第五十三話 『逆襲の世代へ』
1月2日、午後5時。
宿泊先ホテル、広間にて。
うなだれるサポートメンバーと
精魂尽き果てた往路メンバー
(拓生、治希、悠慎)が
そこにはいた。
(なお、
4区を走った宗像は
腰痛悪化のため、
大学の附属病院に
救急搬送されている。)
明日、復路を走る四年生の
蒼太たちが入ると、
一応、
「お疲れさまです」とは言うが
目を合わせることができず、
ただただ下を向くばかりだ。
(どんな顔すりゃいいんだよ…)
(明日、四年生たちは、
最後の箱根駅伝になるのに…)
(情けねぇ…
本当に顔向けできねぇよ…。)
そんな3人を見て、
涼介が力強く励ます。
「なんだよ、お前ら。
揃いも揃って、
暗い顔ばっかりして。
よく頑張ったじゃないか!
みんなカッコよかったぞ!
復路は、必ず
俺たちが巻き返すからな!」
「ところで…。太陽。
力石はどうしてる?」
「はい。
ゴール直後に気絶して、
今も…
部屋で眠ったまま、
うなされています。
梓と2年の神崎が
付きっきりで見てますが、
誰が何度声をかけても、
力石は
ずっと、ずっと…
胸元を触っては
『タスキどこ…?
タスキがない…。
走らなきゃ…。
繋がなきゃ…。』って
呟いてばかりなんです。」
その話を聞き、
サポートメンバーと
往路メンバーが泣き出す!
「分かった…。
生きていてくれてるなら
それでいい。
アイツには来年もある。
だから、
力石のためにも、
明日は何としても勝たなくちゃ
いけないよな…。
よし!
皆んな、聞いてくれ!
今から、櫛部川監督と
話してきたことを伝える!」
第五十三話 『逆襲の世代へ』
往路メンバーが
涙を拭い、広間全体が
静かになる。
それを確認した
キャプテンの涼介が
言葉を発した。
「明日、
俺たち城西拓翼大学は、
復路優勝を狙いにいくぞ!
そして!
それにともない、
目標を!
『シード権獲得の
総合10位以内』
ではなく、
『総合7位以内』に
上方修正する!
それを達成するには、
復路のランナー全員が
区間3位以内の走りを
しなけゃいけない!
しかし!
そこまでしなきゃ、
初めて往路メンバーの
頑張りに応えたって
言えないだろ!!」
往路の中心メンバーである
三年生は呆気に取られる。
そんな3人を見て、
蒼太が明るく声をかける。
「治希、悠慎、拓生!
お前たちは
『逆襲の世代』なんだ。
どんなに悔しい思いをしても
這い上がってきたじゃないか。
四年は
そんな仲間の頑張りにも
応えたいんだ。
本当にジョーダイに来てくれて
ありがとうな!」
それを聞いた
3人は再び泣きそうに。
かつて、テレビで観た
蒼太の走りに感動して、
未経験ながら大学駅伝を志した、
そんな3人にとって
蒼太のこの言葉は、
どれほど魂が奮えるもの
だっただろうか。
「俺もこんな人になりたい。」
そう思わずにはいられなかった。
蒼太世代卒業後、
力石世代は、
その最後まで諦めない姿勢で
あらゆるレースにおいて、
何度も奇跡的な大逆転劇を
起こすことになる。
これは、いつしか
『シグナルレッドの大逆襲』と
呼ばれ、
その後に続く神崎世代が
箱根路に巻き起こす
『シグナルレッドの快進撃』に
繋がっていくことは、もはや
説明をするまでもないだろう。




