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その感情には“色”がある  作者: 杜野秋人
【閑話集1】
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〖閑話3〗第三幕:新たな仲間(3)

「えー、それでだね。ミオとハクの加入に伴って、〖Muse!〗のチーム構成も再度変更されることになる」


 おっさん独り(おれ)を取り囲んでわいきゃいやってた少女たちが、所長のその一言で一斉に彼の方を見る。

 ん、まあそうだよね。一気にふたり増えて9人になるから、ふたりの所属をどうするか決めないと。レフトとライトにひとりずつ加えて四人組ふたつにするか、レイも含めて三人組(スリーマンセル)3チームにするか。


「やはり、そこは3チーム制かしら?」

「三人3チームってなると……ライト、レフト、センターって事になるかしらね?」

「そうですね、ライトとレフトで四人ずつっていうのも、なんというか収まりが悪いですし」


 まあ確かに、それだとレイが独りぼっちになるもんな。


「ん、まあ、3チームにするなら巡回にしてもアイドル業務にしても回しやすくはなると思います」

「そうですね、そうなれば皆さんのオフを増やす余裕も出てくるでしょうし」


 マネージャーとしての俺の意見を述べて、ナユタさんもそれに同意を示す。

 『オフ』と聞いて、アキの感情がハッキリ分かるほど食いついた。いやいや待て待て、お前の休みは特に増えねえからな?


「そこはまあ、君たちの意見も取り入れつつ……ということになるが。⸺今案の出た、『ライト、レフト、センター』の3チーム制ということで構わないかね?」


「俺はいいと思いますよ」


 レイたちの反応も見つつ俺が代表して返答する。彼女たちも頷いていて異論は特に出ない。


「ただ、各サイドのメンバー構成をどうするか考えないとですね」


 そう。現状のままでセンターサイドを新設するのは構わないんだけど、だからってレイにこのふたりをくっつけて終わり、とはならないわけで。

 なにしろ現状で、両サイドには明確なコンセプトが設定されている。レフトサイドは「正統派アイドルユニット」、ライトサイドは「実力派シンガーユニット」として組まれているのだ。

 そのライトサイドから中心だったレイが抜けるということで、新ライトサイドのコンセプトはまだ固まりきっていないのだ。何となく個人的には、サキも加わるということで「個性派アイドルユニット」かなあ、とは思ってはいるけれど。でも具体的にそれを提案したりはまだしていなかった。


「とりあえず、誰と組みたいとかの希望、ある?」


 だがまあそれはそれとして、こっちで上から組み合わせを押し付けるのもアレだし、まずはこの子たちの希望を聞いてみたい。

 すると、いの一番に手が上がったのは意外なことにミオだった。


「マスター、よろしいですか」

「あ、うん、そうだね。君たちのことは俺も分かってないから、積極的に教えてくれると助かるかな」

「希望を容れてもらえるのでしたら、私はユウと組みたいです」


「……ユウと?」

「まあ、わたしと組みたいだなんて。ありがとうございます」

「ユウは私たちfiguraが二派に別れる前から周囲に合わせるのが得意でしたから。それに今のお話ですと、組んだチームでアイドル活動も巡回もこなすということになりますよね?戦闘でもユウと組めるのなら戦いやすいので」


 なるほど、案外ちゃんと考えてるな。

 でも一応確認しとかないと。


「えーと、意地悪言うつもりは別にないんだけど、確か『ソラとしか組まない』って言ってなかったっけ?」


「…………そんな事まで憶えてるんですか。本当に記憶を失わないんですね貴方は」


 ミオはちょっと顔をしかめたけど、嫌がるような感情は出てこなかった。


「ソラと組みたいのは山々ですが、彼女はもう」

「OK、分かった。思い出させて悪かった」

「なっ、なんですかいきなり!?」


 でも話し出す前に別の感情が視えちゃって、それで詫びたら伝わらなかったみたいだ。


「ミオさん。マスターは人の感情を色として見ることができるんです」

「……は?」

「マスターの今の瞬発力からすると、ミオから“悲しみ”や“悔しさ”みたいな感情が出ていたんじゃないかしら?」


…だいたい正解。ていうか君たちからも出てるし。


「自分の感情をバラされるほど嫌なことはないだろうから、具体的には言わないけど、まあ⸺っていやいや、そんな全力で引かんでも」


 ミオは両腕で自分の肩を抱きしめて、壁際まで文字どおり引きまくった。


「なっ、何なんですか貴方は!?」


「…………あっそうか。こないだ来た時その話しなかったんだっけ」

「はい、聞いて、いないです」

「いや悪い悪い。俺、3年前ぐらいから人の感情が色として視えるようになっててさ」

「なっ、なっ……」

「だから今、ミオの感情も視えちゃったんだわ。それで察しちゃったから、そこはもう言わなくて大丈夫だから。⸺で、ユウもそこは察してやれるってことでいい?」

「はい、大丈夫です♪」

「ん。じゃあユウとミオは一旦ペアで。あともうひとり誰にするか、考えといて」


 と、ユウとミオはひとまずそれで()いておいて、所長とナユタさんに向き直る。


「チームのリーダーなんですけど、やっぱりMuse!の最初の3人がいいと思うんですよね」

「ふむ。まあ妥当だろうね」

「はい、異論ありません」


「じゃ、所長たちの承認も得られたってことで、センターのリーダーはレイね」

「ええ、分かったわ」

「んでレフトはそのままユウで。だからミオはレフトサイドね」

「はい、分かりました♪」

「…………分かりました、問題ありません」


…なんかユウ、さっきから楽しそうね?


 ミオは……まだ感情視られたショックから抜けてないなあ。


「んでライトは元々昇格予定だったし、リンってことで」

「ん、分かったわ。予定通りってことね」


「マスター、ちょっといいかしら」

「ん、どうしたレイ」

「私、最年少のふたりを引き受けようかと思うの」


 最年少……っていうと14歳のサキと15歳のマイってことか。

 レイって最年長の19歳だったよな?


「そのこころは?」


「マスターも知っていると思うけれど、私がこの中で⸺ミオやハクまで含めて最年長なの。そしてマイは加入したばかり、サキはその次に加入が新しくてまだ半年と少ししか経っていないわ」


 うん、そうだね。

 まあサキがちょっと不満そうな顔してるけどな。


「だからこれを機に、私がもう一度ふたりを鍛えようかと思うの。アイドルとしてもfiguraとしても、ね」


「なるほど。レイの考えは分かったよ」


 ただ、そうなるとコンセプトをどうするかって問題があるな。レイはアイドルとして全てにおいて高い次元をキープしてるけど、サキは歌唱もダンスも比較的平均レベルで、マイは歌唱の評価はなかなか良いけどダンスがまだダメだから、歌もダンスも売りにはならない。


「んー、でも、ちょっとそれキープでいい?」

「ええ、構わないわ。最終的に決めるのは所長の判断になるでしょうし、今のはあくまでも私の希望だから」


「リンは、アキと組みたいんだろ?」

「アタシ?アタシは……まあ、そうね」

「あぁ?まぁたオメーと組むのかよ」

「元から組んでるし、新ライトサイドでも一緒の予定だったじゃない!なんで嫌がんのよ!」

「はいはい。アキの希望は却下ね」

「なんでだよ!」


…それは君がサボり魔でトラブルメーカーだから。


「ハルは?」

「ん〜、ハルはねえ、誰でもいいけど……レイちゃんと一緒がいいかなあ」

「あら、ありがとうハル」


 えー、ハルってアキとは組みたくないのか。一応双子って聞いてるんだけど、そういやあんま仲良くしてんの見たことねえな。


…と、感情を覗いた兄さんが申しております。


 いや解説すんな。


「…………ふむ。相変わらず見事にバラバラだねえ君たちは」


 腕組みして顎に手を当て、何やら思案顔の所長。


「では、そうだな。一旦全員の歌唱とダンスのテストをして、相性なども確認してから決めるとしようか」

「あー、それもそうですね」


 コンセプト決めなんかもあるし、確かにその方がいいかもな。


「異論ある人?」

「私はそれで構わないわ」

「はい、私も問題ありません♪」

「そうね、その方がスッキリ決まって良いかも」


 リーダー3人の同意を得て、その場は一旦解散となった。もう普段の夕食の時間過ぎちゃってるし、ひとまず晩ごはんだな。






3チームのメンバーをどう組むか、実はまだ決まってません(爆)。なんか“元通り”になりそうな気しかしない……!


〖閑話3〗は次回で終わりです。年明けからは新章開始で。

ということで次回更新は30日、晦日になります。

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