第三十三話 発表!区間エントリー!!
12月29日、
箱根駅伝の全出場校、
区間エントリーの発表日。
ここ数年、東京では、
暖冬が続いていたのだが、
今年は関東地方にも
例年より強い寒波が押し寄せ、
各地で雪景色が見られていた。
そして、
沖縄育ちの荻久保圭佑にとって
10センチ以上の積雪は
生まれて初めてであり、
気持ちが高揚しないわけがない。
外で雪を上に放り投げては、
まるで子どものように
無邪気にはしゃいでいる。
「圭佑ー。
箱根の前に風邪ひくぞー。」
蒼太たちが笑いながら、
優しく声をかけた。
「うん!そうだねー!
でも、もう少しだけ、ね?」
圭佑が両手を重ねて、
メンバーにお願いする。
「あはは。しゃあないなー。
あと五分だけなー。」
圭佑も蒼太たちと同じ
最上級生なのだが、
こうして子どもっぽさが
時折、顔を出す。
そういったことから、
後輩たちも含めた
他のメンバーには、
まるで末っ子のような
存在として扱われることも
しばしばあったが、
これは、
圭佑がチームの誰よりも
愛されキャラであることの
証なのである。
「もう!先輩!
そろそろ箱根の区間エントリー
発表の時間ですよー!」
三年の山之内太陽が、
大声で呼びかける。
「うん!いま行く!」
ジョグをしながら寮へ向かう
圭佑の顔は鼻水まみれだったが、
「箱根」という言葉を聞いた瞬間、
その目はらんらんと輝き、
顔つきはきゅっと引き締まっていた。
第三十三話 発表!区間エントリー!!
「おいおい!
これは奇策にもほどがあるぞ。」
発表されたライバル校の
区間エントリーを見て、
ジョーダイメンバーは
その驚きを隠すことができなかった。
「いやいや、
東洋文化大の区間配置も
意表を突いてるけど、
法正大のはそれ以上に
ぶっ飛びすぎだって!」
双子の弟・修太が
片手を頭の上に乗せて
何度もオーダー表を見直している。
「それをいうなら、
山梨国際大もだいぶ思い切ったな。
こんなオーダーは前例がないぞ。」
修太とは対象的に、涼介は
ホットレモンティーを飲みながら
淡々とオーダーを分析していた。
投薬治療の効果もあり、
十二指腸炎の症状から
快復しつつあるようだ。
「一方で、
中央義塾大や東京駒澤大が
予想どおりの区間配置を
してきたところを見ると、
順調な仕上がり具合と見て
いいだろうな。」
蓮太もまた、
平静を装ってはいるが、
その目は何度も法正大学の
オーダーを追いかけている。
「確かに、
優勝候補の動向は気になる。
だが、俺たちの目標は、
2年連続のシード権獲得だ!
当日はとにかく
自分たちの走りに集中しよう!」
蒼太も
気合いの入った言葉を放ち
皆を鼓舞するが、
全日本大学駅伝以降、
自分の体調に一抹の不安を
感じずにはいられなかった。
(果たして、
俺のぬけぬけ症状は
どこまで完治しているのか?)と。




