第十四話 〜回想〜 タッグ結成!(法正大学編③)
高校時代の徳丸桂馬は、
全国有数の実力者であった。
しかし、
その自分勝手な性格が災いし、
各大学や実業団のスカウトから
敬遠されてしまう。
他人への思い遣りはなく、
普段の練習から、
たとえ、相手が先輩であっても、
不甲斐ない走りをすれば、
容赦なく罵声を浴びせていた。
一方で、自身は髪を染め上げ、
誰よりも目立ちたがった。
その上、走力は
トップクラスゆえに、
だれも文句が言えない。
だから余計にタチが悪かった。
また、
当時の各チームのスカウトは、
口を揃えて断言していた。
「こんな勝手なヤツを
チームに入れたら、
確実に内部崩壊を起こす。」と。
しかし、ただ一人、
徳丸を絶賛していた男がいた。
歳は既に六十五を超えているが、
選手を見るその眼光は鋭い。
名を鳴山哲治と言った。
第十四話 〜回想〜 タッグ結成!(法正大学編③)
徳丸桂馬、高校二年次。
関東地方の某記録会にて。
「おう。お前が徳丸か!
スカウトからは、
なかなか評判悪いらしな!
お前、このままやったら、
陸上界に居場所がなくなるぞ。」
鳴山が声をかける。
(あ!?なんだこのジジイは?
喧嘩でも売りに来てんのか?)
まったくもって事実なのだが、
初対面の人間にここまで言われ、
露骨なくらいに徳丸は
不機嫌な顔をしていた。
「それなら自分で勝手に練習して
速くなればいいだけだろ?
陸上競技は一人で戦う競技だ。
レースでは誰も助けちゃくれない。
それでも、俺は誰にも頼らずに
ここまで速くなったんだ。
それに!
大学や実業団の長距離なんて、
結局、駅伝ばっかりじゃねーか。
仲間がいなけりゃ
勝負もできない弱虫どもの
集まりだろ?
そんなもん。
こっちから願い下げなんだよ!」
そう言い捨てて、
鳴山に背中をむけて歩きだした。
鳴山はこの時、徳丸の本音を聞いて、
背中に激しい電流が流れたと言う。
(わしが…
今まで求めていた選手は
コイツのようなやつだ!
徳丸は絶対に大物になる!
何が何でも法正大に入れるぞ!)
「ほうか…。全国民の前で
箱根駅伝を走るんが怖いんか?」
徳丸の立ち去ろうとする足が
ピタリと止まる。
「ああ、そうじゃ。
申し遅れとったな。
わしは法正大学監督の鳴山じゃ。
徳丸よ、わしと組まんか?
箱根駅伝だけじゃない、
世界大会、そしてオリンピックで
わしがメダルをとらせてやる!
お前にはその資格があるんじゃ!」
振り向くことなく、
徳丸は返事をした。
「練習メニューは自分で考える。
だから、最高の環境を整えてくれ。
箱根でも世界でも、
どこでも走ってやるよ!」
この日、徳丸は、陸上人生で
初めて信頼できる大人に
出会えたのであった。




