表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第三章 夜の底。
79/425

第十四話 最後のチャンス。




 クウの直近の目標は二つあった。一つは隣国のエズへ行くこと。水紋の国は良く、霧と虹の国と呼ばれたが、エズは水と陽光の国と呼ばれていた。エズは樹脂加工に長けており、透明樹脂の器に全てを納めて湖の底に沈めた国だった。陽光溢れる水底の国だ。また、エズのモルフ達は癒しに長けており、治せない病は無いと噂されていた。勿論、エズは今はもう滅んでいる。零鍵世界の多くの国々と同じように今は誰も居ない廃墟となっている。だが、癒しの秘密が残って居る可能性があるのだ。クウはそれに懸けてみようと考えていた。残された少ない時間を。

 そして、もう一つの目的は逐鹿。逐鹿はもてはやされるのが嫌いでいつも目立たないようにしている。世界の秘密を探す旅に出立する時、クウと同じように西小門を選んだ。戻るのであれば、恐らく、同じく西小門から戻るだろう。逐鹿に会って話し、彼が出来たこと出来なかったことを聞こうと考えていた。全てを見てきたのならクウはそれ以上旅をする必要は無いし、まだ見ぬ場所があるのなら、クウはそれに世界の行く末を懸けて会いに行こうと考えていた。いずれにしてもクウは西に……逐鹿が戻るはずのその方角に……希望を求めていた。

 クウはその短い足で一歩ずつ、少しずつ目的に向かい進む。体調が悪い時はもう明日にでも死ぬかも知れないと不安に震えたし、体調が良い時はひょっとしたらエズを越えて、逐鹿に出会い、更には大海を渡って中央大陸に到達するんじゃないかとも想った。リツザンの倍はある灰色山脈とその山々を護る荒ぶる神を越えて、帝都に到達出来たらどんなに素晴らしいだろうか?そこにはどんな景色が拡がっているのだろうか?クウはその風景を想い、それを励みに苦しい時も少しずつ進んだ。エズまでの距離は百キロメートル。クウの足であれば、うまくいけば半月程度だ。完全食カトは足りるだろう。粉薬は完全に足りない。それが運命の分かれ道だとクウは考えていた。彼は悩む事は無い。考えて判断し、挑むのだ。何しろクウには時間が残されていないのだから。今夜にも死んでしまうかも知れないのだ。悩んでいる暇は無い。泣いてる場合じゃない。考えて行動するんだ。


 (僕にはもう、沢山のチャレンジをする時間はないんだ。でも……後一回位は何か出来るはずなんだ。)


 だから、と想う。


 (僕は、やるんだ。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ