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その感情には“色”がある  作者: 杜野秋人
【閑話集2】
176/185

〖閑話5〗第三幕:女神たちの水着(3)

「……ねえマスター。私の気のせいならいいんだけど、貴方少し、いつもと雰囲気違わない?」


 あ、やべ。

 悠が表に出てたこと、レイにバレてるな。


「軽薄、と言ったら言い過ぎかも知れないけれど。全体的に軽いというか、その……上手く言い表せないのだけれど」

「それは私も感じました。今のマスター、少しいつもと雰囲気違いましたよね。それにいつもは『僕』なんて仰らないのに……」


 ぶはははは。

 おい悠、軽薄って言われてんぞ。


…ちっ違うよ誤解だってレイ!ユウも!

そんな可愛い姿見せられたら、誰だってテンション上がるじゃん!


--悠兄さあ、いい加減自分のキモさを自覚した方がいいよ?


…いやホントひどいなハルカ!?


「ん?いや、俺はいつも通りだよ?リンが褒めろ褒めろって言うからちょっと多めに褒めただけでさ」

「……本当に?だったら、いいのだけれど……」

「あ、アタシのせいだって言うわけ!?アンタが褒めないのが悪いんでしょお!?」

「私のことは相変わらずスルーですか!——ってだから頭撫でるなぁ!」

「はいはい、サキちゃん可愛い可愛い」

「褒め方が!雑!」

「わはははは」


「……確かに、もういつものマスターの雰囲気ね。やっぱり私の気のせいだったのかしら……」


 レイがまだ考え込んでるけど、何とかごまかせたかな。


「いやでも実際、サキの水着もよく似合ってると思うぞ?お前あんまり肌露出するの好きじゃないだろうし、かと言ってワンピースタイプは子供っぽくて嫌だ……とかってアンケートに書いたんだろ?」

「なっ……!み、見たんですか!?」

「見てねえよ。つうかアンケート取られてた事すら初めて知ったわ」

「ふふ。サキさん、マスターはサキさんのことも普段からよく見ていて下さってる、ということだと思いますよ?」

「う、くく、うぐぐぐ…………」


 サキは顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。嬉しいなら嬉しいで、素直にそう言えばいいのに。


「う、嬉しくなんかありませんよ!私はリンさんみたいにチョロくありませんからね!」

「ちょ、誰がチョロいっていうのよ!?」


 いや、レイもユウも深く頷いてるけどな?


「それにしてもマスター」

「ん?どうしたミオ」

「デビューもまだの私やハクにまで用意されたというのは……その」


 あー、まだメンバーに入った実感に乏しいのかなミオは。


「確かにデビューはまだだけどさ。もう開発ベースでは君たち9人体制で動いてるってことだよ」

「それは、早くデビューしろということ……でしょうか」

「そうじゃねえよ。これはただの水着だけど、同時に戦闘衣装(ドレス)でもあるんだ。もうミオもハクも巡回デビューしてるだろ?だからちゃんとみんなと同じようにドレスも用意してもらえるし、これ着て戦っていいってことだよ」


 そう言ってタブレットで戦闘指示プログラムを立ち上げて、スペックデータをミオに見せてやった。

 この水着も他のドレスと同じく魔術(スキル)スロットをふたつに“武装魔術(マグヌム・オプス)”まで備えた、ちゃんとした戦闘衣装なのだと理解したようで、ミオの目の色が変わる。

 ホントこの子、戦闘に特化してんなあ。早くアイドルとしても馴染んでくれねえかな。


「あら、本当ね。スキルがセットされているわ」

「へー。まあメモリアクリスタルで作ったのなら、当然そうなるわよね……」

「ですが、これで戦うというのは……少々恥ずかしいですね……」


 レイとリン、それにユウも寄ってきてタブレットを覗き込む。

 いや、水着のままそんな近寄られても困るっつうか。うっかり当たりでもしたら、またサキに怒られそうだ。今だって後ろで赤黒いアフェクトス出したまんまだし。


「大丈夫大丈夫、戦闘中は“舞台(スケーナ)”で隠されるから、人目には触れないし思う存分戦闘できるぞ」

「まっ、マスターの!変態!」


 サキは両手で自分の肩を抱いて、壁際まで下がってしまった。いやいやそんな物理的に引かんでも。


「自分だけ堪能しようとしてるこの人!最っ低!!」

「うわ……コイツ、ガチだぞ」

「ふええ……マスター変態さんなんだぁ……」


 おいおいアキとハルまで引いちゃったかよ。


「まあ、さすがにTPOってものもあるしな。基本的には街中で意味もなく水着着せることはない、って約束するよ」


 とはいえ、戦術的に選択することは充分あり得るけどね!なんと言っても最新のドレスだしな!


「こんなもの、TPOって言っても一体どこで着るチャンスがあるって言うんですか!」

「そりゃあ、浜辺にオルクスが出たりとか?」

「今の巡回地区は渋谷だろ?海ねえじゃねえか」

「じゃあプールとか?」

「学校のプール以外はほとんど屋内プールじゃーん」


 おお、ハルよく知ってんな。でもオルクスはどこにでも出るからな?


「あとナユタさんが言ってたけど、そのうちグラビアの仕事とか受けるかも、ってさ」


 そう言った途端に、リンやユウまで引いてしまった。いやいやそこは仕事なんだから割り切ろうな?


「それはそうとレイ」

「何かしら?」

「ミオとハクのレッスン、進捗どんな感じ?」


 ふたりが正式に合流してからもう半月になる。現状はまだ研修生の扱いではあるけども、全くのド素人だったマイがデビューまで約2週間だったことを考えても、そろそろ形になっててもおかしくはないはず。


「順調に進んでいるわよ」

「デビューさせても問題なさそう?」

「それは……もうひと頑張り、といったところかしらね」


 ミオの表情がわずかに固くなる。この感情(はんのう)は……自分でもまだ足らないって自覚してるんだろうな。


「予定されてる浄化(フェブルア)ライブまでに間に合いそう?」


 まあ現状で開催がいつになるかは俺もまだ正式に聞かされていないから、そんな事を聞かれても困ってしまうだろうけど。


「…………そうね、浄化ライブに合わせた全体練習ももう始めるべき頃合いね」


「……ん?」

「……えっ?」


 ミオとふたりしてちょっと間抜けな声が出てしまった。えっレイ日程聞いてるの!?


「正式に聞かされてはいないわね。だけど学生のファンのことを考えれば夏休み中に、社会人のファンの動向も踏まえればお盆の休みに開催するのが妥当ではないかしら?」


 いやそうだけど!

 それだともうチケット販売始めなきゃアウトじゃん!うわあナユタさんに確認しなきゃ!


『開催は8月13日の日曜日、チケットの販売は8月1日正午スタートですね』


…うわあガチでそうじゃん!レイの先読み大当たりだよ!


『それにしても、どなたから聞いたんですか?ついさっき正式に決まったばかりなんですが』

「いや、レイが多分そうじゃないかって……」

『あら。さすがはレイちゃん、タイムスケジュールをよく分かっていますね!』


 結局その後インカム越しにナユタさんとも協議して、ミオとハクのデビューを浄化ライブに合わせる方向で話が決まった。具体的に話が決まったことで、ミオの目にも力が籠もる。

 てか待てよ?8月って確か……


「おい待てアキ、どこ行くんだ?」

「……ギクッ!」

「逃げようったってそうはいかねえぞ。今日はこれから早速レッスン入ってもらうからな!」

「い、やだよオレPC点けっぱなしなんだよ!」

「知るか。どうせ電気代払うのパレスなんだから、構うもんか」

「そ、それにホラ、トレーニングウェアにも着替えてこねえとよ!」

「そんなもんそこのロッカーに用意してあるだろ」

「くっ……」

「諦めろ。そしてミオとハクのデビューなんだから手抜きとか許さねぇからな?」

「おっ鬼かテメー!」


「あらあら。マスターがすっかり本気ですね……」

「ああなったら逃げられないって、いい加減アキちゃんも分かってるはずだけどなあ……」

「マスターはただの変態ですが、マネージャーとしては有能ですからね」

「よーし!そうと決まったら、やるわよー!」

「ふふ。みんな、最高のライブにするわよ!」

「はい!わたし、頑張ります!」

「わたしも、頑張り、ます……」


 アキ以外はみんなやる気になったようだ。てかサキ、そろそろ変態扱いやめてくんないかなあ?






いつもお読み頂きありがとうございます。

次回更新は30日です。

〖閑話5〗は次回で終了です。

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