第五十六話 〜回想〜 孤独な双子(復路・最後の箱根駅伝編④)
「元々、蒼太たち…
今の四年生は10人で
始まるはずだったんだ。」
櫛部川がゆっくりと
語り出す。
「蒼太たちの推薦組が3人、
附属高校から7人が
ジョーダイに進学する…、
そうゆうチーム構想だ。
だが、レンとシュウ以外の
附属高校のメンバーは…。」
第五十六話 〜回想〜 孤独な双子
4年前、京都。
全国高校駅伝大会にて。
城西拓翼大学附属高校は、
6位入賞を果たしていた!
レンと怪我のため、
シュウは補欠であったため、
出場は断念されたが、
中学生の頃から
同じクラブチームで
共に汗を流していた
仲間の活躍は
やはり嬉しい。
(皆んなで大学に進学して
ジョーダイの黄金時代を
築いてやろう!)
(高校駅伝は7人だけど、
箱根駅伝は10人が
走れるから、今度こそ
全員でタスキを繋ぐんだ!)
そう信じてやまなかった。
しかし、
これから数日後、
事態は急変する。
レギュラーだった5人が
急にジョーダイ以外の
大学に進路を変更したのだ。
「なんでだよ!?」
「監督や先輩たちだって、
お前らが入学してくれるのを
待ってくれてるんだぞ?」
レンとシュウが
メンバーにくってかかる!
「うるせーな!
箱根駅伝で勝つためには
環境が大切なんだ!
都大路で佐久鳳聖に
ぶち抜かれて、
目が覚めたんだよ!
シード権争いも
ままならないチームに
入学したところで
どうしようもないって
ことをよ!」
チームのエースだった
選手がそう言い放つと
他のメンバーも
口々にこれに賛同する。
「レン、シュウ…。
お前たちには今まで
進学のことを黙っていて
本当に悪かったと思う。
でも正直、強豪校からの
スカウトの話がきた時、
これまでに無いくらい
俺たちの心に響いたんだ。
俺は自分の気持ちを
大切にしたい。
だから、俺たちはもう、
今のジョーダイで
箱根を目指す気はないんだ。」
しかし、
取り残された双子は、
諦めきれなかった。
レギュラーメンバーが
本気であることや
彼らの説得は無理だと
分かっていても、
大学で一緒に
タスキをつなぎたい
気持ちを今この場で
捨てられない。
「いやいや。
ふざけんなよ!
そのスカウトに
たぶらかされている
だけじゃないのかよ!
俺もシュウも
このメンバーで
今度こそ駅伝がしたいんだ!」
「そうだよ!
大学の先輩たちだって
いつも附属高校の
俺たちのことを
ずっと…ずっと
思い遣ってくれてた
じゃないか!
俺ら双子も
もっと頑張るからさ…!
考え直してくれよ…、
なあ…。」
すでにシュウは
泣きそうだった。
だが、
レギュラーメンバーの
気持ちはやはり変わらない。
「悪ぃな…。いつまでも、
青春ごっこが通用するほど
大学駅伝は甘くねーんだよ。
確かに
大和さん世代や
竹村さん世代は
優秀かもしれないけど
それはあくまで
ジョーダイの
短い歴史の中での話だ。
強豪校の選手レベルは
こんなもんじゃない。
その上、一個上の
矢車さん世代は
空中分解してしまったし、
3年間、高校レベルで
補欠のお前ら双子と
組んだって箱根はムリだ。
普通に考えて、
レベルの高い奴が
たくさんいるチームに
所属していなきゃ、
箱根駅伝に確実に
出場できるチャンスは
巡ってこない!
ジョーダイなんて、
もう落ち目…、
言ってしまえば
オワコンなんだよ!」
(ガキの頃から
一緒だったのに、
そうな風に…、
思っていたのかよ。)
レンとシュウは
ショックを隠しきれなかった。
この日を境に、
高校の陸上競技場に
レンとシュウは
あまり姿を見せなくなる。
この頃、彼女が
できたこともあるが、
2人はどこか、
心が満たされないような
気持ちだった。
何より、
進学先を変えたメンバーに
会うのがとても辛く感じる。
双子の兄弟ゆえ、
レンとシュウは
いつも行動を共にしていたが、
隣にいる
顔も考え方も同じ兄弟を
見るたびに、
自分たちだけが
取り残されてしまったような、
そんな孤独感を
感じずにはいられなかった。




