第十九話 死。
爆発を予期していたロネスはしかし、その速度と威力を見誤り、多少の裂傷を負った。一切の受け身を取れなかったセアカは荒れ地のどこかに吹き飛んでしまった。爆心地に蹲るシキを見て、小さなパッチワークモルフのロネスは満面の笑みを浮かべた。
「きひひひっ!ミスってるやん!笑う。お誕生日おめでとう!失敗作ちゃん!」
言いながらロネスは意味不明な踊りを踊った。荒野に温く気持ちの悪い風が流れる。
「貴様は今、死んだ。二度と生き返ることは無い。これから死人の生を送るんだ。病と差別に埋もれて死ぬまで苦しむだけの。」
小さな継ぎ接ぎモルフのロネスは不気味に長く尾を引く引き笑いを繰り返した。荒れ地が狂気に包まれていく。ロネスは楽しくて仕方が無かった。控えめに言って最高だと思った。輪廻転回に失敗して意識を失っている失敗作を見てロネスは昏い期待を膨らませていた。この生意気で希望に満ちた幼生が自身が失敗作だと知らされる瞬間を――希望が驚愕に飲まれ絶望に変じる瞬間を――ロネスは熱望していた。ピクリとシキが動く。
「おお。」
ロネスは思わず声を上げる。通常、輪廻転回を行ったものは数時間は意識を取り戻さない。それが数分で覚醒するなど、奇跡としか言いようが無かった。常人の魂気ではない証拠だ。
「久しぶりに見かける幼生で、ただ者では無いと思ったが、いやいやいや。素晴らしい魂気だ。転回に成功していれば――六角金剛にでも成れたろうに――ぐは。ははっ!」
ロネスは、言いながら最後は我慢できずに笑ってしまう。
(最高じゃない?才能ある若者が希望を失って絶望して、そしてアタシに殺されるなんて!笑える!)
混乱し、継ぎ接ぎで、狂ったロネスは歓喜の渦の中でその幼生の意識の回復を心待ちにしていた。




