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閑話 公爵令嬢視点 生まれて初めて負けてやる気になりました

私はコンスタンツェ、ピザン公爵家の長女だ。

我が家は帝国では武のピザンと呼ばれている、代々将軍や騎士団長を輩出する家柄だ。

普通は男の子がその後を継ぐのだが、我が家は長い間私しか生まれなかったので、私が嫡子として小さいときから訓練させられたのだ。


いや、そう言うと語弊がある。


我が家は父は子煩悩で、絶対に私に剣を持たすなとか訳のわからない命令を出していたらしい。

でも、我が家は武のピザン公爵家なのだ。家の至る所に鍛錬場があり、古くなって使えなくなった剣で花壇の柵を作る位なのだ。

武器などどこにでもあった。

私は5歳にして剣でチャンバラごっこをして遊んでいて、私の相手をしていた騎士を打ち負かしてしまったのだ。

普通そんなことはあり得ない。

まあ、騎士も手加減していたのだとは思うが、騎士の剣を弾き飛ばしたのは事実だ。

その騎士は唖然としていた。


それを聞いて両親は驚愕していた。

親馬鹿の父は私に剣を持たすなと言っていたことも忘れて、私を褒め称えて、早速いろいろと稽古をつけてくれたのだ。

私はよほど適性があったのだろう。剣の技術も魔術の技術も瞬く間に吸収して上達していったのだ。


10歳の時には同年代には敵なしで、ルードをボコボコにしていたのもこの頃だ。これ以降ルードは私を避けるようになったのだ。父などは皇子殿下の婚約者になれとか言ってきたが、既に手遅れだった。

もっとも、私も、私より弱い奴などこちらから願い下げだったが……



そんな時だ。私は騎士団の訓練に参加した。さすが帝国の騎士団だけあって、どの男も立派な体つきをしていた。私は強い男と戦えることにワクワクした。

私は体は騎士団の連中に比べればまだ小さかったが、天賦の才があるから負けるわけはないと思っていたのだ。

でも、そこで最初にランプレヒトという男と対戦して負けたのだ。それも完膚なきまでに、叩きのめされた。私では全く刃がたたなかった。


私は井の中の蛙だったと理解したのだ。どうしても領主の直系の娘ということで領内の騎士達は遠慮していたのだ。領主一族がしゃかりきになって育てている娘と対戦してまともに戦ってなどくれないのだ。絶対に手抜きされていたはずだ。

でも、ランプレヒトは全く手抜きをしてくれなかった。

いや、あれでも手抜きをしてくれていたのだと思う。

もし本気でやれば私は大けがをしていたはずだ。


「お嬢ちゃん、もう少し大きくなってからおいで」

ランプレヒトは親切心で言ってくれたのだろう。

でも、私はこの言葉に更に切れたのだ。


「くっそう!」

私はそれから歯を食いしばって必死に訓練をした。

毎日毎日素振りをした。

雨の日も風の日も……

剣を血豆が出来ても平然と振り続けたのだ。

そして、我が領地の騎士達と戦った。

こんなに一生懸命に訓練したのは生まれて初めてだった。


そして、一年後、私は再度戦ったのだ。

しかし、私が死にもの狂いで一年間訓練して挑んだランプレヒトは、更に強くなっていた。

私は全く刃が立たなかったのだ。

私は唖然とした。


「もう諦めるのか?」

しかし、私はランプレヒトにそう言われて更に闘志に火がついたのだ。

次の一年間は早朝1時間、プラス夜の1時間素振りの時間を増やした。


しかし、結果は更に1年後も同じだった。

私は本当に悔しかった。

でも、私は諦めずに翌年も黙々と続けたのだ。


そして、初めて打ち合ってから3年後、13になって少し大きくなった私は、ランプレヒトと少しだけ長い間戦えるようになっていた。

「少しは戦えるようになったな」

私はそのランプレヒトの言葉がとてもうれしかった。


14の時はそれがもう少し長くなって、15の時はほとんど互角に近い形までもっていけるようになったのだ。

たまに私はランプレヒトに一撃をいれらるようになった。

それはとてもうれしかった。

ランプレヒトはその時は騎士団長になっていた。

私は騎士団で普通にランプレヒトと訓練できるようになったのだ。

私は毎日ランプレヒトと訓練するために通い詰めた。


相変わらず、父は騎士団なんて通わずに、皇子と仲良くなれって言ってくれたけれど私には無理だ。

元々私に剣術を教えていたのはお父様だ。

いくら弟が出来たからって今更訓練止めるのも無理だ。

宝剣ミネルヴァもお祖父様から手に入れたし、私は帝国最強の騎士を目指すんだから。

そう言ったらお父様が切れだして

「今後、騎士団に出入りするのはまかりならん!」

と言い出したのだ。

「絶対に訓練に行くのをやめない」

私はそう言ったのに、

「はああああ! そこまで言うなら、家から出て行け」

「判ったわよ。出ていくわ。お父様の馬鹿!」

私はそう言ってお父様を張り倒すと着の身着のままで家出したのだ。


そのまま騎士団の詰め所まで駆け通したのだ。


なんか変な男達が途中で寄ってきたが、私はそんな奴は無視して走り続けたのだ。

何か2、3引っかけたような気がしたが、無視だ。

弾き飛ばしても窓ガラスが2、3割れた程度だろう。


「どうしたんだ?」

私が夜に騎士団の詰め所に飛び込んできて、まだ詰め所にいたランプレヒトは驚いて私に聞いてくれた。


「ランプレヒト!」

私はそのままランプレヒトの胸に飛び込んだのだ。

ランプレヒトは私を受け止めてくれた。

私はとてもうれしかった。


そこでお父様と喧嘩して飛び出してきたことを話したのだ。

「絶対に家には戻らない」

私が言い切ると

「いや、そうは言っても騎士団の詰め所で未成年の女が泊まるのは良くない」

ランプレヒトがそう、諭してくれたが、

「じゃあ、ランプレヒトの家に行く」

私は行ってしまったのだ。


「はっ? それはもっと良くないだろう。少なくとも成人するまではだめだ」

「じゃあ成人したら行っても良いの?」

私が思わず聞いてみた。

そして、自分で言った言葉に赤面したのだ。

何を言っているのよ! そんなのランプレヒトが認めるわけないわよ。

私の馬鹿!

私は言ったことをとても後悔したのだ。


「まあ、成人したらな」

まさか、ランプレヒトがそう言ってくれるとは思ってもいなかった。

「絶対約束だからね」

私は完全に言葉尻を捉えて確認していた。

「ああ、コンスが成人してそれでもいいというのならば良いぞ」

「ありがとう、ランプレヒト」

私は思いっきりランプレヒトに抱きついたのだ。

何かランプレヒトが赤くなっていた。

もうこうなったら押しの一手だ。


それから私は押しに押して、16の夏休みにはランプレヒトと婚約したのだった。



ここまで読んで頂いてありがとうございます。

コンスの恋物語でした


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是非ともお読み下さい。

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よろしくお願いします。


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しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


私の

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このお話の前の話

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