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その感情には“色”がある  作者: 杜野秋人
【閑話集1】
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〖閑話3〗第一幕:新たな仲間(1)

〖閑話集〗の3話目です。全四幕。

〖閑話2〗は前回までですスイマセン(汗)。

 緊急招集で集められた地下の作戦指令室。夕方にみんなが収録や巡回などから戻ってきて、夕食までちょっとシミュレーター回すか……なんて話し合ってたら全員揃って呼び出しを食らったわけだ。

 いやあのポンコツAIバトルがどういう事なのか、ちょっと問い質したかったんだけど……まあ後回しだな、仕方ない。

 ちなみに俺は立ってるのが辛いだろうと、ひとりだけ椅子を勧められて座っている。まあこのギプス重いし正直なところ有り難い。


 で、今指令室に集まってるのは所長とナユタさんとマイたちfigura7人と俺と、あと……。


「えー、急なことで済まないが」


 話し始める所長の顔がなんだか憔悴している。ここ最近はデキるイケオジモードが多かったのに、今日はすっかりポンコツダメオヤジ風味だ。

 なんでかって言うと、彼の隣に立つふたり(・・・)が原因だろうなあ。


「このたび新しく“仲間”が加わることになった」


 そう。所長の隣にふたりの少女が並んで立っていたのだ。


「初期組の3人には説明の必要はないと思うが、新たに〖Muse!〗に加入するミオとハクだ。みんな、仲良くしてやってくれ」

「ミオと言います、よろしく。アイドルとしてはともかく、対オルクス戦闘に関しては私は誰にも負けないし、私が加入するからには今までのようなヌルい戦闘は認めないので、そのつもりで」

「……ハク、です。よろしく、です」


 いやもうミオとハクの温度差ね。

 ミオはまあ、こないだの印象からも勝ち気で突っかかってくる雰囲気があったんだけど、こうもあからさまに敵意……敵意っつうとアレか。対抗意識出されちゃあ先が思いやられるというか。

 ハクはハクで、どう見たって知らない人たちの前に突き出された人見知り少女だし。モジモジしてオドオドして、ちょっと俯いて上目遣い……いや可愛いけどね!?


 そして唖然とする〖Muse!〗の7人……いやこの場合は〖MUSE〗のほうが適切かなあ?

 ユウ、リン、レイの古参組はまさしく唖然と、ハルとアキは若干戸惑い気味、そしてサキとマイはあんまりよく意味が分かってないっぽい。


「ちょっ、え、どういうこと?なんで今さらアンタたち……」

「一緒に戦ってくれるというのなら心強いし、私は前から貴女たちふたりともアイドルとして高いポテンシャルを秘めていると思ってはいたけれど……」


 リンとレイが混乱しつつも見解を述べ……いやリンは混乱してるだけだな。


「あー、まあ。今回の異動はふたりの強い希望によるものでね……」

「……もしかして、先日の私たちの失態(・・)を見たから……ですか、ミオさん」


 話し始めた所長の言葉を遮るような形で、ユウが口を開く。

 まあ、状況的にそういう判断になるよなあ。


「それも理由のひとつだけれど。⸺でも、決め手になったのは」


 ミオはそこまでで言葉を切ると、真っ直ぐに俺の方を見た。


「貴方に興味が湧きました。以後よろしくお願いします、マスター(・・・・)


 そしてそうハッキリと、宣言したのだった。




  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆




「ええと、まあその、なんというか」


 全員に視線を向けられて、どういうことだと無言で問い詰められて、これはもう俺が説明しないとダメな雰囲気だ。

 ミオはあれきり何も言わないし、ハクはモジモジオドオドしてるし、所長はポンコツのままだし。


「ほら、あの日さ、俺が負傷してホスピタルに収容された日の、次の晩のことなんだけどさ」


 なんて説明していいやらまとまらないままに、口を開くしかない。だってみんなの圧がすごいんだもん。ていうかfiguraのみんなだけじゃなくて所長まで混乱してるし。アンタ何も知らなかったのかよ!?


「あの次の日……って、アタシたちがみんなしてお見舞いに顔出してた、あの日よね?」

「あーっ、ハルがマスターを中庭へ連れてこうとしてダメって言われた日!」

「待てハル、お前そんな事したのか」

「所長、大丈夫よ。私たちみんなで止めたから」


「そうそう、その日。その晩にさ、このふたり俺に会いに来たんだよね」

「ハァ!?」

「えっ、ミオたちが……ホスピタルにやって来たというの?」

「……まあ。気付きませんでした」


「うん、まあ、ユウはあの日1日面会謝絶で部屋からも出てこなかったしな。⸺で、俺の“能力”のことを話したんだよ。てっきりふたりとも、所長から話聞いたから会いに来たんだと思ったし」

「マスターの能力って……あの『鍵』のこと?」

「そう。それとオルクスに攻撃されても感情や記憶を失わないってこともね」

「待て待て、私にはそんな報告は上がってないぞ」


「やっぱ知らんかったんかい」


 いやだから顔逸らすんじゃねぇよポンコツダメオヤジ!


「けど、所長が知らないっていうんなら……」


「…………そうですね。私が手配しました」


 まあ、ナユタさんしかいないよね。あの部屋モニタリングされてたし、このふたりは〖MUSEUM〗の所属じゃないし、侵入者(・・・)がいるのになんの反応もなかったって事は、許可を得た上で来てた、ってことだもんな。


「ふたりから……特にミオちゃんから説明を求められたんです。なぜあんな部外者(・・・)を連れて戦場に向かうのか、戦えもしない足手まといをわざわざ庇ったりして、ユウは何を考えているのか、って」


「それで、そんなに気になるのなら直接話を聞けばいい……と?」

「ええ、まあ、そういう感じです。一応、マスターの存在は本隊の方でも情報共有はしていたんですけど、納得いかなかったみたいで」

「それならそれで、何故報告を」

「ミオちゃんたちは本隊所属、形の上でこそ司令の支配下ですけど実際は……」


 ナユタさんは皆まで言わなかった。だがそれで所長が押し黙ったということは、報告する先が別に(・・)()()ということなんだろう。

 えーなんかそういう組織の複雑な力関係とか、極力関わりたくない案件なんですけどぉ?






ようやく例の2人が合流して9人になりましたε-(´∀`*)ホッ



お読み頂きありがとうございます。

次回更新は20日になります。

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