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似た者同士

前回の続きになります。楽しんでいただければ幸いです。そのために以下のことをご了承ください。


⚠️注意書き⚠️

・一部流血表現を含みます

・死についての話があります

・ヴァンパイアについて独自の設定があります



何となくあの夜からギスギスしてる気がする。当たり前か。私もあの男も結論を出せていないんだから。そもそも結論なんて出ないとさえ思える。


人間とヴァンパイア、決して交わる事のなかった二つの種族。常識も何もかもが違いすぎる。理解をしようとする方が無理なのかもしれない。



「どうかした?白月さん」


「あっいえ大丈夫です」



いけない今は仕事中だ。集中しないと。けれどその事が頭から離れることはなく、溜息が漏れた。


その日も恐らく我が家の如く居座っているであろうあの男の待つ家へ帰る。はぁ気が重い。



「ただいま」


「『おかえり』アカネ」


「おかえりー!」


「あんた誰!?」



いやいや何で一人増えてるんだ!?しかもこの銀髪男もしかしてヴァンパイアだな?



「もうここはヴァンパイア立ち入り禁止です。お帰りください。」


「待て俺は帰らずとも良いだろう。」


「いやなんで俺だけ帰る前提なんだよ!?」


「うるさいぞクロア。この女は俺の魂の伴侶だ。とっとと去れ。」


「はぁ。もういいや。事情聞かせて。」


「よし来た!」


「何で貴様が乗り気なんだ。」



ジーク曰く魂の伴侶が見つかったという話をしたら気になってきてしまったヴァンパイア仲間らしい。帰すのも面倒で二人で寛いでいたとか。うん全然納得いってないぞ。



「とりあえず帰って欲しい」


「嫌だー!!めっちゃ気になんじゃん!あのジークが選んだんだぜ?そりゃあ一目見たいじゃん?」


「初対面で馴れ馴れしいのは嫌です。あと名乗ってください。」


「俺?俺はクロア!えっと」


「白月暁音です。」


「おう!アカネよろしくな!」


「気安く名前で呼ぶなクロア」


「いいじゃねぇか!お前の魂の伴侶ってことは俺のダチってことだろ!」


「その謎理論を今すぐ捨てろ。」


「めちゃくちゃ仲良いですね。じゃあ一緒に帰ってもらって」


「なぜそうなる」


「めっちゃ帰らせたがるじゃん何したんだよジーク」



クロアという銀髪の男に琥珀色の目でじっと見られると居心地が悪そうにふいっと顔を背けた。やっぱ気にしてるのか。



「俺は…正論を言ったつもりだ。だが…」


「得心してない顔してるっての。このクロアさんに話してみなさいよいでででで!髪の毛引っ張んな!」


「ならそれは私から話します。」



兎にも角にも早く帰って欲しい一心で言ったのに何故か感激されたんだけど…解せない。


一連の出来事を銀髪男に伝えると真剣な面持ちできっぱり言い放った。



「俺はヴァンパイアだからお嬢ちゃんの言うことは何となくしかわかんねぇけど、2人が似た者同士なのは分かった。」


「「はぁ?」」


「ハハッ何ハモってんだよ!だってそうだろ?2人とも同族が死ぬのが嫌だから意見がぶつかった。そんなん似た者同士以外の何者でもねぇよ!」


「それは…」


「貴様にしてはまともな事を言うな。」


「失礼だな!一応同胞のことだって考えてるさ。うーん難しい問題だよな。けどこれだけは言える。そのシンニューシャインちゃんに手を出したのはジークじゃねぇ。こいつは元々偏食で味覚と嗅覚が美味そうって思った奴にしか手を出してない。だから他の奴らよりも食った人数は極端に少ない。まぁ食った事実に変わりはねぇって言われればそれまでだけどな。」


「そう…なんですか」


「随分と俺を信用しているみたいだな。」


「そりゃあお前死にかけてたからな。そん時はマジでヒヤッとしたぜ。」


「何それ初耳」



思わず前のめりになるとクロアさんも悪い顔でノリノリだ。



「もっと聞きたいか?俺ならたくさんジークの小っ恥ずかしいエピソード知ってるぞ!」


「めちゃくちゃ聞きたいです!」


「やめろクロアそれ以上話したら日光の前に貴様を突き出す。」


「待って!!!俺砂になっちゃう!!!」


「クロアさんって日光浴びちゃダメなんですか?」


「ジークお前伝えてねぇの?」


「通常のヴァンパイアに関しては何も」



信じられんという顔でジークを見るクロアさん。その反応が普通だし、ていうかヴァンパイアにも種類あるのか。



「あー俺みたいな普通のヴァンパイアは日光に当たると普通に砂になっちまう。それ以外は平気だぜ?」


「結局ヴァンパイア要素そこだけか!!!」


「何この子めちゃくちゃ面白いじゃん。貰っていいいでででで冗談だって!!!」


「次にそんなたらればを言ってみろ…貴様を砂にする。」


「うーわ目がガチ…すんませんでした…」


「分かればいい」



なんだろう今の会話だけで完全に二人の上下関係が分かってしまった。それが何とも面白くて笑わずにはいられなかった。



「二人とも本当仲良いですね〜」


「仲良くはない」


「ガーン俺仲良いと思ってたけど!?」


「擬音自分で言うんだ」


「そこは突っ込まないでくれ!とにかく上手くやれよ!ジーク!」


「言われずとも。さっさと帰れ。」


「いや私もう寝る支度したいし二人とも帰って欲しいんだけど。」



というわけで今日のところは解散となった。それにしても似た者同士か…言われてみればそうかもしれない。ただそれが分かったところできっとどちらも意見を曲げることはないだろう。それは自分の性格上よく知っている。


けれど、明日からは少しだけ優しく接する事ができるかもしれないと思った。




アカネと似た者同士か。考えた事もなかった。両親は父は寡黙で母はよく話す人だった。だから類似するところがあるという考えに至らなかった。


だがこれで納得した。俺は同胞を大事にしたいもの勿論だが、アカネのことも尊重したいのだ。


もう一度アカネと話し合おう。でなければ後悔する。それにもうそろそろ血も貰いたいしな。



翌日、全身黒尽くめでアカネの元を訪れた。日光に当たるのになぜ来た?と顔に書いてあって面白いな。



「今日は休みだろう?」


「そうだけど。何?どういう風の吹き回し?」


「人間についての勉強だ」


「はぁ?何言ってんのあんた。頭打った?」


「む。俺は至って正常だ。兎に角出かける準備をしろ」


「してください、ね?」


「シテクダサイ」


「はいはい。分かった。準備すればいいんでしょ。ちょっと待ってて。てかとりあえず中入って目立つから。」



中に入る許可を得たため堂々とソファに座って支度が終わるのを待つことにした。相変わらず物が少ないな。俺の私物でも置いてやるか?



「終わったよ」


「ふむ。普通だな。」


「出かけるのやめていい?」


「それはダメだ。行くぞ」


「ちょっと!勝手に話を進めないで!」



全くこの女は俺が折角日光の下を歩くというのに、白の長袖Tシャツに黒のカーディガン、ジーパンという何とも地味な格好で出てきた。そんなに嫌なのか。マンションを出て二人で並んで歩みを進める。本当に不味そうな獲物ばかりだな。都会の真ん中を闊歩しながらふと湧いた疑問をぶつけてみた。



「アカネ」


「何?」


「人間は何をして、何を糧に生きているんだ?」


「いきなり難しい質問。そりゃあ人によるけど私は仕事。今の仕事気に入ってるし。」


「趣味はないのか?」


「特には。てかどこに向かってるの?」


「…決めていない。」


「じゃあここまで当てもなく歩いてたってこと!?信じらんない!なら勉強も兼ねてカフェ入ろうよ。」


「分かった」



そうして俺はアカネのいうカフェとやらに向かうのだった。




朝突然現れたと思ったら、人間についての勉強とか言い始めた。本当訳が分からない男だな。


でも何となくだけど昨日のことが関係してるんだろうなってことは分かったから付き合うことにした。命令口調は直してもらったけど。



人一人分の距離を空けつつ、隣を歩いているといきなり難しい質問をされた。私は当たり障りのない解答しか持ち合わせてなかったから役に立ったかは知らない。



それから何となく隣を歩き続け、自分から言い始めたんだし目的地があるんだろうとたかを括っていたら、ないって堂々と宣言されて思わず心の中で蹴った。結局目的地は私が決めたのだった。



私のお気に入りのカフェに案内して向かい合わせで腰掛ける。メニューを見せると右も左も分からないといった様子で戸惑ってた。それもそうか。人間の食事なんて私が振る舞った肉じゃがくらいしか食べたことがないんだろう…恐らく。でもまぁとりあえず好みがあるかもしれないし希望を聞いておこう。


「ジーク、どれ飲む?それともなにか食べる?」


「…アカネと同じものにする」


「ならホットミルクティーにベーコンエッグサンドね。」



普段通りに注文を済ませ、料理が来るのを待っていると、不意にジークが口火を切った。



「アカネは何歳だ?」


「えっ26だけど」


「どんなものが好きだ?」


「好きなものって…仕事と一人の時間」


「ふっ相変わらず趣味はないんだな。」


「そっちこそどうせ趣味なんてないんでしょ。」


「いや?最近できた。」


「何?」


「アカネと話すこと」



なんでそんな大切そうに見つめてくるの。やっぱり女たらしなのは変わらないのね。



「あんたそうやって一体何人の女の子を落としてきたの?」


「具体的な数は分からんが、まぁざっと五百」


「ごめん聞かなかったことにする。」


「そうか。」



雑談をしているといつのまにか料理が運ばれてきた。ふふっ美味しそう。



「いただきます」


「イタダキマス」



ホットミルクティーで喉を潤した後ホットサンドを口に運ぶ。あーこれこれ。中に入ってるチーズもたまらないんだよねぇ。



「そんなに美味いのか?」


「うん。美味しいよ。食べてみれば?」


「む…よく分からない。」


「味覚は反応しないの?」


「あぁ」


「そうなんだ」



そういうものなのかと一人得心しているとジークが思い出したように呟いた。



「だが、アカネの作った肉じゃがのが美味かった。」


「なっそっそうですか!さっさと食べて出るよ!」


「何をそんなに急いでいるんだ?用事でもできたか?」


「あっあんたの服買わないと目立つと思ったからよ!」


「ん?買わずとも変えられるぞ?魔法で」


「何それ聞いてなっすっすみません」



つい大声を出してしまって周りの方々に謝った。ていうか魔法って、ますますヴァンパイアが分からなくなってきた。



「で、魔法って具体的にどんなのが使えるの?」


「簡単なものだと色変えや概念を塗り替える…まぁ砕けた言い方をすればこの服装も俺の思い通りに変えられるということだ。」


「じゃあその黒尽くめもあんたが魔法で創り出してるってこと?」


「そういうことだ」



じゃあもっとまともな服にしてよとは言わないでおいた。この場でそんな魔法使われたらどんな目に遭うか分からないし。


早めの昼食を食べ終わったところで、隣から流石に浴びすぎて貧血になりそうだと吐かれたので家路に着いた。


着いてそうそうジークはソファに横になって苦しそうに息をしている。本当に苦手なんだな。



「あんた大丈夫?」


「アカネの血さえ舐めれば回復する。」


「結局それなのね。はぁ…その前に一つ聞いていい?」


「なんだ?」


「どうして人間のことを知りたくなったの?」



ジークは表現を選びながら静かに言葉を紡いだ。



「以前、ヴァンパイアにとって人間の血不足は死活問題に発展すると言っただろう。…確かにそれは正論ではあるんだがどうも喉元に引っかかる何かがあった。その正体が分かったから知りたくなった」


「ふーんその正体って?」


「アカネだ。」


「私?」


「そうだ。アカネの意見も尊重したいと思った。だから人間について知れば何か自分の考えを変える糸口が見つかるかと思った。」


「それで?結果はどうだったの?」



ジークは自嘲するように口元に弧を描いた。



「答えは否だ。」


「…満たされないから?」


「それもあるが…俺が大事にしたいと思うのはアカネだけだ。」


「何…それ」


「言葉のままの意味だが?俺が意見を尊重したいと思ったのはアカネだからだ。他の連中のことなんぞどうだっていい。食われても何ら気にはせん。」


「それって今までと何も変わらないんじゃ」


「上手く伝えられないのがもどかしいな。要するに、貴様が食われるのは嫌だということだ。」


「はぁ?それのどこが尊重よこの自己中ヴァンパイア!」


「なっこれでもしっかり考えたんだぞ!」


「もういい私着替えてくる。」



話にならないと踵を返し風呂場に向かおうとしたら、手首を掴まれ引き止められてしまった。



「離して」


「嫌だ」


「だって結局あんたはヴァンパイアの味方で私は人の味方ってことに変わりないじゃない!」


「あぁ。だが、俺はいつだってアカネの味方でありたい。」


「でもなれてないじゃない!あんたの考えが変わんなきゃ意味がない!」


「そうだな」


「そうだなってなんてことないことみたいに言わないで!」



手を振り払い風呂場に逃げ込もうとしたら今度は腕に閉じ込められた。なっ何事!?



「ちょっと!離してよ!」


「俺は…女はただの獲物に過ぎないと思っていた。」


「いきなり何の話よ」


「そう急かすな。…正直俺以外の誰に食われようが構わなかった。偶々俺のお眼鏡にかなっただけだったからな。」


「はぁそれで?それが何だっていうの?」


「アカネは…誰にもあげたくない。」


「は?」


「だから言っているだろう。俺はアカネの味方でありたいと。他の人間なんて興味ない。アカネだけでいい。」


「なっ」


「これで意味が分かったか?」


「わっ分かったから離して!」


「あぁ。聞いてくれて感謝する。」



もうなんでそんな優しい笑みを浮かべるの!!!私は暫くの間ジークと目を合わせられなかった。この胸の高鳴りは気のせいだ。そうに決まってる。と自分を無理やり納得させた。

ご覧くださりありがとうございました!これからも頑張ります。

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