礼儀作法の先生が大司教達を圧倒して弾き飛ばしてくれました
大司教が私に会いに来たって、私に何の用なんだろう?
聖女に対しての態度がなっていないとか、少しは聖女を尊重しろとか言われるのだろうか?
それにヘレナに昨日の夜に聞いたところではゲーム中では大司教はとても貴族らしい嫌味たらたらのいい性格だそうだ。そんな相手に使いの司祭には時間がないと断って、今また待たしておけと先生が言い切って待たしているのだ。
このあとは私の運命はどうなるだろう?
そう不安に思って授業にも集中できなかった。
その結果、それでなくても出来ない礼儀作法の授業で私はアデライド先生の集中砲火を受けて炎上した……
「クラウディアさん、人はいついかなる時も礼の心を忘れることとなく行動しないといけませんよ。判っているのですか?」
私はチャイムの鳴った後までもアデライド先生に怒られ続けたのだ……
「では、行きましょうか」
「行くってどちらにですか?」
私は不思議に思って聞いていた。
「会いたくはありませんが、教会の大司教という方があなたに面会にいらっしゃっているそうです。そこに行くしかないでしょう」
「えっ、アデライド先生も一緒に来ていただけるのですか?」
私は驚いて聞いていた。
「当たり前です。あのような狼、いえ、常識しらずの教会関係者の前に、大事な生徒のあなたを一人で向かわせる訳には参りません。それにデジレさんの保護者である方々にもお話ししたいことがありますし」
そう言うとアデライド先生は笑って言ってくれた。でも、瞳の奥が怒りで燃えているのが見えて私は背筋が凍り付きそうだった。
やばい。これは絶対にやばい奴だ。
一人で怒られに行くのも嫌だけど、これは教会対アデライド先生の戦争が勃発する気配が濃厚だ。
私は怒りの戦神に引き連れられていく戦いたくない戦士の気分だった。
自分のためにアデライド先生が来てくれるのはわかるけど、もっとひどいことになりそうだと想像するのは私の思い過ごしだろうか?
でも、当事者の私は付いていくしかなかった。
アデライド先生は学園長室の扉をノックした。
「どうぞ」
不機嫌そうな学園長の声がした。
「遅くなり申し訳ありません。クラウディアさんを連れてきました」
頭を下げてアデライド先生が入った。
中にはこの前の司祭とその横は偉そうな太った男、とても着飾っているのでこの男が大司教なのだろう。私を脂ぎった視線で見てくれた。その横の男も同じくいやらしそうな視線で私を見てくれるんだけど。
むっとしだか、軽く見た後、私は軽く頭を下げて先生の横に向かった。
その瞬間ぎろりとアデライド先生ににらまれた。
礼の角度が足りなかったみたいだ。
ああああん、怒るのは後でよいから、これ以上にひどいことにならないようにしてほしい。
と私は最高神の戦神に祈ったのだ。
でも、それが間違いだった。
戦神に祈ったら戦いになってしまうじゃない!
なんでこの国の最高神が戦神なんだろう?
後悔したのは後の祭りだった。
「えらく遅かったではないか、アデライド先生。大司教様が待ちくたびれていらっしゃるぞ」
不機嫌そうに学園長が言った。
この学園長、馬鹿だ。怒り狂っているアデライド先生にそんなこと言ったらまずいって!
私の不安は的中した。
「学園長。何かおっしゃいました?」
猫なで声でアデライド先生が言ってくれたけれど、私はその瞬間、ゾクリとした。
学園長もびくりとした。
「いや、お客様の大司教様がいらっしゃっているのだ。もう少し融通してだな……」
驚いた学園長が言い方を変えたが、遅かったみたいだ。
「学園長、何をふざけたことをおっしゃっていらっしゃるのですか? 授業中は授業がすべてに優先されます。私、この学園に赴任するときにその旨、学園長にお話ししているはずですけれど」
「いや、確かにアデライド先生はそう言われたが、今は大切なお客様である大司教様がいらっしゃっていて……」
「それがどうしたのです」
学園長の言葉をアデライド先生は即座に流した。
「君、何を言っているのだ。こちらは教会のトップの大司教様だぞ」
大司教の横の偉そうな男がアデライド先生に食って掛かった。
「だからそれがどうしたのかと申しているのです。学園内は基本みな平等です。大司教様もここに入ればほかの保護者の皆様と同じなのです。授業中に生徒に会いに来られたなら、授業を終えるまで待つのが基本ではないですか? モントラン伯爵」
「ヒィィィィ」
アデライド先生がじろりと伯爵をにらみつけた瞬間、伯爵は一センチくらい飛び上がった。
この二人は知り合いみたいだ。
それも圧倒的にアデライド先生が強いみたいだ。
「ほうーー、学園は教会に何か含むところでもおありなのですかな」
この場で大司教は嫌味を言ってくれた。
「いえ、大司教様、そのようなことはございません。そうだろう、アデライド先生」
学園長が慌てた。
「学園長。何を慌てていらっしゃるのですか?」
呆れてアデライド先生が言った。
「この学園は始皇帝様が作られたのです。その時に始皇帝様は学園に圧力をかけることを禁じられました。大司教様は始皇帝様に逆らうとおっしゃるのですね」
微笑んでアデライド先生が言ってくれるがその目が完全に怒っていた。
「いや、そのようなことは申しておらんが、私も忙しい身での」
「それがどうしたのです。忙しければこちらに来なければよいではないですか? 何しにいらっしゃったのですか?」
「君、流石に大司教様に失礼だろう」
ロメウスが言ってくれた。
「どちらが失礼なのですか? わからないようだからお話させていただきますが、私この学園に赴任する時に皇帝陛下に言われたのです。全身全霊をかけて未来の帝国を背負う学生の教育を行えと。それを邪魔するものは他国の王族であろうと排除して構わない。全責任は陛下が取って頂けると」
その言葉に全員唖然として聞いていた。
「ここでの言動は学園に圧力をかけたものとして全て皇帝陛下にご報告させて頂きます」
この言葉に全員目を見開いた。
後で聞いた所によるとアデライド先生は宮廷の礼儀作法指南で、皇后様付きの侍女をしており、未来の女官長は確実だとか言われていた。
それが陛下直々の命でしばらく学園で教育することになったらしい。
「いや、アデライド先生。私の言葉が過ぎたようだ」
「左様でございます。我々は学園に圧力をかけるつもりは毛頭なく」
「儂も皇帝陛下に逆らうなどとんでもない」
皆さすがに陛下には逆らえないみたいだった。
「おわかり頂けたようで、ようございました」
アデライド先生はにこりと笑ってくれた。
皆ホッとしたみたいだが、いや、この笑みは絶対に何かよくないことが起こる笑みだって!
「では私からも皆様にお話したいことがございます。デジレさんの件ですが、皆様保護者でいらっしゃいますよね。後見人は大司教様でいらっしゃいますし、養父様はモントラン伯爵様、育ての親役はロメウス司祭だとお伺いしております」
「まあ、そうだが」
皆しぶしぶ頷いた。
「デジレさんですが、男の人との距離が近すぎます。教会や伯爵家ではあのように教育なさっているのですか?」
「いや、そのようなことは」
「何を仰っているのです。ルードさんや、A組の男子生徒たちにベタベタくっついているのですが、見苦しいです。どういう教育をされたらああなるのです…………」
それからアデライド先生の怒り狂った説教を私達は1時間以上延々と聞かされる羽目になったのだ。
結局疲れ切った大司教達は何も話せずに帰っていった……
ここまで読んでいただいてい有難うございました。
アデライド先生が一番強かったです……
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