表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その感情には“色”がある  作者: 杜野秋人
【閑話集1】
71/185

〖閑話2〗第三幕:アフェクトス収集クエスト実装(2)

 ホスピタルから上に戻ったら、もう昼前になっていた。そろそろ昼飯かあ。


…うーん、この生活太りそうだよね。


 と、ここでリンとアキがリビングに戻ってきた。


「マスターお疲れ!ちゃんと留守番して……って、アンタ右手出てる!?」

「リンお帰り。さっきまでホスピタル行っててさ。右手の手首から先はリハビリのために積極的に使えってさ」

「ふーん、そうなんだ。でも結局肘が動かせないんじゃあんまり意味なくない?」

「まあね。でも指を自由に動かせるようになっただけでもだいぶマシだな」

「あはっ、それは言えてるかもね☆」

「おいマスター。なんか治るの早くねえか?」

「んー、そんなに早いとは感じんけど。でもまあ、ちょっと急かされてる感はなくもないかな」


 ここは黙ってホスピタルのせいにしとくか。濡れ衣だけど誰も困らないし。


「……そんなんで大丈夫なのかよ」

「まあそれは、ホスピタルの先生の判断だしな。今回右手が出たのも、指動かしてリハビリしろって意味だから」


「マスター!またギプス軽くなったのね!」

「お帰りレイ。でもまだ肘も動かせないからなあ」

「それでも一歩前進よ。やったじゃない!」

「前進なのは良いことですが、ちょっと拙速に過ぎませんか?」

「うん、まあ、サキが言うとおり中途半端で復帰したって迷惑だからな。しっかりリハビリしてきちんと治すから心配すんな」

「なっ……!なんでそれを……!?」


 なんで、って。公式アカウントにメンバーの個人アカウントがリプしてたら普通は見るだろ。


「あれはマスターに向けてじゃなく、ウチの下僕たちに向けたもので……!」

「公式アカ管理してるの俺だからな?」

「わ、分かってますよ!」

「ま、サキの言うことは正論だし別に気にしてねえよ。だからそんなビクビクすんな」

「しっしてませんよ失礼な!」


「ハルが思うに、サキちゃん絶対マスターに見られる前提でアレ書いたと思うなぁ」

「ハルさん、しーっですよ。サキさんはマスターに構ってほしいんですから」

「ふふっ。サキちゃんもマスターが大好きなんですね!」


「……そこ!なんかまた勝手なこと言って勝手に納得してるでしょう!?」


 なーんて、サキをからかってる間に全員が戻ってきていた。

 マイとユウが調理師さんの作ってくれてる昼食を全員分よそって、食卓に次々と並べてゆく。


「では、全員で手洗い、うがいを済ませてからお昼を頂きましょう」


 と並べ終えた段階でユウの号令。おお、そうか、右手が自由になったから手が洗えるな…………とか思ったけど、肘が動かないから結局蛇口に届かねえし。

 仕方ないからリンに洗ってもらおう。


 ……え、なに?恥ずい?なんで?

 じゃあレイ、頼める?


「わ、私も、男の人の手を揉むのはちょっと……」

「いや揉むんじゃなくて洗って欲しいんだけど」


 じゃあ、サキは?


「てっ、手ぐらい自分で洗って下さい!」

「洗えねえから頼んでんだろ!」


「マスター。私、やりますよ」

「あ、ユウ。悪いね、頼むよ」


 何だよみんなして恥ずかしがって。いいじゃん手を洗うくらいさあ!


…兄さんは、もうちょっと乙女心ってものを勉強した方がいいと思うなあ。




  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆




 昼食を食べ終えたあとはユウの淹れたお茶で一服して談笑して、それからまた各々連れ立って午後の仕事に出かけて行った。具体的にどこに行くのかはやっぱり教えてくれなかった。

 大丈夫だって。ちゃんと自重するってば。

 それにしても、みんな基本的にパレスに戻ってきて全員でお昼食べようとするんだよね。まあ調理師さんに栄養管理してもらってるってのもあるんだろうけど、なんだかんだと仲いいんだよな。



 ふたたび独りきりになって手持ち無沙汰なので、シミュレーションルームでのスコアの確認をもう少し詳しくやることにする。全員出て行ったということは、今日の日中はシミュレーターは休ませられるということだ。だったら、データの参照ぐらいなら大丈夫だろう。

 ということで早速シミュレーションルームに足を運んで、シミュレーターを立ち上げて戦闘記録を開く。リプレイを表示して、みんながどういう戦い方をしてるのか再度チェック。


 んー、魔術(スキル)の使用順とか、もう少し練り込めるんじゃないか?まだまだ戦術訓練の余地がありそうな気がするな。ハルなんてほぼ肉弾戦しかやってないし。体力オバケなのはよく分かったから、もう少し駆け引き的なものを身につけさせないとな。

 つうかアキとかほとんどインしてないじゃん。アイツ実戦は大好きなくせに、なんでかシミュレーターは嫌がるんだよな。解せぬ。

 あとここ数日になってレイとリンが“舞台(スケーナ)”を担当する回数が増えてるな。これは多分、指揮の練習も兼ねてるんだろう。


 続いてシャドウバトルという項目を選択。初めて見るコマンドだ。

 タップすると、シミュレーションルームのフィールド上にfiguraたちが忽然と現れた。選んでないのにユウ、リン、レイの3人なのは、多分これがデフォルト状態ってことだろう。


 あー、これ、figura本人がその場に居なくてもシミュレーション出来るようになってるのか。多分あれだな、たまにユウとかレイとかがひとりでやってるの、これなんだろうな。


 ひとまず『AUTO』を選択。これを選ぶと最低限の属性やfiguraの選択をするだけで、ランダムで戦闘に出る3人の戦闘衣装(ドレス)が選ばれる。ってことでホログラム再現で、画面の中とフィールド上にサキ、ユウ、マイが現れた。

 この3人を選んだのに理由は特にない。適当だ。

 しかしすごいな。ちゃんとドレスも着てるし、これはすごい便利。……ってかこれどういう仕組みになってんの?フィールド上の3人って本人が実際にそこにいるようにしか見えないんだけど!?


 まあ、細かいことは置いといてフルオートモードを選択。これで自分で指示・操作しなくてもAIが勝手にバトルやってくれる。つうか今は左手しか使えないし、細かいコマンド操作とかできないしね。


 あっ!そのスキルは先に撃ってユウ!

 マイ、入れ替り攻撃(スイッチ)で積極的に前に出なって!

 サキ!攻撃の後はちゃんとスキル撃って!


 ダメだ。このAI死んでる……。

 えっ待ってこれシミュレーションバトルの学習機能で構築したAIよね?あの子たちこんな雑なバトルしてんの?

 マジで?実戦ではちゃんと出来てるのに……?


 って、そういや俺のいる実戦は俺が指示してるんだったわ……。俺が居ないとこんなモンなのか?


 気を取り直してふたたび『AUTO』を選択。そしてフルオート。現れたのはリン、ユウ、そしてレイ。今度は初期組の3人だ。

 こっちはより酷いわ……チームワークなんて言葉は辞書にねえのかよ!これはリン相当苦労してんだろうな……。

 まあ、バトルの記録はもういいや。


 次に『データ』の項目を選んで、全員の戦闘衣装(ドレス)の一覧を表示してみる。属性やfiguraごとにソート出来るようになってて便利。

 ああそっか、これデータベースとしての機能もあるんだな。


 全体的な印象として、選べる戦闘衣装が少ないなというのが正直な感想だ。使い物になりそうなものが限られていて、大半は初期の頃のものだろうけど、機能やセットされてる魔術(スキル)が少なくて使い勝手の悪そうな戦闘衣装が多い感じ。

 普段から俺もよく頼りがちな衣装、〖魔術武装〗とか〖殲滅武装〗とかがやっぱり強力。最新の〖オールナイトダンス〗も使い勝手は良さそうだ。でも、もっと衣装は増えて欲しいところ。…………これ、もしかして俺がもっとアフェクトスを注入してメモリアクリスタルを量産しないとダメってことか?


 いやいや、まさかね。メモリアクリスタルならライブでも精製できるんだし。ねえ?



 ひと通りチェックし終えて、ログアウト処理をする。コントロールパネルのモニターがゆっくりとブラックアウトしてゆき、それと同時にシミュレーションルームの景色もさっきまでの“舞台(スケーナ)”の輝く虹色ではなく無機質の、飾り気の何もないがらんどうの部屋に戻る。このモニター、いきなりブツンと切れるんじゃなくて時間かけて消えるあたり、なかなかいいモニター使ってんな。

 椅子ごとくるりと回転して、なんとなくシミュレーションルームを見渡す。すると、何もないと思ってた部屋の隅に、バーチャルゲームで使うみたいなボックスシートが二脚あることに気がついた。


「あれ、なんに使うんだろ……?」


 少なくとも普段誰かがアレを使ってるのは見たことがない。所長からも、ナユタさんからも説明を受けた記憶もない。もちろん最初のレクチャーでも何も触れられていなかった。

 だとすれば、今はもう使ってない機材って事になるのかな。シミュレーションルームには準備室とか機材室みたいなものはないから、とりあえず邪魔にならないように隅っこに置いてる……とか?


 一応近寄って確かめてみたけど、やっぱりよく分からん。使用禁止とかの張り紙はないから、壊れてるわけじゃなさそうだ。ホコリが被ってないところを見ると、アインスあたりがマメに掃除してるのかも。

 まあ、分からんものを現時点で云々したってしょうがないな。あとでナユタさんにでも聞いてみようかな。






スマホゲームのオートバトルって、なんでかポンコツだよねえ……っていうね!(笑)



お読み頂きありがとうございます。

次回更新は15日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おかげ様で拙著『公女が死んだ、その後のこと』が好評発売中です!

『公女が死んだ、その後のこと』
『公女が死んだ、その後のこと』

画像クリックでレジーナブックスの新刊案内(本書特設ページ)に遷移します。
ISBN:978-4-434-35030-6
発売日:2025年1月31日
発行日:2025年2月5日
定価:税込み1430円(税抜き1300円)
※電子書籍も同額


アルファポリスのサイト&アプリにてレンタル購読、およびピッコマ様にて話読み(短く区切った短話ごとに購入できる電書システム)も好評稼働中!


今回の書籍化は前半部分(転生したアナスタシアがマケダニア王国に出発するまで)で、売り上げ次第で本編の残りも書籍化されます!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ