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第二話 それぞれの進路

「圭佑!内定おめでとう!!」


7月上旬の夜8時過ぎ。

城西拓翼大学駅伝部の寮にて。


蓮太と修太の部屋では、

同期五人が集まり、

圭佑の内定祝いが行われていた。


今日は門限なし!


明日の練習も休み!


就寝時間自由!


しかも、監督とコーチから

普段は禁止されている

アルコールの差し入れ!

(当然ながらタバコは禁止。)


全員がこんな幸せが

ずっと続けばいいと思った。


「いや、ほんとすげーよ!圭佑!

あのセイント・アーマー社から

内定なんて!!」



『セイント・アーマー社』


新進気鋭の

総合スポーツ用品メーカー。

シェアは大きくないが

品質を重視した商品開発力は

大手のアディックス社や

フロント・ナインズ社にも

一目置かれている。


また、城西拓翼大学駅伝部の

スポンサーでもあり、

蒼太たちのユニフォームや

シューズも提供している。



「いやいや。たまたまだよ。」

圭佑が照れながら応える。


「俺は大学で競技引退だけど、

涼介と蒼太は実業団だろ?

その方がずっとスゴイよ!」


酒に酔った

涼介と蒼太がドヤ顔をする。


「「せやろ!だはははは」」


それにしても、

この二人は酒に弱い上に

その乱れっぷりが酷い。


割り箸を転がしては

意味不明なことを言って

笑い転げている。


「うるせーな!お前ら!

今日の主役は圭佑だろうが!

それから!俺らの部屋で

もう吐くんじゃねーぞ!」


双子の蓮太と修太が

釘を刺すがこうなったら

もはや何を言っても無意味!


「はあー。

酒癖さえ悪くなければ

頼もしい仲間なんだけどな。」


蓮太と修太は

ため息が止まらない。


最初とは、うって変わって

(こんなに鬱陶しい日なんて

さっさと終わってしまえ。)

と思っていた。


「ところで、蓮太と修太は、

卒業したら何になるん?」


圭佑がその場の空気を

変えようと

レンとシュウに質問をする。


こうゆう時は、

自分自身の話をさせる方が

効果的だからだ。


すると、蓮太と修太は

互いに一度、目を合わせてから

話を始めた。


「うん。実は俺たち…。

実業団に行くことも考えたけど。

大学で競技を引退して、

従兄弟の店でバーテンダーの

修行をしようと思ってるんだ。」


「それで、いつか二人で

一等地に箱根ランナーや

駅伝ファンが集える

オシャレな店を出すんだ。」


蓮太と修太から

初めてこの話を聞き、

圭佑はびっくりして

最初は声も出なかった。


沈黙が続く中、


まるでシャチホコのように

足が上がったまま爆睡中の

涼介と蒼太のイビキだけが

部屋に響いている。


しばらくして、


「それ…めっちゃすげーじゃん!

レンとシュウなら絶対成功するよ!」


周りから否定されるのでは、

と思っていたのだろう、

蓮太と修太は心なしか

ホッとした顔をしていた。


「それじゃあ、

三人でもっかい乾杯しよっか。

蒼太たちは寝てるし…。」


圭佑が缶ビールを開ける。


「「ああ。」」


双子らしく、

蓮太と修太が同時に応えた。


「それじゃあ。」「乾杯!」


「店ができたら、客第1号は、

圭佑で決まりだからな?」


蓮太がビールを飲み干しながら

圭佑の肩をたたく。


「蒼太と涼介はいいのかよ?」


圭佑が二人の方に向かって

指をさす。


「まあ、あそこの

しゃちほこコンビには

いっそのこと、

炭酸水でいいんじゃね?」


修太の冗談がツボにハマり、

三人は腹を抱えて笑っていた。


そして、その頃…。


監督室では、

宗像(二年・選手兼コーチ)が

神妙な顔をして、櫛部川監督と

濱上コーチの下を訪れていた…。

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