第六十一話 まさかの誤解!(復路・最後の箱根駅伝編⑨)
「よーしッ!
繋がったーッ!!」
箱根駅伝復路・9区、
中間地点にて。
蒼太と涼介の
タスキリレーをした瞬間を
携帯テレビで視聴する
城西拓翼大学の関係者らが
大声を上げて盛り上がる。
「まったく、蒼太のヤロー、
いつもヒヤヒヤさせやがって!」
その輪の中で、
城西拓翼大学駅伝部の
ジャンパーを着た
OBと思われる男たちが
半泣きになりながらも
食い入るように中継画面を
見つめている。
「でもいいじゃないか。
郡司!
しばらく見ないうちに
アイツらも
逞しくなって!
蒼太も、涼介も!
もう四年生なんだよな…。
本当に…。
なあ、諸星。」
「ああ。
最初にあった時は、
練習にもついていけずに
泣いてばかりだったのに。
郡司…、家村。
俺たちの後輩は、
こんなにスゲェヤツに
なったんだな。」
全員が感慨深い気持ちになり、
しんみりとした雰囲気に
浸っていた。
第六十一話 まさかの誤解!
しかし、この男だけは
いとも簡単に
その空気を破壊する。
「あーあ。
なんか湿っぽいなあ。
とりあえず、
ここで俺が
すべらない小話でもして
盛り上げちゃおうかなっ!?
かっかっかっ!」
竹村隼人。
城西拓翼大学OB。
蒼太たちの二つ上の代で
歴代最強のエースと呼ばれる。
普段は無神経な性格だが、
競技に対する思いは
誰よりも強く、
四年次には
キャプテンを務めた。
しかし、
最後の箱根駅伝では、
8区で涼介(当時2年)が
脱水症状に陥り、
チームは棄権している。
「おいッ!
テメーは何でいつも
空気を読まねーんだよ!
クソバカ!
本当にすみません。
涼介くんの
お父さん、お母さん。
コイツは
本当に無神経バカでして…。
ただ、
悪気はないんですよ。」
竹村の同期である
諸星大吾が
必死にフォローをした。
「いえいえ。
そんなことは…。
竹村さんは、
あの時…。
涼介のことを
あんなに必死になって
庇っていただいて、
私たち家族は、
本当に感謝の言葉しか
ありませんよ。」
涼介の母親が
目頭を抑える!
「しかも、
息子のために
当時の四年生が
全員集まるなんて、
これもすべて、
キャプテンをされていた
竹村さんの人徳に
他なりません!
どんな時でも
明るく場を盛り上げようとする
その深い思いやり!
あなたこそ、
ジョーダイの誇りですよ。
ありがとう!
竹村さん!!」
涼介の父親も、
竹村の手を
しっかりと握り
離そうとしない。
(お父さん!
それは絶対に違う!)
竹村を除くOB全員が
そうツッコみたかった。
一方で、
当の竹村は感激のあまり
ぶるぶると震え出す!
褒められると
伸びるタイプを自称する
竹村の瞳に、
俄然、
やる気とアツい涙が
溢れ出した!
「さあ、みんな!
何やってんだ!?
涼介の
ご両親のためにも
気合い入れろよ!
大和さんたちにも
負けないくらいに!
ジョーダイ・コールで
涼介を盛り上げて
やろうぜ!
音頭は俺がとる!
いくぞ!
苦しきーときのー…」
「いや、
まだ早すぎるだろ!」
OB全員が
竹村にツッコみを
入れつつ、
心の底から
こう願っていた。
(どうか、
涼介のご両親が
この先、詐欺師などに
騙されたりしませんように。)
と。
その頃、
9区でトップを走る
法正大学と
それを追う上位チームは…。




