21,外。
結果的に、シアとセーラは、〈平地〉を平定したことになる。
前の領主を殺し、さらに『もう一つの支配勢力』だった混沌の主を殺したのだから。
さらに混沌の信徒たちも『共食い』のごとく全滅。
ただいま考えるに、これは混沌の主が生前に命令していたことだったのかもしれない。つまり混沌の主が死んだときは、互いに殺しあうようにという、いわば自壊システム。
これは何も信徒たちが暴走することを懸念した、などの人道的理由ではない。混沌の主は支配欲を満たすことを欲する性格だった。つまり自分が死んだあと、信徒たちが他の勢力の手駒にされるのが我慢ならなかったのだろう。
そして──
シアは、この第肆世界〈シス〉の世界地図と、シアたちのいるオル大陸の地図を眺めていた。世界地図のほうは空白も多い。
未踏の地。少なくとも、この地図が作成された時点では。
この第肆世界は、この四半世紀、滅びを歩んでいるそうだ。
気候変動は激しくなり、蟲や竜のような化け物が跋扈しだした。それまで存在していた国家は滅んでいき、都市同士の連絡もつかなくなった。
この〈平地〉も、外の世界からはかけ離れ、いま現在、どのような様子なのかもわからないという。とくに前領主は、稀にやってくる〈平地〉の外から来た旅人を刺客たちに狩らせていたようだ。
シアが聞き込んだところ、領主館の中に〈理の王〉のことを知っている者はいなかった。
ただ一人の例外が、レナ。
「死んだ父が、私が幼いときに話してくれました。空の果てから、〈理の王〉はやってきた。解放者として。女神の支配を終わらせるために。しかしその戦いの末、この世界の秩序は乱れ、正常さを失ったと聞きます」
シアの仮復活の期間は、42日間。このあいだに妹を殺さなければならない、と女神ラーズはいらぬプレッシャーをかけていた。
ただシアは、この期間が過ぎたからといって、仮復活が強制停止するとは思っていない。
──少なくとも妹を殺せるのは、兄である自分だけだ。
女神ラーズが、どうしても〈理の王〉を仕留めたいのならば、シアを頼り続けるしかない。
「〈平地〉の外に出るルートは、これか」
シアは、オル大陸の地図の一点を指さした。
これ以上、〈平地〉内に留まっていても、〈理の王〉、つまり妹の情報は得られそうにない。
「明日には出発する。セーラ、お前はどうする?」
「わたしも同行しますよ」
と、セーラは迷うことなく答える。それからシアの耳元で、奇妙に熱っぽい声で言う。
「敵を殺すのが、少し楽しくなってきたところです。わたしの曲剣さばきも、さまになってきましたよ」
そういえば、とシアは思った。
セーラが誰かに似ているとずっと思っていたが、間違いない。容姿と、表面的な性格は違うが、本質的な部分では、妹によく似ている。
「まぁ、なんだっていいが」
近くで話を聞いていたレナが、セーラの前に進み出る。
「セーラ様。〈平地〉の外に向かうのでしたら、是非とも私もお連れください。きっと役に立ってみせます。父の話していた〈平地〉の外を、この目で見てみたく思います」
「いいですよ、レナ。大歓迎です。わたしの私設部隊の現場指揮を任せましょう。シア様、問題ありませんよね?」
「ああ。私設部隊を含めて、6人パーティになるわけか。大所帯だな」
これが何人生き残るのだろうな、とシアは率直な疑問形で思った。




