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第五十五話 絶妙(ギリギリ)の攻め!(復路・最後の箱根駅伝編②)

トップの法正大学が

復路スタートを切って

9分58秒後。


ピストルの合図と共に

城西拓翼大学の

東原蓮太も

箱根路を駆け出した。


その2秒後に、

往路で10分以上離された

15位以下のチームが

繰り上げスタートの

ピストル音で一斉に

前方の蓮太を追う。


山下りの6区は、

最初の2キロは平地で

その後に2キロほど

上り坂がありため、


セオリー通りならば

スタート直後は

メインの下り坂に備えて

ゆっくりめに入るのだが、


蓮太は一切迷うことなく、

脱兎の如く突っ込んだ!


(マジかよ!?

序盤からあんなスピードで

持つわけがない。


自滅するに決まってる。)


この時、

繰り上げスタートとなった

後方のチームのランナーたちは

皆、一様にそう思ったと言う。


(すぐに下り坂で巻き返せるさ。)

そう、たかを括っていた。


だがしかし…



第五十五話 絶妙ギリギリの攻め!



その楽観的な思考は、

坂を登り終えた直後、

絶望へと変わる!


(いないっ!?

ジョーダイがッ…!!)


しかし、

姿は見えなくても、


山の中腹で、

ジョーダイに送られる

大きな声援だけが

彼らに耳には届く。


(今年のシード権獲得は

ムリそうだ。)


これは、

彼らの闘志をかき消すには、

十分過ぎるほどの威力があった。



一方、沿道の観客もまた、

下り坂への

恐怖心を感じさせず、

前傾姿勢で突っ込んでいく

蓮太の走りに驚きを隠せない。


一気に10キロ過ぎの

宮ノ下を越えて、

大平台のヘアピンカーブに

さしかかった。


「いや。

スピードだけじゃない…。」


長年、

このヘアピンカーブで

多くの箱根ランナーを

見守り続けてきた

老人の目が光る!


「奴は、

センターラインよりも

内側、最短コースを

常に走っておる!


ここが明らかに、

今までのランナーと違う!」


通常、下り坂で

スピードがつくと

カーブの際、外側に大きく

膨らみやすい。


その上、

冬場の早朝において、

センターライン付近、

特に白線部分は凍りやすく、

そして、滑りやすいのだ。


たが、蓮太が

どんなに突っ込んでいても

この絶妙ギリギリを攻められるのは、


才能だけではなく

まさに技術の賜物なのだ。


「さあ、蓮太!

ここからラストの平地だ!

区間賞狙っていこう!!」


18キロ地点で合流した

監督車から、

櫛部川監督が檄を飛ばす!


足の裏の血豆が潰れて、

すでに感覚はなかったが、


胸を張り、気持ちで身体を

押し上げるように、加速した!


残り1キロ過ぎでタスキをとり、

歯を食いしばりながら、

猛ダッシュ!


小田原中継所で待っていた

双子の弟・修太に

タスキを繋ぎ、

その背中を強く押し出して

叫び、倒れ込む!


「行けーッ!

修太シュウ!!」


(蓮太!おつかれ!!

あとは任せてくれ!)


ガッツポーズをとり、

東海道に向かって

修太は駆け出した!



東原蓮太。


この日、誰よりも速く

山下りの6区を走り切り、

3人抜きの好走を見せ、


最後の箱根駅伝にて

見事、区間賞を獲得した!

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