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第四話 残りの一枠!

9月上旬。


今年も地獄の夏合宿を終えた

城西拓翼大学駅伝部のメンバーは、

皆、一様に逞しい顔つきになった。


しかし、その中で

主力である山之内太陽が

怪我を負い離脱!


長期間の治療を要するため

今季の駅伝シーズンは

もはや絶望的となった。


そして、

前回の箱根でも

好走をしていただけに、

山之内太陽の離脱は、

他のメンバーにも衝撃を与える。


誰しもが、

スピードのある太陽こそ、

出雲駅伝に選ばれるべきと

思っていたからだ。


表向きであるが、

箱根への調整と言う形で

宗像が出雲と全日本の出場を

見送ったこともあり、


下級生の間では、

誰がその一枠を勝ち取るのか、

という話題で持ちきりとなっていた。



第四話 残りの一枠!



「出雲駅伝のメンバーの内、

四年の涼介さん、蒼太さん、

レンさん、シュウさんは

既に確定だよなー。」


「それにトラックシーズンや

夏合宿も好調だった

三年の力石リキさんも

間違いないって。」


「となると、残りの一枠は…

もしかして圭佑さん!?」


練習後、二年生が集まっては、

予想ばかりを繰り返している。


すると、その後ろから

圭佑が声をかけてきた。


「いいや。

俺は出雲や全日本には出ないよ。

さっき辞退してきたんだ。」


「わーッ」と二年生達が

声を上げて驚く。


「いや、圭佑さん!

びっくりするじゃないですか!


でも何で?レギュラー陣と

同じくらい速いじゃないですか?」


後輩からの問いに

しばらく「んー。」と考えた後、

圭佑が話し始めた。


おそらく、

言葉を選んでいるのだろう。


「そりゃ、

来年の箱根駅伝は譲れないけど。


出雲と全日本は、

自分で手柄をあげて出場権を

得たわけじゃないからねー。


出雲駅伝は

今年の箱根駅伝で

シードを取ったチームが

出場できる大会だし、


全日本の予選会だって、

メンバーに選ばれてない。


棚ぼたみたいな形で

本戦だけ参加するのは

少し違うと思ったんだ。


うん。そうだなー。

一言にするなら、

『四年の意地』ってやつかな。」


それに対して、

二年生達が反論する。


「今年の箱根に出てないからって…。

そんなこと言ったら、

俺たちも出場する資格がないって

ことじゃないですか!?」


(そうゆうことじゃないんだけど

やっぱり言葉を選べてなかったかな。)

圭佑が困り顔をしている。


そこへ、

見かねた副キャプテンの蒼太が

話に割って入ってきた。


「確かに、圭佑の言ったとおり、

本戦前にしっかり活躍できなきゃ

レースには出られない。


そんなこと当たり前だけどな。


でも、圭佑は言ってただろ?

『四年の意地』があるって。


その意地っていうのは

プライドみたいなもんだ。


俺たち四年の意地プライドは、

三大駅伝に出ること以前に、

後輩おまえらをその駅伝大会に

連れて行くことなんだよ!」


更に、

キャプテンの涼介も現れる。


「だから、圭佑は後輩おまえらのために

出雲の残り一枠を辞退したんだ。


そして、後輩たちに

チャンスをやって欲しいって

櫛部川監督に頼み込んだんだのは

他ならぬ圭佑なんだぞ!


後輩おまえらの意地は何だ?

その一枠を!

もっと言えば、四年おれたちから

レギュラーを奪うことだろうが!


くだらねぇ予想してねーで、

今、自分がやるべきことを考えろ!」


二人の厳しい檄に、

二年生達の顔つきが変わった。


陸上競技場のトラックでは

三年の高砂、悠慎、拓生ヒロキが、

練習に励んでいる。

残りの一枠を勝ち取るために

彼らも必死なのだ!


「俺らも居残り練習やってきます!」

二年生全員がトラックへと駆け出した!




そして、これは

本編と別の話になるが、


蒼太たちの卒業後、

城西拓翼大学は箱根駅伝にて、

「シグナルレッドの快進撃」

と呼ばれる衝撃的な大旋風を

巻き起こすことになる。


その中心となったメンバーは、

あの時まだ二年生であった

彼らに他ならない。


また、

テレビや陸上雑誌からの取材で

この快進撃の要因を聞かれる度に、


「あの時の

涼介さんと蒼太さんの檄、

圭佑さんの想いがなければ、

今の俺たちは存在しません。


先輩方のアツい姿勢こころ

俺たちを変えてくれました!」


と語り、

その時の感謝の念を

生涯忘れることはなかったと云う。


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