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第五十四話 託された想い、継承される魂!(復路・最後の箱根駅伝編①)

1月3日、

午前6時30分。


箱根駅伝復路スタート地点、

芦ノ湖にて。


「ふぅー。

これが最後の箱根駅伝か…。

本当に、色々あったな。」


入念にウォーミングアップを

繰り返しながら、


蓮太は天を仰ぎ、

そして呟いていた。


この日、大逆転への

最重要区間である

6区山下りを任された

重圧もあるのだが、


これで陸上人生を終える

という感傷的な気持ちが

混じり合う。


しかし、何故だろうか。


蓮太の表情は、

どこかスッキリしており、

爽やかでありながら

穏やかさすら感じられた。


(きっと、3年前の

大和さんたちも

こんな気持ちだったのかな。


あの時、往路で

ダントツの最下位に

なったのに、


復路優勝するって

言い出したんだから…。


目ん玉飛び出るくらい

びっくりしたけど、


マジでカッコ良かったな。


だから、俺も

こんな人になりたいって

本気で思ったんだ。)


そこへ、昨日の往路で

山登りの5区を

命懸けで走り抜いた力石が

泣きながらタスキを

持って現れた。


「レンさん…。

昨日はすみませんでした。」


タスキには、まだ、

力石が流した血のあとが

黒く残っている。


「気にすんなよ!

力石リキ

とにかく昨日はおつかれ!


今日は俺が巻き返すから

安心して大手町ゴール

待っててくれよ。」


最上級生らしく、

ポンと軽く

力石の頭を叩き、

蓮太はタスキを付けた。


「それじゃあ、

そろそろスタート地点に

行かなきゃな。


力石、お前の想いは

絶対に無駄にはしない、


そんな走りを

見せてやるよ!」


後ろをむき、

レースに向かう蓮太の背中は

誰よりも頼もしく感じる。


(カッコいいな…。

四年生は…。)


再び、

力石は下を向き

泣きそうな顔をする。


それをどことなく

感じ取った蓮太は、

立ち止まり、

後ろを向いたまま、

力石に声を掛けた。


「そうだ。最後に、

キャプテンの涼介から

お前に伝言だ。」



第五十四話 託された想い、継承される魂!



涙を流しながら

顔を上げた力石が、

蓮太の背中ほうを見る。


「来年のキャプテンは、

力石リキ

お前で決まりだからな!」


「え!!?何で!?」


「涼介や蒼太が

そうだったように…。


誰からも認められる実力と

困難を乗り越えていける魂を

兼ね備えたランナーこそが、


チームのキャプテンには

相応しいからだよ。


来季のジョーダイを

頼んだぞ!」


そう言い残し、

蓮太はスタート地点に

向かって走っていった。


「さあ、力石リキ

俺たちもサポートカーに

乗って、大手町へ向おう。」


付き添いの山之内太陽(三年)が

優しく声をかける。


「ああ。太陽…。

俺はもう泣かねーよ。


そして、

この先も、何度だって

立ち上がってやるんだ。


見てろよ。


箱根の借りは、

箱根で返してやるからよ。」


決意に満ちた力石。


その姿を朝日の出が

鮮やかに照らし始めていた。

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