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「天恵」 ~零の鍵の世界~  作者: ゆうわ
第三章 夜の底。
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第十一話 首切りvsロイvs 1




 ぎゃあっ!ぎゃあっ!


 薄暮に気味の悪い悲鳴が響く。ジズ大橋に続く街道でロイは首切りに囲まれていた。ロイは叫ぶ。


 「セアカァッ!!」


 黒い刃の嵐の中、獣化したセアカが木の葉のように素早く立ち回る。八つの目が赤く光る。セアカの動きはロイの想像を超えた速度で狂ったように飛び回る首切りを余裕で躱す。ロイは分厚い外殻頼みで、首切りの攻撃をろくに躱さない。今、ロイは首切りの正体を直視していた。それは鋼鉄の嘴を持つ赤い目をした烏だった。百匹程の群を成す首切りは一切の秩序無く宵闇を飛び回り、周囲にある何もかもを切り裂いて行く。街路樹が剪断されて崩れる。民家も外壁を削られて傾いていく。

 ロイは夜の街に張り巡らされる糸に気付いてからは、それを張るセアカを探し続けていた。日が沈む頃、セアカは街に糸を張っている。毎夜、張り巡らせている。ロイはそこを押さえるつもりだった。だが、影から陰へと走り回るセアカを見つける事はロイの良く通る目を以てしても困難な事だった。それでもやがてロイはセアカがそうするように糸の振動を以て獲物の位置を把握出来ることを悟った。そして今日、糸は町外れの空で無数の獲物を感知した事を告げたのだ。ジェットで急行したロイが見たのは、獣化したセアカと無数の首切りだった。まだ、被害者は居なかった。ロイは躊躇せずセアカを取り囲む首切りの群に突っ込んだ。瞬時に首切りはロイに襲い掛かる。乱戦が始まった。


 「下がれ!俺の邪魔をするな!」


 セアカは隠すこともなく、憎悪をロイに向ける。ロイは怯まない。首切りの渦の中、セアカに飛びかかる。超硬質のロイの外殻でも首切りの鋼鉄の嘴に耐え続けることは出来なかった。徐々に傷つき削られ始める。加速度的にダメージが累積して、弱い外殻が剥がされていく。ロイは怯まない。首切りを無視してセアカに殴り掛かった。セアカは躱す。ハクとどっちが速いだろう?だが、ロイは素早さで戦う事は無い。機甲虫の超硬質の外殻を盾に火力で押し切る戦術だ。


 破裂する鉄拳ドーバーガン


 ロイの真技が炸裂した。無数の首切りが嘴だけを残して消滅する。勿論、セアカは躱した。躱しながらも舌打ちをする。


 (何という破壊力だ。これでは首切りを全てもってかれてしまう……殺すか。)


 セアカは冷酷に決断した。ロイの動揺を誘いながら、ロイの舞闘を反芻する。


 「まあ、そう慌てるなよ、ロイ。知ってるか?クウの事。あれは、毒だぞ?病気じゃない。紫のシミがあったから間違いないよ。早く帰ってクウに教えてやれよ。お前誰かに殺されそうになってるぜってさ。なぁ?」


 ロイの頭に血が上る。毒?誰が?何故解る?ロイの頭は短絡する。


 「貴様が毒を盛ったのかぁ!!」


 激昂するロイの動きが止まった。想像以上の効果だった。セアカは冷たく笑う。ロイは目の前の戦いとクウの病気と二つの問題に混乱して一瞬、何も出来なかった。セアカは思案する。


 破裂する鉄拳ドーバーガンは連射出来ない。事実、舞闘上で何度も破裂する鉄拳ドーバーガン直後の隙を突かれて、危機に陥っていた。可哀想に。実戦ではそれが直ちに死に繋がる。セアカは首切りの嵐に潜り込み、地表すれすれからロイを狙う。一分程は次撃を打てないはず……。


 破裂する鉄拳(ドーバーガン)


 セアカが躱しながら攻撃に移った所で、二発目が破裂した。短い間隔で破裂する鉄拳(ドーバーガン)が放たれ、セアカは冷や汗をかいたが躱し切った。


 (危なかった。連撃が出来たのか。もう少しで……。)


 三度、破裂する鉄拳(ドーバーガン)がセアカを襲う。そして、四回、五回、六回。ロイは破裂する鉄拳ドーバーガンの連撃を行った。セアカは必死で躱すが首切りを守る事は出来なかった。周囲の地面をえぐり削りとばしながら、破裂する鉄拳(ドーバーガン)は首切りを仕留めていく。もう数匹しかいない。セアカは焦りロイの周囲を飛び回る。



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