あるか」
怒ったルードは私を置いて歩き出したのだ。
「ちょっと待ってよ」
少し怒ったルードが、私の歩幅も考えずにどんどん先に行ってくれるんだけど……
「ちょっとルード」
私がルードを呼んだ時だ。
「ああああ、ルード様! お会いしたかったです」
ルードの前に聖女が現れたのだ。
「何言っているんだ。クラスが同じなんだからさっきまで一緒だったろうが」
呆れてルードが言うが、
「でも、ルード様と二人きりではありませんでしたから」
そう言ってルードに体をすり寄せようとするのを鞄で避けようとしてくれた。
ええええ! でも、それ私の鞄!
「まあ、ルード様はこのように可愛い……何で鞄を二つも持っておられるのですか?」
目敏く二つの鞄を見つけるとやっと後ろの私に気づいたみたいだった。
「まあ、ルード様。私というものがありながら、何故その女と一緒にいますの」
きっとして私を睨み付けてくれるんだけど、
「何を言っている。デジレ嬢。君は単なるクラスメートに過ぎないだろうが」
「な、なんと言うことを言われるのです。私は聖女なのです。かつて出現した聖女は全て皇家と婚姻を結んでいるのです。私が将来的にルード様と婚姻するのは自明の理ではありませんか」
堂々と聖女は言ってくれた。
まあ、元々属国の男爵令嬢であった私がルードと釣り合うなんて思ってもいないし、何でも無いことだと思おうとしたが、何故か胸が少し痛かった。
「そんな前例など聞いたことはないぞ」
ルードが反対したが、
「私は教会でそう習いました。前回の聖女様も皇帝陛下と結婚したはずです」
聖女が言い張ってくれるんだけど。
「何を言って」
「その通りですよ。聖女様」
聖女の後ろから声がかかった。
そこには大司教が聖職者の一団を連れてやってきたのだ。
「大司教様」
聖女がその姿をみて微笑んだ。
「どうなさったのですか? 聖女様」
恭しく大司教が聖女に話しかけた。
「ルード様が聖女は必ず皇家の方と婚姻を結んでいるとお話ししたら、ルード様が否定されたのです」
悲しそうに聖女が話してくれた。
「なんと言うことでしょう。私の知る限り聖女様は皇家の方と婚姻を結んでいらっしゃいます。それも皇家から求められてのことだと記録にはございますが」
「ふんっ、それは教会側の都合の良い記録であろう。皇家の記録では致し方なくと書かれておるぞ」
「しかし、皇家としても聖女様のお力を取り込みたいのではありませんか?」
「ふんっ、そのようなことは無いと思うが。俺が読んだ書物では教会側が皇家の力を借りたいがためにいつも画策すると書かれていたぞ」
「ものは言いようですな。私としては聖女様が出現なさった6年前に陛下とお話ししたら、是非とも前向きに考えたいと陛下はおっしゃっていらっしゃたのですが」
「何だと、そんなのは聞いておらんぞ」
ルードが寝耳に水の話だと言い出したんだけど。
帝国としては属国の男爵家の令嬢よりも、聖女様と結婚した方がいいに決まっている。
というか、私とルードはそんな関係じゃないんだけど……
「まあ、その女と遊ぶなとは言いませんが、いずれ捨てられる身。そうなった時にその女をどうされるおつもりですか」
大司教がいやらしい笑いを浮かべてくれた。
何故否定しないんだろう。
私はルードとは単なる幼なじみで、今は勉強を見てもらっているだけなのに!
「本当に。かわいそうなクラウさん。ルード様に捨てられるなんて!」
「最悪もらい手がなければ教会で斡旋いたしますよ」
下卑た笑みを浮かべて大司教が言ってくれた。
こいつは絶対に変なことしか考えていない。
そもそもルードとは付き合っていないけれど、行くところなかったら大伯母様のところにやっかいになるから掘っておいてほしい。
「何を言っている。俺はクラウを捨てたりはしないぞ」
私が考えた時だ。ルードがいきなり言い出してくれたんだけど……
ええええ!
何言ってくれているのよ!
捨てるも何も私たちまだ付き合ってもいないじゃない!
というか、私たちは単なる幼なじみのはずだ。
「ほう、皇帝陛下が聖女様との婚約を決められてもですか」
嫌らしい笑みを浮かべて大司教が言った時だ。
「まあ、教会風情が何を言っているのかしら」
声がしたので慌てて後ろを振り返ったらそこには皇太子妃様が騎士を従えて仁王立ちしていらっしゃった。
「クラウちゃんは我が皇家がもらうと決めているのよ。勝手な推測で話すのはやめていただけるかしら」
私はエルザ様が何をおっしゃっているか判らなかったのだ。
もらうって何だろう? 養子にでもしてくれるんだろうか?
でも、養子って皇女様になるってこと?
私は全く理解していなかったのだ。
ここまで読んでいただいてありがとうございます
皇太子妃の言いたいことは?
続きは明日です。
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果たして、お義兄様の想いはエリーゼに通用するのか?
山場です。
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10センチ下にはその表紙絵と各リンク張ってます
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