忙しい時に声をかけてきた教会からの使者をコンスが始業のベルと同時に跳ね飛ばしてくれました
更新できていなくてすみません。
上高地から前穂高岳に登っていました。
次の日から私はとても忙しくなったのだ。
ルードの宿題だけでも大変だったのに、アデライド先生まで、宿題を出してくれたんだけど……
実技だけでなくて、宿題まであるの?
私は唖然となってしまったのだ。
「ねえ、ヘレナ。この貴族の歩き方とか、挨拶の仕方とか、とても難しいんだけど……私には無理よ」
私が泣きそうになって言うと、
「ルード様に嫁ぐんだったら、それくらいは出来て当然じゃない?」
「はい? 何言っているのよ、ヘレナ。ルードは帝国の高位貴族よ。属国の男爵家の娘なんて無理でしょ」
私は当然のことを言ったのだ。
「でも、ゲームではあなたはルード様の婚約者だったのよ」
ヘレナが当然のように言うんだけど、私はそんな話は知らない。
「それは、クラウが公爵家の令嬢だったらでしょ。現実に私は違うわよ」
「そこが変なのよね。でも、絶対にあんたの顔は悪役令嬢クラウディアそのままよ」
「ええええ! 顔が似ているだけでしょ」
「うーん、ゲームでは触れられていなかったけれど、ライゼマン公爵家の養女だったかもしれないわ。それが継母の陰謀で阻止されたとか」
「そんな訳無いと思うけれどな」
ヘレナがいかにもありそうだって言うけれど、普通は帝国の公爵家が属国の男爵令嬢を養女にするなんて絶対にない。
「それにあなたはとてもルード様に大事にされているじゃない」
「それはない」
ヘレナの声に私は即座に否定した。
「何言っているのよ。だってあなたはルード様の色を纏ったお守りを渡されているのよ」
「私がルードのせいで女たちの嫉妬受けたから危険だからって渡されただけよ。元々ルードがレセプションで私を連れて逃げたからじゃない」
私がムッとしてヘレナに反論すると
「いや、だから、普通はルード様は女の子と踊ったりしないのよ。あなたが初めてって話よ」
「私よく判らないけれど、そもそも、学園入学前の貴族の令息が女性と踊る機会があるの?」
アデライド先生の礼儀作法の本には学園在学中は大人のパーティーは免除されると書かれていたはずだ。
「それはそうかも知れないけれど、ゲームでは聖女としか踊っていないんだから」
「ゲームゲームって言うけれど、私、そもそも悪役令嬢じゃないから」
「まあ、そこからして変なんだけど」
「大切にって言うけれど、自分が連れてきた生徒に落第されたら嫌だからでしょ。この課題の山見てよ。これ全部覚えないといけないのよ」
私が課題の山を見せて言った。私がそれを見て改めてうんざりした時だ。
「うーん、その課題って学園で出る範囲を逸脱しているように思うんだけど……」
何かヘレナが言ったけれど、私はよく聞いていなかった。
「えっ、何か言った?」
「ううん、なんでもない」
ヘレナが首を振った。
「それよりもヘレナ、覚えるの付き合ってよ」
「頑張って!」
ヘレナは手を振ってくれた。
「えっ、酷い!」
「この前付き合わされて悲惨な目に合ったんだから、今度は自分でやりなさいよ」
「鬼!」
抵抗したけれど、結局ヘレナに追い出されて、自分の部屋で半徹夜で覚えさせられたのだ。
翌日も皆で教室を移動しながら私はアデライド先生から渡された資料を必死に覚えていた。
「ちょっとそこのお嬢さん」
誰かが私達に声をかけてきた。
ちらっと見たら、服装からして教会関係者みたいだった。
学園にも教会があるんだろうか?
私は軽く流した。
「えっ、私ですか?」
ヘレナが聞いていた。
「いや、あなたではなくて、隣の銀髪の女に用があるのですが?」
銀髪と言われて私は改めて、その男をみた。
言葉の端々に尊大な態度の男に見えた。
私は少しムッとした。
「私ですか?」
「クラウディア・オイシュタットさんですよね」
司祭のロメウスと名乗った男が聞いてきた。
「そうですけれど」
私は司祭に用はないんだけど、何の用だろう。
「聖女様の件ですが」
尊大な態度でロメウスは言いだした。
「えっ、聖女って?」
「デジレのことよ」
横からヘレナが教えてくれた。
「そうそのデジレ様の件なのですが、少しご苦労しておられて、見かねた大司教様がお忙しい中お時間を取って頂いて、少し貴方とお話したいとおっしゃられているんですが」
それがどうしたと私は叫びたかった。忙しいのは私だ。
「すみません。わたし別にデジレさんのことでお話することはないと思うんですけど」
私は今は宿題で忙しいのだ。これ以上変なことに付き合わされる時間はない。そもそもデジレは反省するために課題が与えられたと聞いた。なんでなんの罪もない私に課題が与えられているんだろう?
これっておかしくない?
こんなやつに話すよりもルードに文句を言って少なくしてもらおう。
私が思った時だ。
「教会の大司教がクラウに何の用だ?」
コンスが私の前に出てくれた。
「私は今、その女と話をしているのであってお前と話をしているのではない」
慇懃無礼にロメウスはコンスに言ってくれた。
キンコンカンコーン
その時始業のベルがなった。
「すみません。時間がなくて」
私は駆け出した。
「ギャッ」
声がしたので後ろを振り返ると
「すまん。当たった」
コンスが絶対にわざとだ。ムカつくロメウスをコンスが弾き飛ばしたみたいだった。
「おい、待て!」
男は何かを叫んでいたが、私達は時間がなかった。
まあ、いい気味だ。
私は心のなかで笑ったのだ。
私はこのロメウスがあんなにもしつこい性格だとは思ってもいなかった。
ここまで読んで頂いて有難うございました
やっと教会の登場です。