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20,領主評価。

 


 セーラは、私設部隊の三体に名前をつけた。


「〈槍脚〉族のヤリさん、〈蝙蝠〉族のコウさん、〈蟷螂〉族のキリさん。どうですかシア様、わたしの名付け親センスは?」


「知らん──ひとつ思い出したが、おまえの家族は〈槍脚〉族に殺されていたな。その件について、何か問題はないか?」


「すべては混沌の主が原因だったのですから、わたしはもうヤリさんに思うところはありません。それに、数多くの〈槍脚〉を殺したので、わたしの復讐心は満たされ、大いなる家路につきましたよ」


「ならいいが」


 私設部隊のうち、人間の言葉で会話できるのは、〈槍脚〉族のヤリだけだった。

 ただヤリを通して、ほかの二体にも細かい指示を伝えられる。大まかな命令ならば、セーラの手振りなどでも、伝えられるようだ。


 さっそく私設部隊には、宝物庫の金銀財宝を、シアが見つけた隠し場所に移動させた。一時的な保管場所であり、そもそも必要がないかもしれない。

 ただ盗賊団のような者たちは、鼻が利く。この城塞都市アークが混沌の信徒から解放されたと知り、早々に乗り込んでくるかもしれない。


 仕事を終えたところで、シア、セーラ、私設部隊の三体は、城塞都市アークを後にした。


 かくして領主館に帰還する。

 セーラは、今や自身が『領主』になっていることを忘れていたが、レナを筆頭に、セーラの帰りを出迎えた配下たちは忘れていなかった。


 領主館の者たち──総勢52名。

 そのうち17名が刺客であり、前領主からセーラが『受け継いだ』者たち。これら刺客隊を束ねるのがレナ。


 ただレナには領主館という拠点を中心に暗躍してもらうため、セーラには、別に混沌の信徒という私設部隊も用意した。

 シアはそこまで考えながら、自分はセーラを『育成』しているようだな、と苦笑する。


「セーラ。領主館の者たちに命じて、城塞都市アークに行かせ、隠してきた金銀財宝をこっちに運ばせるんだ。力仕事なので、男を十人前後。盗賊などと鉢合わせするかもしれないから、刺客を何人か入れておけ」


「えーーーと」


 セーラが戸惑っていると、レナが疲れた様子で言った。ところでレナの目のしたのくまは消えていない。


「セーラ様。それでしたら、私のほうで手配しておきます。それとセーラ様がお連れになった信徒たちですが──領主館の者には、混沌の信徒を憎んでいる者も少なからずいます。ですので、あまり人目につかないようにしたほうがよろしいでしょう」


「……そうですね。では、レナのいいようにしてください。お任せです」


 レナは頷き、さっそく様々な手配をするため歩き去った。その後ろ姿を見届けてから、セーラが重たい溜息をつく。


「シア様。わたし、領主として失格なのでは? レナに任せっぱなしですよ?」


「いや、悪くはない。有能な部下を持つことは、お前自身が有能であるより、ある種の価値がある」


「うーん。ですが、レナは別に、わたしに忠誠心を持っているわけではないですよね」


「忠誠心は、そのうち育まれるだろう。ただレナは、前領主の評価が低い刺客だった。これは前領主のもとでは、レナが手を抜いていたことを意味する。とすると、いま良い仕事をしているのは、レナはお前のことを気に入っている、少なくとも嫌ってはないからだろう」


「わたしの優しさが、評価されたのですかね?」


 シアは、人間とは自分のことは分からないものだな、と思った。

 セーラの肩を叩き、去りぎわに言った。


「評価されたのは、お前の奥深いところにある、冷酷無比さだろうな」


 一人残ったセーラは納得のいかない様子で呟く。


「わたしのどこが冷酷だというのですか??」

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