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その感情には“色”がある  作者: 杜野秋人
【マイのデビューライブ】
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第六幕:全体レッスン

 19日、水曜日。

 今日はアイドル業務は午前中だけで、午後は全体レッスンの予定になっている。前回はライトサイドのみのミニライブで、レフトサイドとマイは途中に挟んだトークMCの時だけ登壇した形だったが、今回は全体(フル)ライブだから〖Muse!〗全員参加のステージとなる。

 そう。いよいよ、マイを含めた新生Muse!が7人揃い踏みするわけだ。

 そう考えると、なんか緊張してきた。全体ライブは6月の1周年記念ライブ以来で、あの頃はまだ6人だったし俺は客席側だった。それが1ヶ月もしないのに興行(ステージ)側に立ってるなんて、ぶっちゃけ想像もしなかったもんな。



 いつものようにみんながそれぞれ出かけていく。今日の巡回はライブの街宣も兼ねて新レフトサイドのユウ、ハル、マイ。新ライトサイドのリンとアキとサキは朝からMVの撮影があり、レイはミオとハクのレッスンに付き合う予定だ。

 俺は彼女たちを見送ったあと、これもいつものようにナユタさんに後を任せてホスピタルへ。テーピングが外れないうちはホスピタルへ行く直前でなければ風呂に入れないため、なるべくなら毎日行っておきたいところ。

 リハビリは順調で、このまま行けば金曜にはテーピングも外せるだろうとササクラ先生から告げられる。予定より治りが早いのはありがたい。元々は今度のライブまでにギプスが外れるかどうか、という状況だった事を考えればかなり早い。


…ま、僕もまだまだ若いって事かな。


 早めにリハビリも終えられたので、事務所には10時半過ぎには戻る事ができた。すると戻って早々にナユタさんに事前挨拶するよう指示されたので、今度のライブ会場へ向かった。明日には機材の搬入とセッティングが待っているので、その点もよろしくお願いしておいて、ステージの下見をさせてもらった。

 やっぱり思った通り、会場はかなり大きなホールだった。マイが卒倒する姿が今から目に浮かぶ。でも、これが満員になるって考えただけで俺も卒倒しそうだ。負傷した影響でナユタさんがほとんど段取りを組んだのだから万が一にも失敗はないとは思うけど、それでもめっちゃ緊張する。


 支配人さん以下スタッフさんにお礼を言って退出する。さて、付近で巡回しているはずのレフトサイドを拾って帰るとするかな。

 そう思ってユウに連絡を入れると、首都高の南側にいるとのことなので、待ち合わせ場所を決めてサクッと合流した。


…ん?マイなんか疲れてない?


「マイさん、“お掃除し隊”さんたちに囲まれて、ファンサービスにてんてこ舞いでしたから」

「はうぅ……つ、疲れましたぁ~」


 ああ、そういう事か。

 じゃあ街宣大成功じゃん。


「討伐の方は?」

「今日はまだ出ないねぇ〜。出たらハルがブンッてやってバーンてして、ドッカーン!って片付けるんだけどねぇ〜」


 うん、ハル。ひとつも分からんな!


「んまあ、出ないんならそれに越したことないからな。もう11時半だし、帰ろっか」

「はい……もうお腹ペコペコですぅ……」

「そうですね。私もお腹すきました♪」

「……ユウ、ホントによく食うよな」

「わ、私はそんな食いしん坊じゃありません!」


…いやいやユウさん?マイとハルの視線、気付かないかなあ?


 いやハルは人のこと言えないと思うけどな?


 というわけでいつもの白ワゴン車を駐車したコインパーキングまで移動して、3人を乗せてパレスへと戻った。ライトサイドもレッスン組も、もう戻ってくる頃だろう。


「お昼ごはんにおやつ……じゅるっ」


 ほらな。ハルもちっこい身体でよく食うもんな。




  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆




 全員で昼食をとり、ユウの淹れたお茶を楽しみながらリビングでまったり過ごして、1時前に全員でレッスン場に移動した。あとはレイにお任せだ。


「任せなさい。キッチリ仕上げておくわね」

「うん、任せた」


「……で、もしもオルクスが出たらもちろん討伐に出なきゃなんだけど、あらかじめ誰が出るか決めておこうか」

「そうね。私は出られないけれど」

「おう、バトルならオレに任せとけ。全部きっちりボコってやらあ」


…絶対言うと思った。


「アキはダメ。普段からサボリ気味でレッスン遅れてるだろ?今日は出撃禁止な」

「……チッ。バレたか」

「でしたら私が出撃します」

「ミオもダメ。まだまだレッスン優先だから」

「くっ……、分かりました……」


 まあ、息抜きも必要だからミオもハクも時々は巡回行かせてるけど、それはそれ。基本的に君はまずデビューを目指さなきゃ。


 今度のライブ用の目玉曲は、マイを含めた新生Muse!7人バージョンの『Fabula(ファーブラ) Fatum(ファートゥム)』になるんだけど、マイに合わせて曲調もダンスもバージョン変更してあるため、全員が新たに1から覚え直す必要がある。だが、これまで全体練習は夕食後のわずかな時間しか出来ていなかった。

 そんな中で自分なりにレッスンを見てきて、レイにも確認を取って判断する限りでは、現時点で仕上がりに不安のないのはリーダー3人だけだろう。マイは当然まだまだだしアキは言うに及ばずだし、ハルもサキもまだ細かい所のミスがあるとのこと。リーダーひとりは討伐に出すとして、あとのメンツはどうしようか。


「引率は、とりあえずリンかなあ」


 レイはレッスン見てもらわなきゃだし、ユウはマイについてて欲しいし。

 昨日の注入の影響も見る限りは無さそうだし、まあ大丈夫だろ。


「ふっふ~ん♪いいわよ、任せなさい!」

「リンさんが出撃するなら安心ですね」

「あとはハクと……」


 ハクはレッスンも順調だし、ひとまずライブとは関係ないしね。


「了解です、マスター」

「くっ……ハクは出撃できるのに……!」

「ミオはもうちょっとレッスン積まないとね。で、あとはサキかハルか」

「だったらハルね。サキはまだ少しスタミナ配分に不安があるもの」

「っく!だ、大丈夫と言いたいところですが……」

「ハルは全然いいよ〜!」


「うん。じゃ、それでいこうか。あとの子たちは心置きなくレッスンに励みましょう」

「「「「「「はい!」」」」」」



 ということで、全体練習がスタートする。

 まず最初に、通しで見させてもらえる事になった。一見すると俺の目には全員ほぼ歌もダンスも仕上がっているように見える。まあ、あくまでも素人目だから全然分かってないだけかも知れんけど。

 いや待て、よく見たらアキはサボってたツケが素人目にも分かるな。分かっちゃマズいんだけど。


 しばらく見させてもらって、これ以上この場にいてもやることはないし、ナユタさんから呼び出されたのでレイに任せて一旦事務所に戻ることにした。


「戻りました。⸺で、仕事ですか?」

「はい。明日の1DAYジャックでお邪魔する首都TVさんに挨拶して来て下さい。アポは取ってありますので」

「あー、それがありましたね」


 ラジオ番組を含めて朝から様々な番組に出させてもらうので、全ての番組のディレクターさんに前もって挨拶をしておくべきなんだそうだ。

 実はこれも全部ナユタさんが済ましているんだけど、当日実際にレフトサイドを引率するのは俺なので、俺は俺で顔を出しておいた方がいいとのこと。まあそりゃそうだ。

 じゃあ、ちょっくら行ってきますか。






お読み頂きありがとうございます。

次回更新は30日です。

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