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第十六話 荒れ地。
「これが荒れ地かぁ……。」
クウは感嘆した。水紋の国と隣国エズとの境には広大な荒れ地が拡がる。五十キロメートル四方の枯れた岩だらけの土地だ。所々に窪地があり、意外にも澄んだ水を湛えている。植物こそ生えていないが、その荒れた風景は何故がクウの心を和ませる。恐らく、エズに住んでいたころの記憶が微かに残っているのだろう。彼の無意識の中に。クウが神獣と出会ってから十日程経っていた。恐らく、隣国エズは後、数日の距離にある筈だ。クウは荒れ地を探索したい気持ちもあったが、荒れ地には沢山の“人喰い地竜”が住んでいると聞いていたので、少し回り道をする事にした。時間は余りないが、回避できる危険は避けた方が良い。クウは荒れ地の外周部を移動して、エズを目指した。




