第六十九話 監督のお礼エール!(復路・最後の箱根駅伝編17)
「いい走りをしているぞ、
圭佑!」
櫛部川監督の第一声は、
誰しもがまったくもって
意外だと思えるものだった。
「4年間の頑張りが
全身に溢れているじゃないか!
断言する!
今のお前ほど、
この箱根路を沸かせられる
ランナーはそういない!
俺は…、
俺たちはみんな知っているぞ!
お前がどんな苦難にも
決して負けなかったことを!
圭佑の明るさと優しさが、
何度もメンバーを救ったことを!
そんな奴が
記録や記憶以上に、
皆んなの心に残る走りが
できるんだ!
さあ、
今年の箱根駅伝は、
荻久保圭佑の檜舞台!
そして
この箱根路は、
お前の栄光路だぞ!
何があっても、
俺はお前の味方だ!
最後にッ!
遠く沖縄から、
ジョーダイに来てくれて
本当にッ、ありがとう!!
大手町でみんなが
待ってるぞ!!」
櫛部川の
ありったけの想いを
込めたお礼エールが
圭佑の魂を震えさせた!
ドクン!!
心臓が大きく鼓動する!
その瞬間、
驚くことに、
あの激痛が嘘のように
消え去っていた。
第六十九話 監督のお礼エール!
(そうだ!
みんながまってるんだ!)
ここで、圭佑は
人生で今までにないほどの
強い覚悟を決める!
再び、加速して
前方の7位グループの
4人の前に出た!
(な…!?
何なんだ!?)
(さっき、完全に
ちぎれたはずなのに!?)
(やはり、
ジョーダイは侮れん!!
これが、
絶望から何度でも
這い上がってきたチームの
底力なのか!?)
(俺たちは…、
もしかしたら、
バケモノ級の
とんでもない奴を
相手にしているのか?
いや、
それは考えすぎだ!
たが、
うまく言えんが、
ジョーダイは、
どのチームにもない、
駅伝をする上で
大切な何かを持っている!)
どのチームも、
圭佑のこの復活劇に
戦慄を覚えていた。
一方、
青葉大の監督車では…。
「よーしッ!
きたきたきたー!
一気にいけーッ!」
助手席で大声をあげながら
ガッツポーズをする
原口監督がいた。
「監督…。敵チームですよ。」
後部座席のコーチに
諭されると、
誤魔化すように
咳を一度した後、
一言「すまん…。」と答え、
静かに腕を組み直す。
(どうやら、
私もまだまだ監督に
なりきれていないみたいだな。
だが、たとえ敵でも、
人の心を打つような
いい走りをすれば、
堂々と讃えることができる、
箱根駅伝の未来は
そうあるべきなのかも
しれないな。)
箱根駅伝のゴール地点まで
残り800メートル。
「この5チームの全てに
シード権を与えたい。」
皆がそう願うほど
アツいレースが展開され、
どのチームにも
分け隔てなく声援が
送られている。
冬場とは思えないほど
燦々(さんさん)と照りつける
太陽の光が、
箱根路を走る選手の
汗に反射して、
誰もが輝きを
放っているように見えていた。




