第二十七話 笑顔なきフィニッシュ(全日本大学駅伝編 最終話)
(これで、最後のピースがはまったな。
よくやったぞ力石…。
國學舎大には競り負けたが、
箱根駅伝の五区はお前で決まりだ。
だが…。)
全日本大学駅伝、ゴール地点。
伊勢神宮にて。
城西拓翼大学は、
総合6位でフィニッシュし、
来年の全日本のシード権を
獲得したにも関わらず、
コーチの濱上順平に笑顔はなく
唇を噛みながら険しい表情をしている。
また、
ゴール地点で力石を待っていた
他のメンバーも、誰一人とて、
言葉を発することはなかった。
ゴールテープを切った力石本人も、
チームメンバー全員の様子が
明らかにおかしいことに気づく。
(あれ?
涼介さんと蒼太さんが居ない…。
櫛部川監督もだ!)
「力石、
最後は惜しかったな…。」
「区間賞ペースの國學舎大に
最後まで喰らいついたんだ。
いい走りだったぞ…。」
蓮太と修太が
ようやく力石に声をかけたが、
二人の深刻さを隠しきれない顔に、
不安がよぎった。
「蒼太と涼介は病院にいる…。
命に関わるようなものじゃないから
安心しろ。あいつらなら…。
きっと箱根までに治してくれるさ。」
濱上コーチは
自分に言い聞かせるように
メンバーに声をかける。
(ただ、もしかしたら…。)
ジョーダイの誰もが、
最悪の事態を感じていながらも、
その先の言葉を口に出すことが
できなかった。
第二十七話 笑顔なきフィニッシュ
6位までの順位は次のようになった。
1位 東京駒澤大学
2位 青葉大学
3位 東洋文化大学
4位 中央義塾大学
5位 國學舎大学
6位 城西拓翼大学
序盤に抜け出した東京駒澤大学が、
そのまま逃げ切りに成功し、
2位の青葉大学に
2分30秒以上の差をつけて優勝!
しかし、青葉大学もまた、
優勝候補に挙げられていた
東洋文化大学と中央義塾大学を退け、
存在感を存分にアピールした。
また、3位争いとなった
東洋文化大学と中央義塾大学だが、
アンカーの葛城龍治が最後の上り坂で
中央義塾大学の柴崎和真を振り切って
山の神としての意地を見せる!
5位、6位争いについては、
さきほど少し述べたとおり、
ラスト1キロ地点で、
区間賞ペースの國學舎大学に
城西拓翼大学が追い抜かれた
形となった。
そして、残り二つとなった
シード権争いは、熾烈を極める!
八区中盤まで、
安定した走りを見せていた
山梨国際大学が10キロ地点で
右足痙攣により、まさかの失速!
後方の
早稲田学院大学、純天王寺大学、
さらには神奈川専修大学といった
8位グループに追い抜かれ、
シード権外に転落した!
この8位グループの3校は、
残り1.5kmまで並走したが、
ここで早稲田学院大学が脱落!
この時点で
来年度の全日本のシード権の行方は、
箱根駅伝の予選会で敗退した
純天王寺大学と神奈川専修大学に
ほぼほぼ決まったのだが、
一つでも順位を上げようと、
意地のラストスパート合戦を
繰り広げ、伊勢路の観客たちは、
大いに沸いた!
奇しくも、両チームのアンカーは
ともに、唯一の四年生メンバーである!
今大会において、
彼らの走りは特に凄まじく、
これほどまでに、
感動的なレースはないと断言するほど、
誰もが心を打たれていた!
最後の大学駅伝を
悔いなく走り切ろうとする
その姿勢に!
箱根駅伝に出られない悔しさを
全力でぶつける姿に!
後輩たちへの手向けに、
最高の走りとシード権を届けようとする
必死さに!
(願わくば、
このレースをずっと見ていたい!)
いつしか、
皆がそう思うほど
この熱気に酔いしれていた!
だが、
レースはいつか必ず、
終わりが訪れる。
7位 純天王寺大学
8位 神奈川専修大学
最終区での
見事な逆転シード権を
獲得したにも関わらず、
アンカーを務めた二人には
一切の笑顔はなく、ただただ、
止まることのない悔し涙が
滝のように溢れ出していた。
(なぜ、箱根駅伝の予選会で
俺たちは勝てなかったのだろう?)
(全力で走れたけれども、
やっぱり…、
最後は箱根で迎えたかった!)
『悔いのない走りをしよう!』
そう強く思い、伊勢路を
全力で走り切ったからこそ、
悔いばかりが込み上げる。
全日本大学駅伝が箱根駅伝と共に
格式のある神事だとしても、
やはり、
関東の大学に進んだランナーにとって、
今だに箱根駅伝が全てと言っても
過言ではない。
賛否両論あるかもしれないが、
これは間違いなく事実である。
それでも、
彼らは箱根路を駆けることに
全てを捧げたからこそ、
この伊勢路で、
人々の記憶に残る
素晴らしい走りを見せたのだ!
これもまた、
紛れもない真実だ。




