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その感情には“色”がある  作者: 杜野秋人
【はじまりの1週間】
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第二十七幕:先々を見据えた布石(1)

タイトルに色がついてないけど誤りではありません。

今後もたまにそういう回が出てきます。



 それから少し時は過ぎて、13時少し前。

 俺とレイ、ハル、サキ、それにマイの5人で事務所に集合した。これから午後の巡回だ。


「じゃあ、行こうか」

「ええ。行きましょう、マスター」

「はい!よろしくお願いします!」


 マイもすっかり元気回復したみたいで何より。



 再び電車で移動して、渋谷駅で降りる。午前中と変わらずスクランブル交差点は黒山の人だかり。

 さすがに世界的に有名なだけのことはある。


「午後は道玄坂の方を歩いてみようか」

「ええ、そうしましょう」


 渋谷駅から少し離れて道玄坂方面に向かう。こちらも駅前と同じくショップやカフェなどが多く観光客に人気のスポットで、人通りが多い。

 人通りが多いってことは、ファンも多いわけで。


「あっレイ様!」

「ハル隊長!」

「姫のお出ましだ!」

「えっ、えっ?えっ!?」


 レイ……様?

 いやまあ、分かるよ。分かるけども。


 ていうか隊長って言った今?

 あと姫って……誰?


--謎すぎてマイがビックリしてんじゃん。


「姫というのはサキのことよ。彼女の個人ファンクラブのメンバーは、“サキ姫の下僕たち”と呼ばれているわ」

「……まあ、私が名付けたわけじゃありませんけどね」


 サキ姫……の下僕たち……?

 そ、それはまた……


「なっ、何です!いいじゃないですか!」


…いやまだ何も言ってないけど。


 とか何とかやってる間に、興奮するファンたちに周りを囲まれてしまう。


「お黙り!」


 いや、サキの一声でレイやハルのファンまで大人しくなるのかよ!?


「ふふ。皆、統率が取れていて美しいわ」

「我ら“レイ親衛騎士団”、全てはレイ様の御心のままに!」

「よぉーし!“地球防衛隊”、せいれーつ!」

「うおおおお!隊長の号令だ!」

「本日は道玄坂のパトロールでありますか!」

「皆の者。出迎えご苦労」

「はっ!我々下僕一同、いついかなる時も姫の御側に!」


 いやもう、何というか。ただでさえこの3人(レイとハルとサキ)はみんなキャラが濃いと思ってたけど、ファンの方が3割増しで濃いって凄いな。


「……マネージャー?ぼうっとしてないで、写真を撮って下さらない?」

「あっハイ」

「むむ、あれが新しい“お付きの従者”か……」


 って誰が従者やねん。


 ⸺いや、従者だな。合ってたわ。


「こっちもこっちも~!みんなと写真~!」

「副隊長が写真を撮って下さるぞ!」


 いや副隊長ちゃうっちゅうねん。


「執事に命じます。可及的速やかに写真撮影を」


 てかいつの間に執事になったんや俺。



 結局、リンやアキの時以上に揉みくちゃにされ、時間も取られてしまった。マネージャーとしてはほぼ無力だったと言っていい。

 ていうか濃すぎだってば君らのファンは。そもそも君らが率先してファンを先導してるフシがあるよね?


「マスター、顔が疲れてるよ?」


 いや誰のせいだよ。てかマスターって言うなってば。


「ハル、外では『マネージャー』だと言ったでしょう?」

「あっ、そっか。ごめんねマスター」

「ほら、また」


 もうツッコむ元気もありません……。

 むしろ早くオルクス出てきて欲しいんですけど。


ピピッ。


『マスター。今は道玄坂方面に向かってますか?』

「はい。早速ファンの人たちに揉みくちゃにされましたね……」

『あー、バイタル低下してるのはそのせいですか。お三方のファンの皆さん、濃いですからね……』


 いやもうホントそれ。


「あら。美しい、と言って欲しいわ」


 レイが少しむっとして言う。

 あれを濃いと思ってないあたり、君もなかなかやぞ。


『道玄坂方面ですと、もう少し先まで行けば大きなコンサートホールがありますね。マイちゃんの御披露目ライブをそこで予定しています。ついでですから、外観だけでも見てきたらいかがです?』

「そうなんですか。じゃあ行ってみようか、マイ」

「はわわ……い、今から緊張します……」


 レイとサキが道が分かるというので、言われるままついて行く。

 行ったはいいけれど。


「…………いや、デカくない!?」


 道の向こうに見えてきたのは、一見して全容が見えないほど巨大な建物。1周年記念ライブと同規模のライブが出来るんじゃないか、これ。こんな場所でやるライブを、本当に裏から仕切れるんだろうか。

 よくよく聞いたら、イベントホールだけでなく図書館や会議室など多くの施設が入居している複合文化施設なのだとか。そりゃ大きいはずだ。


「ここは昔ライブでお世話になった事があるわ。

ふふ、懐かしいわね。あの頃を思い出すわ」

「まあその頃のことは私は知りませんけどね」


「ハルは~、う~ん、どうだったかなあ?」

「ハルさんだって知らないはずですよ。加入は私とそんなに変わらないんですから」


 そういえば、この3人って年齢の差が激しいんだよね。

 レイは19歳で、ハルが16歳。サキは最年少の14歳だ。そしてレイは初期メンバーだけど、ハルとアキ、それにサキはマイの次に新しいメンバーになる。

 まあ新しいと言っても、彼女たちが加入してもう半年以上は経ってるんだけど。


 Muse!で一番長いのはユウ、次いでリン、それからレイ。最初はその3人でMuse!を立ち上げて、それからハルとアキが加入して、最後にサキという順番。そしてマイが加入して今度から7人体制になるわけだ。



「ハルとアキ、それにサキもだけれど、今のマイと同じで『研修生』という形で先に存在を公表していたの。サキが入った事で6人になったから、その時点でチーム制に移行したのよ」

「あー、それでレフトとライトになったのか」

「ええ。チームで対抗させたほうがメンバー同士の切磋琢磨にも繋がるし、ファンの子たちもひいきのチームを作れば応援にも熱が入るから」


 学校の運動会の組分けの原理だな。


「さて、会場も見たことだし、次はどうしようか」


 と、その時ふと、今度のライブの主役が一緒にいるのを思い出した。

 でもその割にはずいぶん静かだな。絶対大騒ぎしそうだと思ったのに。


「……ところで、マイさん固まってますけどいいんですか?」

「え?」


 サキの声に思わず振り返ると、巨大な建物を見上げたまま、マイが気絶していた。


「あらあら。今からそんな事では、先が思いやられるわね」


 いやレイ、そこ笑うところと違うから。






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