大叔母様が私がされたことを聞いて激怒してカッセルの伯爵家が存亡の危機に立ちました
私は公爵夫人に抱かれて頭が真っ白になってしまった。
そして、昔抱きしめられた温かい母の腕の中を思い出したのだ。
そうしたら何故か涙が漏れ出してきたのだ。
「まあ、どうしたの? クラウディアさん」
公爵夫人に驚かれたが
「すみません。公爵夫人。昔、母に抱いてもらったことを思い出してしまって」
私は思わず、涙を拭こうとしたが。
「いいのよ。泣いて。思いっきり泣きなさい。私はあなたの大叔母に当たるんだから」
公爵夫人の温かい言葉に私の涙腺が決壊してしまった。
「大叔母様!」
そういうと号泣してしまったのだ。
絶対にやってはいけないことだった。
アデライド先生がいたら叱責されていただろう。
「ごめんなさいね、本当に辛かったわね」
そう言って抱きしめてもらって、肉親の暖かさを思い出していた。
久々の肉親の暖かさだったのだ。
「お母様、ずるい。私がクラウちゃんを連れてきたのに」
そう言ってうしろからエルザさんも抱かれて私は抱かれて泣いたのだ。
それを玄関口でやってしまったことを後でアデライド先生にグチグチ注意を受けたけど、私は心の底から泣けてスッキリした。
そのまま、私は応接室に案内された。
応接では泣いている私の右横に大叔母様の公爵夫人が左横にエルザさんが座ってくれた。
右斜め前がライゼマン公爵でその横がオイゲン様、お誕生席にルードが座っていた。
ルードはその席でなにか不満そうだったけれど。
私が落ち着くのを待って大叔母様が優しくきいてくれた。
「お母様が亡くなってから大変だったのよね」
「はい。母の死からそんな経たないうちに父が継母と連れ子を連れてきて」
「まあ、そんな非常識なことをしたの?」
大叔母様は絶句しておられた。
「その場で挨拶しろって言われてとっさに出来なくて」
「それはそうよ」
「私でも出来ないわ」
「できない私は継母に張り倒されたんです」
私の言葉に皆目を見張った。
「まあ、なんてことなの!」
「ルード、どういう事、私そんな事は聞いていなかったわよ!」
「いや、母上、私も詳しくは聞いていなくて」
エルザさんの剣幕にルードもたじたじになっていた。
「そんなことなら、あの継母達を鋸挽きの刑にしてやればよかったわ」
なんかエルザさんがとんでもないことを言っているんだけど……
「それは本当に大変だったでしょう」
「はい。それからはメイドのような仕事をさせられて」
「まあ、なんてことなの! この公爵家の血を引くあなたがメイドのような事をしていたの」
「はい。それで気に入らないことがあると鞭で打たれて」
「はい? このライゼマン公爵家の血を引くクラウディアを叩いた上に鞭打ちまでしたなんて。エルザ、ちゃんと始末はつけさせたの?」
「100叩きにして鉱山送りにしたと報告を受けています」
「そう、それでも罪が軽かろうと思われるけれど、それでその女はどこの貴族の女なの」
公爵夫人が更に聞いてくれた。
「いえ、そこまでは」
エルザさんも知らないみたいだった。
「近くのハイデック伯爵の出だと聞いたことがあります」
私が答えると
「カッセルのハイデック伯爵など聞いたことがないな」
大叔父様が呟かれた。
「我が領地の隣にある伯爵家なんです」
「ああ、おいシュタット家が伯爵位から男爵位に降爵した時に伯爵になった男爵家ではありませんか」
オイゲン様が教えてくれた。
「なんですって! その伯爵は人の領地を奪っておきながら更にそこに継母をねじ込んで、その娘を鞭打ちにしていたというの?」
大叔母様は驚いて立ちあがった。
「あなた、カッセル国王には今回の件、抗議したんでしょうね」
「いや、それはオイゲンがだな」
「はい?」
オイゲン様はいきなり振られて唖然としていた。
「どうなの、オイゲン、我がライゼマン公爵家としてまだ抗議していないの?」
エルザ様までおっしゃるんだけど……
「それはまだで……」
いきなり振られてオイゲン様もそうとしか答えられないだろう。
「何しているの。すぐになさい!」
「ついでにそのハイデック伯爵とかの処分もどうするか確認するのよ」
「ハイデック伯爵家の処分ですか?」
オイゲン様が不審そうに聞いたが、
「当たり前ではないですか? そもそもオイシュタット男爵家は我が公爵家の妹が嫁に入った家です。その家が何故伯爵から男爵になったのかその理由と、その領地を乗っ取ったハイデック伯爵が現当主を虐待させていたのよ。この罪を国王がどう考えているのかきっちりと話をつけていらっしゃい」
私は大叔母様の声を唖然と聞いていた。
「いえ、でも大叔母様。私のためにそこまでやっていただくわけには」
「何を言っているの。クラウディアさん。あなたはこの公爵家の人間なのよ。あなたへの行いはすなわちこの公爵家への行いなの。高々カッセル風情の伯爵家にこの公爵家がなめられるわけにはいかないわ」
私は目を白黒させて聞いているしか無かった。
でも、私はそのたかだかカッセル風情の男爵家の令嬢に過ぎないんですけど……
私のつぶやきは完全に無視されたのだ。
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