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第八話 一心の気合いとあの時の自分(出雲駅伝編④)

出雲駅伝第二区(5.8km)。


城西拓翼大学の走者である

神崎一心のすべり出しは、

周囲の心配をよそに

順調そのものであった。


「よし!調子もよさそうだし、

ロードにも上手く対応できている!


やっばり、神崎を連れてきて

正解だったみたいだな!」


大会関係者控え室では、

テレビ中継を見ている

櫛部川監督と濱上コーチが、

今回の区間配置に手応えを感じ、

小さくガッツポーズをとる。


「このままいけば、三位以内!

次の涼介さんでトップに立てれば、

優勝だっても夢じゃない!」


今回メンバーに選ばれなかった者も、

駅伝部の寮で大会のテレビ中継を見て、

とてつもなく胸が熱くなっていた。


しかし、残り2キロとなった時、

事件が起きた!



第八話 一心の気合いとあの時の記憶(出雲駅伝編④)



神崎一心は、慣れないロードレースで

懸命に前方約200メートル先にいる

中央義塾大学と東洋文化大学を追う。


しかし、後方から、

4大学が城西拓翼大学を捉える!

東海道大学と早稲田学院大学、

明利大学、そして、青葉大学だ。


これらの大学は準エースを

この最短区間である二区に投入し、

巻き返しを図っていたのだ。


「まずいな。一心は単独走に強いが、

こうゆう時の駆け引きは経験不足だ。

相手に上手く利用されなければいいが。」


櫛部川が苦い顔をしながら、

腕を組んで中継を見ている。


そして、5校がだんご状態なりながら、

残り800メートルとなった!


先に仕掛けたのは明利大学だった。

しかし、他の大学もこれを逃さない。


500メートル以上にわたり、

一進一退の攻防が続く!


一心もなんとかこれに食らいつく。


残り250メートル!


歩道側に僅かな隙間を見つけた一心!


半ば強引にスパートを仕掛けた!


「危ない!」


櫛部川監督が叫んだその時だった。


一心が右側にいたランナーと接触!


自身の右足を踏まれてしまい、

大きく転倒した!


激しい痛みが一心を襲う!


すぐに立ち上がり、

走りだそうとするが、


倒れた時に、足首も捻ってしまい、

まともに走ることができない。


だが、一心は

右足を引きずりながら

タスキを繋ごうと前に進み出した。


(明らかに捻挫をしている。)


誰からみても、

一心が重傷を負ったことは

明らかであった。


残り200メートル。


一心が再び転倒する。


その度に、はるか後方から

走ってきたランナーにも

次々と抜かれていく。


しかし、一心は、

この激痛を堪え

気合いで立ち上がった。


三区中継地で待つ

石川涼介見えてくる。


泣きそうになりながらも

一心は足を引きずり、

ひたむきに前にすすむ。


残り100メートル。


一方、中継所で待つ涼介は

涙を堪えることができなかった。


一心が痛みで倒れる度に、

二年前の箱根駅伝で涼介自身が

途中棄権したあの記憶が甦える。


何度も倒れ、

擦りきずだらけになった一心の姿に

あの時の自分が重なって見えていた。


残り5メートル!


「がんばれ!一心!ラスト…

ここラストだぞ!」


涼介が必死に声をかける!


しかし、後ろから、

脱水症状になりながらも、

フラフラな状態で走ってきた

山梨国際大学のランナーにも

追い抜かれようとしている。


(これ以上…。

抜かれるわけにはいかない!)


傷だらけの一心は

もはや気合いだけで

タスキを運んでいた。


そして、無事、涼介にタスキが渡る!


「良く頑張ったぞ!一心!」

涼介は涙を拭い去り、

出雲路へと駆け出した!


それと同時に、

山梨国際大学のタスキも

キャプテンのエドワードにも

託されている!


両チームのキャプテンは、

それぞれの部員たちの想いを背負い、

互いに負けられない戦いに

身を投じた!

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