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第七十二話 四年の矜持(復路・最後の箱根駅伝編20)

「圭佑は大丈夫なのか?」


「圭佑はどこ?大丈夫?」


それぞれ8区と9区を

走り終えた蒼太と涼介が

サポートカーから降りてくる。


8区、9区のランナーは

走り終えて

すぐにサポートカーに

乗ったとしても、

時間と距離の関係で、

10区のランナーの

ゴールに間に

合わないのだが、


車の中に搭載されている

テレビでレースの

進行を確認しているので、


圭佑の頑張りも

チームの結果も

すでに理解していた。


「蒼太、涼介…。

本当にごめん。」


レースが終わっても

タスキを外すことなく

泣いてばかりいる

圭佑を見て、

2人にも大粒の涙が

溢れだす。


「何言ってんだよ。

お前が頑張ってくれたから

ここまでこれたんじゃないか!」


「ああ。そうだ。

圭佑は絶対に悪くないよ。」


そう言いながら、

圭佑の肩を

片手で優しく叩いては、


もう片方の手で

自分の顔を何度も拭った。


「さあ、これから

報告会にいくぞ。」


濱上コーチも

堪えきれないほどの

涙を流しながら、

メンバー全員に声をかけた。



第七十二話 四年の矜持



衝撃的な幕切れを迎えた

シード権争いを演じた

ということもあり、


ゴール地点近くに

設けられた城西拓翼大学の

報告会場には、


昨年シード権を獲得した時の

倍以上の観客とマスコミで

溢れかえっていた。


さすがに、この人数では、

交通整理などに支障がでる

という判断で、


選手の挨拶は、

キャプテンの涼介と

副キャプテンの蒼太のみが

行うことになった。


しかし、


メンバー全員が

壇上に上がり、

司会をつとめる梓が

マイクを涼介に

渡そうとした時、


おもむろに、

圭佑がマイクを取り、

前に出て挨拶を始めた。


「この度は、

二日間に渡り、

沢山のご声援をいただき

ありがとうございました。


四年の意地を見せようと、

目標の7位に入ろうと、

全力で走りましたが…


…。


届きませんでした。


また、

シードを獲ることもできず、

悔しい結果になったのも、


全てアンカーを務めた

自分の責任だと

思っています。


本当に、本当に


申し訳ありませんでした。」


精神的にもすでに

いっぱいいっぱいだった。


圭佑の全身がが震えだし、

今にも号泣しそうになる。


(これ以上は限界だ!)


そう感じとった

レンとシュウが、

圭佑のジャンパーについた

フードを被せて、

後ろに連れて行った。


そして、

下を向いて

泣き始めた圭佑の

背中を摩りながら、

「大丈夫、大丈夫。」

と言って励まし続ける。


観客たちも何も言えず、

ただただ拍手の音だけが

響きわたっていた。


拍手が終わると、次に

涼介がマイクを受け取る。


そして、ゆっくりと

言葉を選びながら、

丁寧な口調で話し始めた。


「この度は…

多くのご声援をいただき…

ありがとうございました。


キャプテンの

石川涼介です。


今回の負けは…


四年生の

不甲斐なさだと

言われれば、


全くその通りだと

思っております。


ただ、

強いていうならば、


エースである自分が

体調を崩してしまい、

往路を走ることが

できなくなったことが

全ての原因です。


そのせいで、

往路メンバーや

アンカーの圭佑に

多くの負担をかけて

しまいました。


批判は、

キャプテンである

僕が全て

引き受けます。


だから、

他のメンバー、


特に、

往路を頑張ってくれた

後輩たちや、

アンカーの圭佑のことは、

絶対に責めないで

やってください。」


そう言うと、

涼介は深々と頭を下げ、

蒼太にマイクを渡す。


圭佑の想いや

キャプテンの言葉に、

誰もが四年生の矜持を

感じずにはいられなかった。

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