第二話 大団円 2
名を呼ばれてクウは顔を上げた。百メートルを越える大障壁の上に微かな笑顔が見えた。
「クー!元気ー?」
大障壁の上にハクの心配そうな顔がある。彼女の脇には同じく心配そうな顔……こちらは本当に顔だけだ……のロイもいた。クウは疲れた顔で見上げる。クウはいつかの舞闘を思い出した。それはもうずっと前、幼生最後の舞闘を終えた時だった。あの時は立場が逆で、闘上石の上でぐったりするハクとロイを心配そうなクウが舞闘場から見下ろしていたのだ。皆、大人になった。大人になって世界の運命を決する舞闘を闘い切ったのだ。やり遂げたのだ。クウはもうひとりぼっちなんだと思った先ほどの倍の涙を流して三倍の声で泣いた。ハクもロイもクウのことを心配していたし、疲れ切って消耗していた。でも、それもで先ほどまでの生死の境にあるような状況ではなかった。クウのオーロウのお陰だった。その験はまだ判らないが、オーロウは術者や術者が望む存在を無限小に分解し、そして再構成することが出来るのだ。その過程で異常は取り払われ、あるべき姿に回帰するのだ……多分。あれほど知りたかったオーロウの験だったが、正直、今となってはどうでも良いことだった。ただ、ただ、皆が生きていてくれて嬉しかった。クウは両手を広げ彼等に向かって何か叫ぼうとしたが、叫べず、ただ、笑顔で泣いていた。ハクとロイは顔を見合わせてから、再びクウに向き合った。
「あたし達はぁああっ!――元気よっ!」
「だな。」
ロイが言い終わらないうちにハクは大障壁を強く蹴り、飛び出した。遙か百メートル下のクウに彼女たちは会いに行く。笑顔を届けに行く。彼女たちは落下し、ぐんぐんと大きくなる。その相変わらずな笑顔がはっきり見て取れるくらいに……丁度半分くらいの高さ……に近づいたところで大障壁に大きな亀裂が走り、それは爆発した。空中で受け身も取れないハクとロイは大障壁の破片の直撃を受けて無残にも引き裂かれて潰されてバラバラになった。




