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10,悪知恵。

 

 曲剣はセーラに装備させた。


 剣術なんて習ったことがないですよ、とはじめセーラは拒絶したが。

 最後には納得し、腰に下げた。


 シアが思うに、セーラはなんだかんだで、曲剣を使いこなしそうな気がする。


 続いて槍脚の死体から『光る石』を取った。これで真っ暗な洞窟内を移動できる。ただ致命的なデメリットとして、ほかにも洞窟内に潜んでいる敵がいた場合、格好の標的になる、ということだが。


「慎重にいってもいいが、古井戸側にも回り込まれ挟撃されるのだけは避けたい。準備を整えたら、駆け抜けるか。セーラ、離れるなよ」


 準備1。

 奪った【恩恵】スロットの二つ目。信祷〈鎧〉の発動のため、祈りを唱える。100秒の祈りで、33秒の不可視の鎧を装着。


 準備2。

 四体の〈槍脚〉族の死体から、すべての槍脚を切断し回収。魔術〈追尾〉を発動し、計八本の槍脚を浮遊させ、自身とセーラのまわりに展開。敵が現れたら自動発射するように設定する。


「行くぞ」


 祈りが終わったので、全身鎧を纏って走り出す。洞窟は一本道で、ひたすら真っすぐに進んでいた。しばらくして、天井から巨大な蝙蝠(こうもり)が飛んでくる。いやこれは、蝙蝠型の人間だ。混沌の信徒の一族のひとつらしい。


 展開していた槍脚のうち二本が自動で発射され、〈蝙蝠〉を貫き、天井に串刺しにする。だがまだ息はあるようだ。シアは速度は緩めず、軽く跳んでブロードソードを突き上げ、〈蝙蝠〉の首を刎ねておく。


 しかし〈蝙蝠〉族は一体ではなく、そこから先、次々と現れる。

 どうやら、この洞窟内は〈蝙蝠〉族の縄張りのようだ。入口付近にいた〈槍脚〉族は、例外だったらしい。


 洞窟の天井も高くなり、飛行能力を持つ〈蝙蝠〉族たちの波状攻撃は、なかなか厄介だった。

 槍脚はあっという間にすべて発射され、それでも足りない。


〈蝙蝠〉族たちはダガーを装備し、何度も急降下してきては斬りつけてくる。シアは回避はせず、すべての攻撃を〈鎧〉で受け止める。そのかわりに攻撃に専念し、次々と〈蝙蝠〉族を斬り殺していった。


 やがて洞窟の先に梯子が見えてくる。城塞都市アーク内に通じているのだろう。ただし、梯子を上がった先がどうなっているかは分からないが。


「ど、どうします、シア様? 梯子をのぼっている間は、無防備になりますが?」


「そうだな。蝙蝠たちを片付けてからにするか」


 槍脚という『弾』は全て発射してしまったが──そのかわりになる『弾』は、大量に落ちている。

 先ほどから斬り落としていった〈蝙蝠〉族の死体たちが。


 それらの死体を〈追尾〉で飛ばし、まだ生きている〈蝙蝠〉族たちのほうへ飛ばす。ただし、あえてフラフラと飛ばす。

 まるで、『斬られたがまだ息はあって、必死に仲間のもとに飛んで逃げよう』としているように。


 騙された〈蝙蝠〉族たちはシアたちへの攻撃の手も緩め、()()()()()()()たちを歓迎する。そうして油断した瞬間に、死体たちを加速させ、砲弾のようにして〈蝙蝠〉族たちへぶち当てていく。


「落ちてきたところを仕留めろ」


「は、はい!」


 不意に仲間──死体だが──に高速でぶつけられた〈蝙蝠〉族たちが、次々と落下してくる。

 落ちたところを、シアはブロードソードで仕留めていく。

 ちらっと横目で見ると、セーラも必死に曲剣を振り回して、殺していっていた。


 ふと、いまにも殺そうとしている〈蝙蝠〉族の一体と、シアは目があう。

 その一体は、意外なことに人間の言葉を話せた。


「我らの、仲間の死体を利用するとは、人間のすることでは、ない」


「いや、人間の『悪知恵』だろうな」


 首を刎ねて殺す。


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