第六十七話 法正大学の箱根駅伝!(復路・最後の箱根駅伝編15)
鳴山監督、そして
チームメンバーに
背を向き、
法正大のエース
徳丸桂馬はその場を
立ち去ろうとする。
(今まで散々迷惑かけて
ずっと世話になった
鳴山監督に
顔向けできねぇよ…。)
しかし、鳴山は、
ずっと目をかけていた
徳丸の気持ちを
十分すぎるほど
察していた。
第六十七話 法正大学の箱根駅伝!
有言実行、
結果を出して
あたりまえ…、
徳丸桂馬は、
そんなプレッシャーを
自身に懸けることで
自分を、そして周りを
鼓舞し続けていた。
それゆえに、
鳴山にとって
最後のレースを飾ることが
できなかったことに
悔しさが溢れ出す。
自分自身が許せなかった。
「おい!どこいくんだ?
徳丸…。
これから往路優勝、
そして総合3位の
報告会に行くぞ!
主役のお前がいなくちゃ
話にならないじゃないか。」
徳丸が立ち止まり、
拳を握りしめ下を向く。
サングラス越しからでも
その表情からは
悔しさが感じられていた。
鳴山が近づくが、
徳丸は背を向けたままだ。
「世界中のどこの誰が、
お前をなんと言おうと
いつまでも
わしはお前の味方じゃ…。」
この言葉で、
徳丸の感情が
大粒の涙となり、
一気に流れ出した。
「すみません…。
俺は…俺は…。」
鳴山が
その先の言葉を遮り、
徳丸の肩に両手をかける。
「今日はもう、
突っ張らんでええんじゃ。
笑いたい時は笑えばいい、
悔しい時は泣いたらいい。
泣くことは、
何も恥ずかしいことじゃない。
人生をかけて勝負したから
初めて人間は泣けるんじゃ。
この悔しさは、
きっとこの先、
お前らの人生の
糧になるはずじゃ。
そして!
この2日間、
お前らは本気で生きた!
そう、誰よりもだ!
だからこそ…
『法正大学の箱根駅伝』は
今日、ここ大手町で、
こんなにアツい想いを携えて
完結を迎えたんじゃ。」
徳丸がサングラスを取り、
鳴山の方に、
ゆっくりと振り向く。
「なるさん…、
いえ、鳴山監督。
ずっと…
どこにも行き場の無かった俺を
見捨てずにいてくださり、
本当に…
ありがとうございました!」
膝から崩れ落ち、
両手をついて
徳丸桂馬は、
子供のように泣きじゃくった。
そして、
鳴山も膝をつき、
徳丸の背中を摩る。
「ええんじゃ。
それでええんじゃ…。
ようここまで
頑張ってきたな。
それでこそ徳丸桂馬じゃ。
いつか世界に挑戦して
金メダルを勝ち獲ってこい…。
わしは、
それを信じて
待っとるからな。」
その光景に、
師弟の絆に、
アンチファンも含め、
その場にいる誰もが
心を打たれずには
いられない。
心のこもった
暖かな拍手が
徳丸桂馬を包み込んでいた。




