第三十話 濱上順平の秘策②!
城西拓翼大学コーチ濱上順平の
復路配置案は次のとおりである。
【1月3日 復路】
6区 東原 蓮太 (4年・双子兄)
7区 東原 修太 (4年・双子弟)
8区 西條 蒼太 (4年・副主将)※
9区 石川 涼介 (4年・主将)※
10区 荻久保 圭佑(4年・幹部)
ちなみに、※印は、1月3日に
当日変更で出場する選手である。
なお、
箱根駅伝当日まで
主力を補欠に置いておくことは、
何も珍しいことではない。
これは、
チームの動向をライバル校に
悟らせないと同時に、
当日補欠変更で
他校の穴となる区間に
エースを投入し、
レースの主導権をとるためだ。
箱根駅伝においては、
もはやこれも常套手段である。
しかし、
城西拓翼大学に関して言えば、
少し事情が異なる。
最初から蒼太と涼介を
復路に配置してしまえば、
不調であることを
ライバルに悟られるという
心配も確かに存在するが、
蒼太を涼介を当日まで
一旦補欠にしておくことで、
ギリギリまで調整させることが
1番の目的なのだ。
また、
2人の体調次第では、
8区涼介、9区蒼太という配置も
可能になることを考慮すれば、
彼らの補欠登録作戦は、
理にかなっていると言えよう。
第三十話 濱上順平の秘策②!
ただ、
復路に主力が多くいるにせよ、
彼らが不調である以上、
往路同様、シード権死守のためには、
やはり、1人のミスも許されない
レースになることは、
誰の目にも明らかであった。
6区と7区で流れを作り、
8区と9区で勝負を決め、
安定感が増した10区の
圭佑が10位以内でゴール!
という展開に持っていくためには、
やはり、蒼太と涼介の復調は
絶対に必要だ。
そして、
大学駅伝に出場歴のない圭佑が
最初で最後の箱根駅伝で
十分にその安定力を
発揮するためには、
やはり10区までに、
安全圏となる総合7位以内で
タスキリレーすることが
理想である。
主力が復活すれば、
全く不可能とは思わないが、
通常、箱根常連校であれば、
このようなギリギリ感のある
オーダーは絶対に組むことはない。
しかし、監督の櫛部川は、
濱上コーチがこの案を提示した時、
不思議と希望を見出した気持ちになった。
(今回はこの直感に賭けてみよう!)
なんとか復調を見せている宗像、
あの事故から再起をとげた圭佑、
そして、
もくもくと調整を続ける蒼太と
復活が期待されている涼介が、
目を閉じるたびに、
櫛部川の脳裏を鮮やかによぎる!
(アイツらなら、このオーダーで、
箱根路に奇跡を巻き起こせるはずだ!)
「順平!この配置で行こう!
ただ、ひとつ条件がある!」
濱上が、一瞬ビクっと驚きすぐに応える。
「な、何でしょうか?」
「順平。
往路の5人については、
お前が誰よりも
よく知っているはずだ。
だから、
1月2日、往路の
陣頭指揮はお前がとれ!
5人の調整も全て任せる。
そして、復路については、
俺が指揮をとるが、
何があっても、
責任は全て俺がとるから!
だから、
全力でこれに取り組んでくれ!」
この言葉に、濱上も覚悟を決めた。
「監督…。
ありがとうございます。
サッカートリオは育成時代から
私が鍛え上げてきましたし、
力石にも自分の全てを叩き込みました。
そして、宗像は
実業団時代からの私の盟友です!
是非、任せてください!!
勝ちましょう!
連続シード権に向けて!」
こうして、
首脳陣の方針が決定した。
箱根駅伝まで残り1ヶ月と少し。
この時はまだ、正月の箱根路に
予想を超える波乱が起こることを
誰もが想像だにしていなかった。




