第四十七話 爆走王の切札!(箱根駅伝・往路激走編③)
(くそ!
法正大に追いつくためとは言え、
やっぱりコイツとは
組むんじゃなかった!)
(山の神もついに本領発揮か!
だが、俺とてエース!
このまま負けるわけにはいかん!)
箱根駅伝2区、
14km地点の権田坂にて。
中央義塾大学の早瀬と
東京駒澤大学の伊澤を
東洋文化大学の葛城龍治が
一気に振り切った!
そして、
前を行く法正大・徳本を
捉えるため、
誰よりも速いスピードで
権田坂を駆け上る!
しかし、
これを察知した徳本も
早めのスパートを仕掛け、
この追撃を凌ぎきり、
権田坂の頂上から、
下り坂を利用した
二段スパートを炸裂させた!
一方、本来下り坂が
あまり得意ではない
東洋文化大の葛城は、
これに反応はできても、
追いつくことができない。
その間に、東京駒澤大と
少し遅れて中央義塾大が
葛城に再び追いついた。
(法正大をこれ以上、
逃すわけにはいかんが、
次の戸塚の壁の前に、
葛城だけは、
退けなくてはならない!)
ここまでくると、もはや、
駆け引きどころではなく、
この2位集団の3校は、
何が何でも前に出るしかないのだ!
(法正大の…、
あんな馬鹿げたスピードが
いつまでも続くわけがない。
だから絶対に、
戸塚の壁までに
俺がトップに立ってやる!)
ここに、
男たちのプライドを賭けた
激走の火蓋は
切って落とされた、
が、しかし!
第四十七話 爆走王の切札!
(なあ、速水…。
たしかお前は
俺をレースで負かすたびに
言っていたよな…。
『切札は
最後まで残すもんだ。』って。)
先頭を走る法正大・徳丸桂馬は、
マラソンに転向するために
アメリカへと渡ったライバル、
速水瞬のことを思い出していた。
(俺は誰にも負けないために、
血の滲む思いをして、
お前も得意にしていた
この二段スパートを習得した。
そして!!
これが、
お前を超えるために
血反吐を吐く思いで
編み出した俺の切札!
渾身の三段スパートだ!)
徳丸の両足に、
かつてないほどの
パワーがみなぎり、
爆走王の名に相応しい
衝撃的なスピードで
ラストスパートを仕掛ける!
「まるで、
中距離走とかのラスト…
いや、短距離走並みの
スピードじゃないか!!」
まさにこれぞ、
オレンジ・エクスプレス!
徳丸の人間離れした速さを
見せつけられた、
後方、2位集団の3校は、
もはや為す術がなかった。
さらに、
観客の誰もが爆走王の走りに
魂を揺さぶられたのだろう。
あれほど激しかった
徳本へのブーイングは、
いつのまにか、
地響きかと思うほど
法正大学陸上部への
大きな歓声に変わっていた!




