第十六話 大胆不敵な宣戦布告!(法正大学編⑤)
ここで、話は法正大学から、
再び、現在の城西拓翼大学に戻る。
出雲駅伝から2週間後。
ついに箱根駅伝予選会が開催された。
なお、前回大会の本戦で
総合四位となったジョーダイには、
シード権が与えられているため、
今回の予選会は免除されている。
そのため、
当日は、練習終わりに
部員全員が食堂に集まり、
録画した箱根駅伝予選会に
見入っていた。
「これは凄いことになったな…。」
キャプテンの涼介が呟く。
「本当に…。
『まさか』としかいいようがない。」
副キャプテンの蒼太の発言に、
皆が黙って頷いていた。
第十六話 大胆不敵な宣戦布告!(法正大学編⑤)
『11位!純天王寺大学!』
『12位!神奈川専修大学!』
どちらも予選会トップ通過候補と
前評判の高かった二校が、
予選会独特の雰囲気に飲まれ、
十位以内に入れず敗退!
元々、シード校として
本戦で活躍してきた強豪校でさえ、
こうして敗北することから、
近年、箱根駅伝予選会のレベルは
恐ろしく高くなっていると言えよう。
また、
それ以上に衝撃的だったのが、
法正大学が2位の大学に
3分半差をつけて圧勝したことだ。
法正大には留学生はいない。
では、如何にして予選会を
トップ通過したのか?
法正大のメンバーは、
一切協力することをせず、
まるで競い合うがごとく、
個人成績1位を目標に、
全員がリスクを恐れない
攻めの走りをしていたのである。
すなわち、
「集団走の全否定」であった。
これが功を奏し、エース徳丸が
留学生ランナーを抑えて
全体トップでゴール。
他のメンバーも
参加人数500名中、
全員が二桁順位以内で完走し、
他校に圧倒的な実力を見せつけた。
しかし、法正大のメンバーに笑顔はない。
彼らにとっての最大の目標は、
決して予選会突破ではないからだ。
もっと言えば、
予選など通過して当たり前なのだ。
彼らの頭の中は、
箱根駅伝本戦のメンバーに選ばれ、
総合優勝することしかない。
彼らは自分たちの結果を
知るやいなや
さっさと帰ろうと
荷物を運び始めた。
(俺たちは
優勝を目指すチームなのだから、
後はどこがこようが関係ない。)
という考えなのだろう。
慌てて、テレビ局の取材陣が、
トップ通過した法正大学に
取材をしようとメンバーらに
マイクを向ける。
すると、徳丸は
「ちょっと貸して。」と言い、
アナウンサーから
マイクを貰い受けると、
カメラに向かって言い放った!
「おい!
東洋文化大と東京駒澤大!
それから、中央義塾大学!
どうせテレビで観てんだろ!
テメーらの新三強時代は
俺たちが終わらせてやる!
いいか!
箱根本戦で総合優勝するは
俺たち、法正大学だ!
あとのザコ大学は
知ったこっちゃねぇ。
せいぜいシード権争いでも
頑張ってろ!以上だ。」
徳丸からマイクを返された
アナウンサーはあっけにとられる。
一方、テレビを見ていた
城西拓翼大学の四年生は、
顔を真っ赤にしながら大激怒!
「高校卒業してから、
全然見ねーと思ってたけど、
なんてムカつくヤローだ!
チャラチャラ髪なんか
染めやがって!」
「忌々しいヤツだ。
箱根駅伝ではぶち抜いてやる!」
「実力がある分それ以上に
いけすかねーぜ!」
しかし、
ここで荻久保圭佑(四年)が
冷たいお茶を配りながら、
蒼太たちをなだめる。
「まあまあ、それよりも、
2週間後の全日本大学駅伝だろ?
ここで無駄なエネルギーを
使っちゃダメだって。」
蒼太がお茶を飲み干し、
一度、深呼吸をする。
「そうだよな…。
冷静にならなきゃ。
法正大学は出てないけど、
全日本をしっかり走らないとな。
圭佑、いつもありがと。」
キャプテンの涼介も
ようやく冷静になった。
「ああ。
俺たちが4年間頑張れてるのも、
圭佑がいつもいてくれたからだ。
全日本は一緒に走れないけど、
箱根駅伝では必ずお前に
タスキを繋ぐからな。」
その言葉が圭佑の胸に響いた。
とその時…
「「ぷはー!うめー!!
圭佑お代わりない!?」」
ここはしんみりする状況だが、
蓮太と修太は、
無神経なくらい空気を読めていない。
「テメーらが自分で買ってこい!」
せっかく落ち着いた涼介が再びキレた!
「だはははははは。」
ツボに入ったらしく
圭佑はずっと笑っている。
(この5人でいる日々もあと少しか。)
今日の蒼太は
少しセンチな気分に浸っていた。




