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第五十九話 そのエールの先に!(復路・最後の箱根駅伝編⑦)

「すげぇ…。

もしかしたら、

エース区間の2区よりも、

すごい歓声なんじゃ…。


8区でこんなことは

始めてですよ!」


城西拓翼大学の監督車、

後部座席に座る

濱上順平コーチは、


箱根路に鳴り響く

ジョーダイコールに

驚きを隠せなかった。


「そうだな。


この区間の皆さんは

毎年観戦している

住民の方々がほとんどだ。


きっと…


三年前あのとき

タスキを繋げずに

悔しい思いをした

蒼太のことを

ずっと忘れないで

いてくれてたんだろうな。


ありがたすぎて、

感謝の言葉も

見つからないよ。」


悔しさに泣き崩れた

あの日の蒼太の姿が

思い浮かぶ。


助手席に座る

櫛部川監督の目は

真っ赤になっていた。


「スゴいですよね。

蒼太先輩たちは…。


タイムや実績なら

先輩よりもスゴい人は

たくさんいるのに、


こんなに人の気持ちを

アツくする人は

そういないですよ。


あ、そうだ!


監督、私、

知ってますよ!


区間配置は

口外するなって言う

ルールを破って、


蒼太さんのお母さんと

涼介さんのご両親には

当日変更のことを

教えていたって!」


マネージャーの梓が

泣きそうな櫛部川監督を

いじり出す。


「ああ…。

バレてたか…。


俺は相変わらず

監督になりきれて

いないんだよな。」


バツが悪そうに頭をかく

櫛部川を見て、

梓が笑って答える。


「でも、

もう時効成立ですから

大丈夫ですよ!


あとで

バーゲンダッツの

バニラアイス、

奢ってくださいね!」


「来年の監督車には

お前以外のマネージャーを

載せることを

十分に検討しておくよ。」


櫛部川がニヤリと笑う。


「あーッ!監督ぅ!

それって職権濫用!!


私は来年も、

主務の権限を行使して

力石リキくんの走りを

近くで見届ける予定なのに!


濱上コーチも

何か言ってくださいよ!」


(梓…。ここで俺に振るのか?

あと、本音をいいすぎだろ。


だが、これ以上こいつに

イジワルすると、

あとが面倒臭い。


それに監督との

人間関係もある…。)


生真面目な濱上順平は、

梓から目を逸らして、

静かにタイムウォッチを

見つめていたが、


ふとひとつの疑問が

頭に浮かんだ。


『なぜ、沿道の観客が

ジョーダイ・コールを

知っているのだろうか。』

ということを。



第五十九話 そのエールの先に!



「行け行け!ジョーダイ!!」

「行け行け!蒼太!!」


箱根駅伝8区

15キロ地点!


沿道で声援を送るおかんと

大和たちに気づいた蒼太は、

満面の笑みと共に、

左手で大きくガッツポーズで

これに応える!


不思議なことだが、

どんなに大きな歓声の中でも、

母親の声だけは

はっきりと聞こえていた!


(おかんやん!でも何で!?

年末年始はシングルマザーの

稼ぎ時やから言うて…


コンビニの仕分けセンターで

仕事してるはずなのに…!


来てくれてたんや!)


おかんの顔をみた途端、

蒼太の心の声は、

関西訛りに戻っていた。


後ろからやってきた

監督車にのる櫛部川も

おかんと大和世代が

いることに気づく!


櫛部川は、

咄嗟に監督車に

取り付けられた

マイクをとった!


「蒼太君のお母さん!

そして、OBみんな!


気持ちのこもった応援、

ありがとうございます!


さあ、蒼太!!

お母さんも大和たちも

お前のために、今日!

駆けつけて来てくれたんだ!


こうなったら区間賞だ!

お前も区間賞を

狙ってやれ!


このエールの先に、

遊行寺の坂の先に!


涼介が、そして

10区には圭佑が

待ってるんだっ!


行けぇー!」


蒼太の両足に

今までにないほどの

力がこもる!


上り坂で失速し始めた

山梨国際大学を追い抜くと、

前方には、

フレッシュグリーンの

ユニフォームが見えた!


(よっしゃ、目標の7位!

青葉大学が見えてきたで!


コイツも抜いたるわ!!)


涼介が待つ戸塚中継所まで

残り700メートルを切ると

青葉大のランナーの

背中を捉える!


並走を続け、

最後の曲がり角を行くと、


その奥には、中継所ラインで

右手を上げて大きく手を振る

涼介が見えていた!

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