第三十一話 成り上がる法正大!
全日本大学駅伝では、
なんとか来年のシード権を獲得した
城西拓翼大学であったが、
その後に行われた
丸亀ハーフや関体大記録会、
八王子ディスタンスなどの
各大会で苦戦を強いられていた。
元・実業団選手の宗像哲也や、
最後の箱根にかける荻久保圭佑が
復調をみせてはいるが、
昨年度の時期と比較して、
順位もタイムも今ひとつである。
やはり、原因としては
共にチームの顔である
涼介と蒼太の戦線離脱が
他のメンバーに
想像以上にプレッシャーを
与えていることが
挙げられるだろう。
しかし、選手たちは、
決して意気消沈して
レースに臨んでいるわけでは
まったくないのだ。
体調管理やモチベーションも
悪くはないはずである。
しかし、
「こうゆう時こそ、
俺が頑張らなければ!」
という想いが強すぎるあまり、
冷静にレース展開を読まずに
オーバーペースで突っ込み、
最後の勝負どころで
大半の選手が失速をし、
惨敗を繰り返していた。
第三十一話 成り上がる法正大学
その一方で、箱根駅伝史上、
最もアンチファンを増やした
徳丸桂馬がいる法正大学は、
どのレースでも圧勝を積み重ね、
多くの識者からも、
優勝候補の筆頭として
目されるほどに
その名を轟かしていた!
特に、
エース・徳丸は、
全体トップで走り抜けた
箱根駅伝予選会の時よりも
凄まじさを増しており、
ありとあらゆる大会で、
実業団のトップ選手ですら
打ち負かしてしまうほどの
大活躍を見せる!
こうなると、もはや
大学陸上界のみならず、
『爆走王』の異名は、
陸上雑誌のみならず、
あらゆるメディアにも
大いに取り上げられ、
その知名度と注目度は
箱根駅伝が近づくにつれて、
人気芸能人のそれを
一気に超えてしまうほど、
もはや、うなぎのぼりであった。
ただ、これは、
徳丸が積極的に取材を
受けていたこと以上に、
そのメディアを存分に利用して、
相変わらず他校やライバルを
名指しで挑発したことが
要因であることは、
もはや言うまでないだろう。
無論、徳丸本人もこれが原因で
アンチファンが急増していることは、
十分に理解している。
しかし、
彼の本音は、
決して、実力を誇示して、
他人を罵倒したい
ということではなかった。
「自分が、
より厳しい逆境に
打ち勝てるぐらい
強いランナーになり、
箱根駅伝の総合優勝に
法正大学を導きたい!
そして、今季で勇退する恩師、
鳴山監督の花道を飾る!」
ただそれだけなのだ。




