第五十二話 明日に向けて
1月2日。
箱根駅伝往路にて、
全チームがゴールしてから
およそ2時間後の
午後4時30分ごろ。
蒼太たちが宿泊する
箱根・芦ノ湖近くの
某ホテルにて。
櫛部川監督の部屋で
行われていた復路メンバーの
最終ミーティングが終わり、
往路メンバーや
サポートメンバーが待つ広間に
蒼太たちは向かっていた。
往路成績は14位と
シード権獲得には
極めて厳しい状況であったが、
復路メンバーの顔は
どこかしら、
いつもよりも凛々しく、
そして逞しく映って見える。
「それじゃあ、
俺と修太はお先に!
皆んなにあの旨、
よろしく伝えてくれよ。」
ここで
蓮太が他の復路メンバーと
握手を交わし、
つきあたりにある
広間には行かずに
左に曲がって
自分の寝室へと向かう。
「あと、
『明日、大手町で会おう!』
ってことも付け加えてくれな!」
修太も最後に、
翌日10区を走る圭佑との
握手を終えると、
蓮太と共に寝室へ向かった。
ここで、
寝る時間にしては
流石に早すぎるのでは?
と感じる読者もいると思うので
少し補足をしたい。
『蓮太と修太は、
6区と7区、すなわち、
復路の1番手と
2番手であるため、
スタートの時刻がそれぞれ
朝の8時台と9時台となる。
そのため、
その時間帯に合わせて
身体を最高の状態に
仕上げるには、
夜中の2時には
起きて準備をして
いなければならないのだ。
これは、
医学やスポーツ科学の
観点からして、
通常、人間の身体が
最高のパフォーマンスを
発揮するのは、
起床から4時間後を
過ぎたあたりとされており、
起床後の食事や身支度、
レース前の入念な
ウォーミングアップなどを
考慮すれば、
夜中の2時起床は、
箱根駅伝に挑むうえで、
理にかなっているのである。』
第五十二話 明日に向けて
「本当は、
アイツらを最初に見たとき、
とてもじゃないけど、
箱根駅伝に選ばれる
人間じゃないって思ってた。
それでも、今じゃ
ジョーダイに欠かせない選手だよ。」
2人の姿を最後まで見送った
キャプテンの涼介が呟いた。
「ほんと、ほんと!
走ってない時は、いつも
チャラチャラしてるけど、
今の2人は頼れるヤツの
背中をしてたよね。」
笑顔で圭佑も答える。
「それじゃあ…
涼介、圭佑!
俺たち3人は、
ヘコんでる往路メンバーを
元気づけにいこうか!」
蒼太が2人に声をかけた。
(俺たちが
箱根駅伝に挑めるのは、
やっぱり、蒼太の
おかげなんだよな。)
頷きながらも、涼介と圭佑は、
敢えてこれを口に出さなかった。
(明日の復路で大逆転する
その時まで
この台詞は取っておこう。)
そう思っていたからだ。




