第四話 大団円 4
朧が解き放たれて世界の全てが消え去ろうとしているその最後の瞬間にクウは自身の核となる正体を再認識した。ずっと世界を救うと言ってきたのは、自分が最後の子だったからでは無い。そうするべく自身が生まれついたからでは無い。彼が生きてきた一日一日が彼を形作り、彼が発した一言一言が彼の命題となっていったのだ。滅びようとする世界に挑む大人達がいた。病に苦しむ友達がいた。差別に向き合う仲間が居た。大好きな友達もいた。一日で全てを失った姫がいた。世界を救うと公言してはばからない兄がいた。彼等皆が今のクウの核となり魂となり、その命題を形作ったのだ。
(そうだ。僕は世界を救いたい。この美しい多様性を護りたいんだ。)
それが正しいことなのか、それは判らなかった。でも、それは関係なかった。ただ、そうしたいだけなのだ。それは狂人の執着なのかも知れない。余りにも沢山の仲間を失ってきたから今更後に引けないだけなのかも知れない。でも、どちらでも構わなかった。信じるところをやり遂げる。それしか無かった。
――命題を決して忘れては成らぬ。そして、挑むのじゃ――。
再び、山祇の言葉が蘇った。それに重なるように黒丸の言葉が蘇る。
――忘れるな。わしはお前を信じている。それだけじゃ。
そして、ロイのハクの言葉も浮かび上がる。
――例え俺が死んで、結局世界が死ぬとしても。俺はやれることをやり続ける。
――あたしも行くもん!あたしの愛の為に!!
クウは荒れ狂う朧の前で無力に立ち尽くしていた。引きちぎられたハクが宙に舞い、砕けたロイの破片が吹き飛んでいくのを見ているしか無かった。彼は今、無力だった。だが、それでも、彼をこれまで見送ってきたみんなの言葉が背中がクウを後押しする。
(……僕は……挑む。世界を……。)
クウはその瞬間、全てを奪い世界を消し去る、消しゴムに飲み込まれた。朧がクウを捕まえたのだ。




