12,適応。
シアとセーラは、城塞都市アーク内を移動。
おそらく〈主〉がいるのは、都市中央にある城だろう。
注意しながら進むも、この都市内への侵入は想定されていなかったのか、いまのところ混沌の信徒を見かけない。
「シア様。〈主〉がいるのが城というのは、推測に過ぎませんよね? 先ほどの芋虫のかたを殺す前に、尋ねればよかったのでは?」
「しつこいようだが、混沌の信徒たちは、〈主〉に逆らえない。あの男も、〈主〉の不利になることは発言できなかったはずだ」
とはいえダメ元で試してみても良かったことは、認めざるをえない。
シアは渋々ながら言った。
「そうだな。おれは少しばかり、簡単に殺しすぎる癖がある」
しばらくしてから、セーラが熟慮の末といった様子で言う。
「ですが長生きするためには、その癖、治さないほうがいいですよ。ですが、わたしにだけは、その癖を発動しないでください。お願いしますよ」
「善処する」
やがて広場につながるところに出た。この広場は、都市がまともだったころは、人々が集まる場所だったのだろう。
さらにいえば公開処刑が行われる場所でもあったらしく、いまも処刑台の名残がある。市民にとって、公開処刑は最大のイベントだったはず。場所取りをして、昼ごはんを用意し、家族で向かう。
上方で物音がし、シアは反射的にブロードソードを斬り上げる。だが手ごたえはなく、建物の屋根伝いに移動した影が、広場中央、処刑台の上に着地する。
ケンタウロス然とした混沌の信徒だった。馬の下半身に、人間の上半身。ただし頭部はない──それで問題なく生きているようだ。
さらに巨大な弓を装備していた。矢は見当たらないが。
「……シア様。あいつ、これまで遭遇してきた混沌の信徒とは、様子が違いますね」
「幹部とでもいったところだろうな。面倒くさいのに見つかったか」
「どうしますか、シア様?」
シアはセーラを見返す。いまだ〈奪う〉で得た【恩恵】は頼りない。生前持っていた【恩恵】に比べると、戦闘力は微々たるものだ。
だが、それでも戦っていかねばならないのならば、さらなる戦力の幅で対処するしかない。
「セーラ。〈追尾〉魔術には、『通常、生命体を浮遊させることはできない』という縛りがある。だから敵を矢のようにして、遠くに飛ばしたりはできない。だが、『許可』があれば、他人ならば浮遊させることができる」
「……何をおっしゃりたいのか」
「あいにく、自分自身を浮遊させることはできない。だがお前ならば、許可してくれれば、〈追尾〉で飛ばすことができる。さて、許可を聞こうか」
「拒否権がないのですね? わたしにどうしろと言うのですか?」
「敵を仕留めろ」
まずシアが進み出る。ブロードソードを構えたまま、前進。処刑台上の〈人馬〉族が、大弓に矢をつがえる。
この矢はエネルギー粒子でできており、これが〈人馬〉族の【恩恵】なのかもしれない。とにかくエネルギー矢ならば、『弾切れ』になることはないだろう。
シアは、自身と〈人馬〉族の距離から、エネルギー矢の着弾時間を計算。
回避できると踏んで、さらに進む。放たれたエネルギー矢は、想定より少し速く、危ういところで貫かれるところだった。
とにかく紙一重で回避すると、背後の家屋にエネルギー矢が命中。とたん砲弾が命中したかのような破壊が起きる。
「矢の威力ではないな」
このとき──〈人馬〉族の背後へと『飛ばした』セーラを、致命の一撃を与えるため急降下させた。
シア自身は囮となり、セーラが仕留める計画。
だがセーラの曲剣の一撃は、とっさに〈人馬〉族が跳躍したことによって、躱されてしまう。
「シア様、すみません、外しました!」
「まぁ、そう簡単にはいかないだろうな」




