第二十四話 純粋に!全力で!(全日本大学駅伝編⑦)
(くそッ!コイツら…!
まだ付いてくるのかよ!!)
スタート直後、
順調にペースを上げ、
前にいた早稲田学院を抜き、
5位に順位を押し上げた
城西拓翼大学の石川涼介であったが、
4区、5キロ地点で、
ついに後方から猛追してきた
國學舎大と埼玉帝強大、
そして、山梨国際大に捕まり、
5位グループを形成する。
この3チームに追いつかれた時点では、
涼介もまだまだ冷静であり、
終盤にかけてペースを上げて行けば
振り切れると考えていたが、
今大会において、
最大の激戦区と呼ばれるだけあって、
どの選手も予想以上に
粘り強い走りを見せていたのだ。
彼らは、
5位グループの先頭を行く涼介の後方に
ぴったりとはりついて、
虎視眈々と勝負所を見極めるべく、
ギラギラとした闘志を燃やす!
一方、涼介のコンディションは、
決して悪いものではなく、
その走りも実力どおりであったが、
『チームのエースたる自分が
他校のランナーに
遅れをとってはならない!』
という気持ちが強すぎるあまり、
強引に勝負を仕掛けては
再び集団に吸収されるということを
何度も繰り返す。
一般の観客からすれば、
城西拓翼大学が積極的に、
レースの主導権を握っているように
見えていても、実際のところ、
涼介はかなり追い込まれているのだ。
いや、正確に言えば、
涼介自身が己を追い込みすぎて、
勝負所を見出せずにいたのであった。
第二十四話 純粋に!全力で!
ここで、4区、
5キロ通過時点での
各チームの順位を確認しておきたい。
1位
東京駒澤大学
2位グループ
中央義塾大学
東洋文化大学
青葉大学
5位グループ
城西拓翼大学
國學舎大学
埼玉帝強大学
山梨国際大学
9位グループ
早稲田学院大学
純天王寺大学
神奈川専修大学
この時点で、
トップの東京駒澤大と
2位グループの差は、2分35秒!
また、2位グループと
5位グループとの差については、
2分46秒となっており、
優勝チームと
上位争いをするチームに関しては、
ほぼ絞られたと言ってよいだろう。
しかしながら、
1分30秒以上あった
5位グループと9位グループの差は、
52秒と徐々に詰まってきており、
5位から11位までのチームのうち、
この先、どのチームが
シード権を取れるのか
予想がつかないほどの
大接戦となっていた!
(マジかよ…!?
純天王寺大と神奈川専修大…!?
序盤で振り切ったはずの
早稲田学院まできているのか?
俺の調子は悪くないはずなのに!)
後方を少し振り向いた涼介は、
自身の競技人生で
今まで感じたことのないほどの
焦りと恐怖を覚えた。
前方にいるランナーにとって、
最後まで諦めずに
怒涛の追い上げを見せる
ランナーが発する気迫ほど、
脅威的なものはないのだ。
では、
純天王寺大学や神奈川専修大学の
ランナーは何故、
このような走りができるのだろうか。
これを、早稲田学院大学などの
いわゆる強豪校が持つ
独特の底力だと言う識者も
いるだろう。
しかし、
今回に限りそれは違う!
なぜなら、
先日行われた箱根駅伝予選会で、
純天王寺大と神奈川専修大は、
トップ通過確実と言われながら、
まさかの敗退を喫しており、
この2校の選手たちは、
箱根に出れない悔しさを
ただただ純粋に、そして全力で
この全日本大学駅伝にぶつけている!
ただそれだけなのだ!
そして、
彼らの走りは確かに脅威であったが、
自分を見失いかけていた
涼介の心を打った!
(そうだったよな…。
俺は、『あの時』、
今のアイツらのように、
もっとガムシャラだったはずだ!
すまなかった!皆んな!
キャプテンの俺が
その気持ちを忘れてたら、
駅伝にならねーよな!!)
もはや、涼介に迷いはない!
そして、この瞬間!
2年前に途中棄権した
箱根駅伝での苦い記憶は、
全日本大学駅伝と言う舞台で、
彼の駅伝魂の礎となったのだ!
残り1キロ、
5位グループの
ラストスパート合戦が
始まった!




