第七十三話 最高の世代(復路・最後の箱根駅伝編 最終話)
「この度は…。」
定型的な挨拶と
来場者へのお礼を
一通り言うと、
蒼太は自分の想いを
語り始めた。
「先ほど、
キャプテンの石川が
言った通り、
今回の敗因は、
四年生の不甲斐なさと
言われてもしょうがない、
自分もそう思っています。
特に、自分が
最後の5メートルで…
もうひと伸び…
していれば…
もっと涼介と圭佑を
楽に走らせてやれたと
思いますし…
また、
いい結果で
終われたはずだと
思っております。
ただ、その中で、
往路の後輩たちは、
相手が強くても
諦めることなく、
粘り強く走り抜きました。
その頑張りが、
復路のメンバーに
やる気と情熱を与え、
一時、総合7位まで
押し上げることが
できたんだと思います。
そして、アンカーが…
圭佑でなければ、
圭佑という存在が
いなければ、
僕たちはここまで
順位を上げるどころか、
シード権争いに
絡むことすら、
不可能でした。
僭越ではありますが、
そんな不可能を
可能にしてくれた
後輩たち!
同期の仲間!
特に!アンカーの
荻久保圭佑のことを
僕は…
生涯誇りに思います!」
蒼太と涼介の報告で、
会場は大きな拍手に
包まれた。
「顔を上げろよ圭佑。」
「みんな、お前を称えに
きてくれてるんだぞ。」
レンとシュウが
声をかける。
圭佑が顔を上げると、
会場の観客からの
「圭佑コール」が
鳴り響いていた。
第七十三話 最高の世代
しばらくして
圭佑コールが止むと、
最後の報告として、
マイクが蒼太から
櫛部川監督に渡る。
「今回のオーダーを
決めたのは
監督である私であり、
この結果の全責任は
私にあります。
それでも、
選手やコーチ陣は
最後の最後まで…
懸命に勝利を信じて
ここまで務め上げて
参りました。
1人の指導者として、
メンバーには、
そのことを
誇りに思って欲しいと
願っております。
ただ…、
この4年間…、
駅伝シーズンでは、
繰り上げスタートも
経験しました。
二度の途中棄権や
不幸な事故がありました。
そんなことから、
今の四年生は、
いつしか…
「不幸の世代」、
「悲劇の世代」と
呼ばれるように
なりました。
しかしながら、
彼らはどんな困難、
苦難に対しても、
前向きに力強く、
それを
言い訳にすることなく、
たゆまぬ努力を
続けてまいりました。
そのことは…
この会場にいらっしゃる
皆さんにだけでも
知っていただきたい。
ジョーダイの
指導者になった
8年間の中で、
今年の四年生は、
誰が何と言おうとも、
『最高の世代』で
ありました!』
その言葉を聞いた瞬間、
来場者たちの
大きな拍手が再び
大手町に鳴り響く。
そして、
それと同時に、
5人の四年生全員が
その場で倒れ込むように
泣き崩れていた。




