18,取捨選択。
首なしの混沌の主の死体を裂いて、心臓を取り出す。喰らう。
シアは自身の【恩恵】の《奪う》を発動。
これで混沌の主の【恩恵】が明らかになる。
【恩恵】──魔術《改造》。
能力内容は──
生命体を改造可能。
ただし事前に『設計図』を作成する必要がある。『設計図』は『保管庫』に保管可能。改造レベルが低いものは自動で量産が可能。
改造レベルが一定を超えると、自ら『改造室』で改造手術を施さねばならない。
どうやら〈槍脚〉兵などは量産型。一方、〈人馬〉のような幹部格は、自ら改造したようだ。
一見すると悪くはない能力。ある致命的な欠陥がなければ、シアの基準でAランクもいけた。
その致命的欠陥とは、自我損失。
『改造を施された者は、その改造の大小にかかわらず、99パーセントの確率で自我を失う』
自我を失った改造体は、改造を施した者に絶対服従。どのような命令にも従う。
人によっては、これを含めてSランク能力かもしれない。
だが他者の支配に興味がないシアからすると、やはり致命的。
ここで選択の時。
シアの《奪う》で他者から奪った【恩恵】は、一度に三つまで所持可能。
現在シアが所持しているのは、
魔術《追尾》、聖技《弓射》、信祷《鎧》。
そして新たな【恩恵】を所持する場合、どれかひとつに上書きをせねばならない。
ちなみに、いま《改造》は所持しているわけではなく、『所持可能の段階』。
それの能力などは分かるが、使用はできない。
使用したかったら、すでに所持済みの三つのどれかひとつに上書きせねばならない。
または《改造》を所持せずに、『捨てる』か。
いったん『上書き』または『捨てる』を選んだ【恩恵】は、完全に失われる。二度と取得はできない。
だから先々のことも踏まえて、慎重に判断せねばならない。
といっても、《奪う》で『所持可能の段階』にしてから、300秒以内に決めなければならないが。その間に決めないと、自動で『捨てる』が選択されるわけだ。
シアは一考した。
《追尾》と《弓射》の相性は抜群なので、当分、どちらも外せない。逆に片方を『捨てる』と、もう一方の価値も格段に下がる。
相対的にいって、いま手持ちで最弱は《鎧》か。
とはいえ、先ほども《鎧》のおかげで、九死に一生を得ている。正直、『防御系』または『回復系』の【恩恵】は、最低でも一つは所持しておきたい。
たとえ使い勝手が悪くとも。
もっと強力な『防御系』または『回復系』の【恩恵】に巡り合うまでは、やはり《鎧》は外せない。
そこでシアは、《改造》を『捨てる』ことを選択した。
自我を失うマイナス要素がなければ、《追尾》に上書きしても良かったが……
《奪う》の選択を終えて視線を上げると、セーラが歩いてきたところだった。
「〈槍脚〉兵たちが、突然、攻撃をやめました。あぁ、なるほど──混沌の主が死んだことで、コントロールが解かれたのですね」
「ああ。そうだな」
「……シア様。なぜ、驚いた顔で、わたしを見ているのです??」
「よく生きていたなと思ってな。とっくに〈槍脚〉たちに殺されたあとかと」
「……シア様らしいですね」




